クルマを買うという行為そのものが楽しい。ハイエンドラグジュアリーカーを一度でもオーダーしたことのある方なら賛同してもらえることだろう。コンフィギュレーターを駆使して自分の好みの1台を“造り上げる”喜び。悩ましくてしょうがない、と思いつつ、楽しんでいる自分がいる。
選択肢が増えれば増えるほど当然、楽しみは増す。ベントレーコンチネンタルGTのように贅を尽くした美しいインテリアをもつモデルではなおさらだ。ベントレーというブランド自体が伝統的に素晴らしいインテリアを提供し続けてきた。代表的なマテリアルとして、ハンドクラフトされるウッドパネルがすぐに思い浮かぶ。
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ボディカラーを決めたあと、レザーとステッチ、そしてコンチネンタルGTの場合にはデュアルタイプも選べるウッドパネルの組み合わせを考えるだけでも相当楽しめたというのに、そのオープンモデルともなれば、そこにトップ選びが加わっていっそう悩ましく、だからいっそう楽しくなるというわけだった。
ベントレーコンチネンタルGTのオープン版は、新型モデルから以前のGTCではなくGTコンバーチブルと略さずに呼ぶように。頭文字を使わない傾向もまた、最新ラグジュアリーの特徴だ。
GTコンバーチブルのトップは従来と同様にソフトタイプとしている。エレガントなソフトトップとしたことで、ただでさえ豊富な選択肢にアウター7色・インナー8色の組み合わせがさらに加わった。なかでもアウターパターンのひとつとして新採用されたブリティッシュ・ツィード柄が個人的には気になってしようがない。どうだろう。今すぐ公式サイトのコンフィギュレーターを試したくなったのではないでしょうか?
スペインの人気リゾート、マルベーリャのホテルを起点に開催された国際試乗会には、担当者がきっと楽しんで選んだに違いない様々なコンフィギュレーションのGTコンバーチブルが16台用意されていた。そこからアンダルシアの山間を抜けてスペイン第4の都市セビーリャまで一日かけて走るという贅沢なプログラムである。
鮮やかなブルーや派手なオレンジなどのボディカラーがひと際目立つなか、個人的に最も惹かれたのがダブグレーというクリーミーな灰色のGTコンバーチブルだった。訳せば鳩の灰色のボディにボルドーブラウンのインテリアが素晴らしくマッチしている。そう、中もまた外になることの多いコンバーチブルでは、内外装のコーディネーションがいっそう大事になると思う。
クルマのボディカラーはとても大事で、だからこそ世界的な流行や地域的なブーム(たとえばアメリカ西海岸では今、内外装隅々まで真っ黒の高級車が流行っている)がある。筆者の場合、クルマそのものよりもボディカラーに惹かれてしまうことも多く、たとえば先日などもそれまで全く気にならなかったドイツ製4ドアセダンが、ただきれいな水色であるというだけで引き取ってしまった。筆者にしてみればリセールバリューで無難な人気色を選ぶほど馬鹿げた話はない。
ダブグレーの個体に乗りたい。強く念じていたら、なんと見事に割り当てられた。もうそれだけで素晴らしい一日になりそうな予感がする。自分で買ったクルマならきっと尚さらだろう。だから新車をオーダーする際にはハイエンドモデルでなくても、ディーラーマンの囁き、例えば「そんな変わった色を選ぶと売る時苦労しますよ」(=そんな色を次の新車の下取りに出された日には困るのはオレのほうなんだぜ、という意味)、に屈せず、好きな色を自由に組み合わせなさいと声を大にして言いたい(もっとも、ハイエンド系ではユニークな色を選ぶことが常識になってきた)。
ソフトトップはZ型フォールドタイプで軽量に仕上がった。そのため5層生地として静粛性をいっそう高めている。旧型クーペよりキャビンは静かになったというから驚くほかない(もちろんクローズドの状態で)。
開閉に要する時間はわずかに19秒。時速50キロ以下であれば走行中の開閉も可能だ。急に天候が悪くなっても慌てることはない。
すぐさまオープンに。開閉ボタンを押す指先でもそうと感じられるほどスムーズにソフトトップが開いた。不粋な開閉ノイズもほとんどしない。
オープン状態でのスタイルが抜群にいい。これは旧型に比べて最も違う点だと思う。前の2世代ではボンネットのラインが高く、ルーフのないコンバーチブルではちょっと腰高な印象があった。
新型は違う。前輪の位置が135ミリも前に出た結果、ロングノーズが低く強調され、同時にリアフェンダーまわりの伝統的なデザインもいっそう映えてみえるようになったのだ。端的にいってタイヤの位置とボディデザインとのバランスがいい。
そのことは、ドライブフィールにも好影響を与えている。ややフロントヘビーであるはずなのに、まるでフロントミドシップカーを操っているかのように軽々とワインディングロードを駆け抜ける。前輪が両腕の動きにダイレクトに反応する感覚があって、ボディサイズを気にすることなく、狭い道でもすいすいとこなした。
6.5リットルV12ツインターボエンジンによってもたらされる強大なパワー&トルクフィールはもちろんのこと、それを制御する安心感たっぷりの制動フィールも相まって、ついつい、ライトウェイトのオープンカーを駆っているような気分で攻め込んでみたくなる。
オープンスポーツカーという新たなキャラクターで魅力倍増となった極上のグランドツーリングカー。それが新型コンチネンタルGTコンバーチブルというわけだ。
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