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公道とはおさらば? 911 GT2 RSに乗って見えた近未来のスポーツカーシーン

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公道とはおさらば? 911 GT2 RSに乗って見えた近未来のスポーツカーシーン

ポルシェがスポーツカーブランドとして最も有名でかつ人気があるということは論を俟たない。けれども最新のポルシェ事情にはそこに“次世代”のイメージもちらつく。例えばフルBEV(バッテリー電気自動車)のタイカンは今、世界で最も進んだEV、否、自動車のひとつだ。世界各国の同業たちが誉め称えているタイカンの乗り味から想像するに、もちろんポルシェらしさを失ってはいないのだろうし、セダンながらスポーツカーとして通用するモデルではあると思う。けれどもその革新性を見れば、彼ら自身のレゾンデトルである“スポーツカー専門であること”の殻を自ら打ち破りひとまわり違う世界を構築するのだという、それはメッセージとも受け取れる。ずばり、タイカンはポルシェの未来だ。

今回試乗したクルマは、約30kgの軽量化をもたらすヴァイザッハパッケージを適用している。よって、ルーフやスタビライザーにはカーボン製のパーツを使っている。一方で不動の人気を誇る911シリーズは992型へと進化し、GT性とスポーツ性の高次元な融合をみせるに至った。また、ケイマン&ボクスターのGTS 4.0には6気筒NAの4リットルエンジンを押し込んだ、いかにも20世紀的な文法のスポーツカーも新たにラインナップする。こちらは過去からの継続であり、スポーツカーブランドにとっては守るべき“ライフライン”である。

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スポーツカーブランドであり続けるための鉄則は継続的であること、つまりは不断の進化である。そしてスポーツカーにとっての最も分かりやすい進化とはすなわちパフォーマンスだ。それゆえ世界のスポーツカーブランドは皆、フェラーリ然り、ランボルギーニ然り、今なおスペック競争に明け暮れる。大御所ポルシェも例外ではない。数字を出さなきゃ軽んじられる。

目を引くリアウィングをはじめ、大胆なエアインテークを随所にあしらい、まさしくレーシングカーそのものの佇まいである。公道を走れるレーシングカーたとえばポルシェが今、市販している最高スペックのモデルは911GT2RSだ。991型をベースに徹底的な軽量化を施し、そこに700psという超弩級の3.8リッターのフラット6ツインターボエンジンをぶち込んだ。しかも各種電子制御に守られているとはいえ、堂々のRWD。つまりは二駆。それでいて0→100km/h加速は2.8秒と、4WDのスーパーカー級というからスペックを読むだけで恐れ入ってしまう。何ともスパルタンなマシンで、正にケダモノだ。お値段も超一流で車両本体価格は約3700万円。乗り出しで軽く4000万円を超えてしまう。もっとも性能だけで見れば他のスーパースポーツよりお買い得ではあるのだが、それはさておき。

史上最速の911ロードカー。レーシングカーと言っても通用するナカミであることは、サーキット専用車両である世界200台限定の911GT2RSクラブスポーツや77台限定935のベースとなっていることからも分かる。これらトラック専用の限定モデルとロードカーGT2RSのパワートレインは基本的に同一なのだ。

言い換えれば公道を走ってもいい911のレーシングカーである。果たしてどんな乗り味なのか。幸運にもオーナーの好意でバイザッハ・パッケージ仕様に試乗できることとなった。

筆者の大好きなクレヨンカラー(スレートグレー)の911GT2RSである。とにかくその雰囲気がすでにレーシング。ナンバーが付いているということ自体に違和感を覚える。フロントグリルは周りの空気を独り占めしそうなほどのデカさで、こんなのが後から迫ってきたらマジ怖い。

巨大リアウィングはもとより、フロントフードをはじめとしたカーボンパネル、フェンダーのエラ、センターロックホイールに巨大なブレーキシステムなど、公道よりもサーキットが似合う見た目の根拠は枚挙にいとまがない。

最高出力700ps、最大トルク750Nmを発揮する3.8リッターツインターボ水平対向エンジンをミッドシップに納める。トランスミッションはGT7速ダブルクラッチトランスミッションを組み合わせる。軽いドアを開けるとさらに驚く。黒に赤のインテリアカラーはともかく、フルバケットシートにカーボンパッケージもこの手のモデルには当たり前の装備だとして、911の見慣れたリア席が取り払われて代わりにロールケージが入っていたからだ。内側のドアノブはRSの伝統に則って“紐”。専用チューニングの8速DCTを積むが、シフトベースにまで赤いダブルラインが入っていた。

アルカンターラを標準で装備し、随所にはカーボン模様のパーツをあしらっている。オプションのクロノパッケージを装着すれば、コースタイムなどを保存・評価できるパフォーマンスディスプレイが追加される。趣味としてのサーキット走行を訴求している?2ペダルなので動かすこと自体、誰にでも可能だ。それこそAT免許でも難なく発進させることはできる。アクセルを踏んでいきなりポイッと700ps&750Nmを任されるわけじゃない。そこは最新モデル、巧妙に電子制御されているから安心していい。

カメラマンの要望に従ってカメラカーのやや後を流しているときも、室内のレーシーな雰囲気とちらちら見える巨大なウィングやフェンダーのエラに気分こそ勝手に高まってしまうものの、丁寧に操ることができた。

これなら毎日のアシとしても使えるじゃないか。モンスターにちょっと気を許し始めた筆者だったが、カメラカーが脇にどけてゴーサインが出た刹那、それが間違いだったことを知る。

公道を走るレーシングカーが突如としてその鋭利な牙をむいたのだった。

少し気を許した状態で右アシに力をこめた瞬間に、あたりの空気がバチーンと音をたてて反応したかのように一瞬にしてボディに力が漲り、紙細工が弾かれるようにして加速しはじめた。そのあまりの鋭利さにいちどは右アシを緩めてしまったほど。驚くべきはその軽やかな力強さとはウラハラに腰下がとても安定していたことだ。よく躾けられたシャシー制御と空力デバイスの賜物であろう。

とてもじゃないが公道で踏んでいいシロモノではないと思った。それゆえ高速道路でその中間加速の凄まじさや高速クルーズのスタビリティの高さをひととおり存分に味わったのち、もうそれ以上試すことを諦めた。

そう、ここまでの高性能は人を“諦めさせる”に十分なのだ。何度も試したいと思わせない。いちど試せばもう十分。自分の力を十二分に了解した強者に残されたのは、周りを見送る“余裕”である。

ひょっとして超弩級スペックのハイパーカーたちもまた“そういうこと”を狙っているのではないか? GT2RSとクラブパッケージの関係のように、本当のパフォーマンスを解放したいと思った向きはトラック専用車を手に入れて潔くサーキットへ行け、と。

異次元の高性能で公道での誘惑を断ち切ること。それが最新ハイパーカーの役目なのかも知れない。

文・西川 淳 写真・茂呂幸正 編集・iconic

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