フェラーリのDNAをSUVに
フェラーリは、次期SUV「プロサングエ」にV12エンジンを搭載する。ベネデット・ビーニャ社長が明らかにした。
【画像】次期フェラーリ・プロサングエ【ライバルの高級SUVと写真で比較】 全113枚
ビーニャ社長はロイター通信に対し、「当社はいくつかの選択肢を試しました。V12エンジンが提供できるパフォーマンスとドライビング・エクスペリエンスは、市場にとって正しい選択肢であることは明らかでした」と語っている。
フェラーリは先日、新しいV12エンジン搭載モデルの製造を発表した。それがプロサングエなのか、それとも812スーパーファストの後継モデルなのか憶測を呼んでいた。
フェラーリは次のように述べている。
「V12は、常にフェラーリのDNAの本質的な部分です。V12は我々の遺産を称えるものであり、パフォーマンスと純粋なドライビング・エモーションの新たな高みを求める絶え間ない探求の象徴なのです」
顧客を納得させるコンセプトに自信
今後の新型車は、2つのアーキテクチャーを中心に作られていく。1つは296 GTBのようなミドエンジンのスーパーカー用、もう1つは新型SUVを含むフロントミドエンジンのGTモデル用だ。
どちらのモデルも、V6、V8、V12エンジン、ハイブリッドの有無、DCT、後輪駆動または四輪駆動、2シーター、2+2、4シーター、さまざまなホイールベース長に対応することが可能だ。
この幅広いパラメーターから、SUVは全長5mの4シーターに設定された。車高調整可能なサスペンションによって地上高を確保し、オフロード性能とオンロード性能を両立させるためアンチロール・システムも採用するだろう。
デザインに関しては、公式に発表されているのはフロントエンドのみ。しかし、今年初めにリークされた画像から全体的なデザインを見ることができる。
フェラーリのマイケル・ライターズ最高技術責任者はAUTOCARのインタビューで、「このクルマと技術的コンセプトには確信を持っている」と明かした。「真のSUVであり、お客様を納得させるコンセプトとパッケージを持っていますが、その一方で既存SUVとの大きな差別化コンセプトを備えています」
このコンセプトとは、フォルクスワーゲン・グループのMLBプラットフォーム(トゥアレグ、アウディQ7、ベントレー・ベンテイガ、ランボルギーニ・ウルスで採用)のようなグループ内で共有されている構造とは対照的に、自前のアーキテクチャーを採用することで、SUVならではの室内スペースや快適性、フェラーリらしいパフォーマンスを実現するというものだ。
これまでと全く異なる課題とは
ライターズは次のように語っている。
「課題は、フェラーリの新しい分野を開拓することです。我々は常にシャープなポジショニングに立っています。特定の要素に焦点を絞って開発し、ある種のトレードオフを行うのです。SUVでは、全く異なるトレードオフが必要になります。全く新しいエンジニアリングの課題を抱えることになるでしょう」
「フェラーリにとって新しいセグメントを開拓することが課題です。当社は常にシャープなポジショニングをとっています。そのおかげで、集中的にクルマを開発することができ、トレードオフの判断もしやすくなります。全く新しいエンジニアリングの挑戦ができるでしょう」
「SF90は、非常に多くの革新技術を投入した新しいクルマです。ここから多くのモデルへと発展していくでしょう。ですが、SUV開発の課題にはまったく異なるものも含まれています。イノベーションも必要とされ、組織としても多くの学びがありました」
SUVを含むすべてのGTモデルは、「目は道路に、手はハンドルに」というアプローチに基づき、まったく新しいインテリアレイアウトを採用する予定だ。新しいデザインのステアリングホイール、新しいインフォテインメント、ヘッドアップディスプレイ、新しい計器類、新しい操作方法、リアシート・エンターテインメント、乗降性の向上などが盛り込まれている。
ライターズは、同社初のSUV開発で直面している課題についても話してくれた。
「広いだけでなく、人間工学に基づいた快適で安楽な空間を生み出すには何が必要でしょう?スポーティでありながら、快適性にも重点を置いたデザインとは?ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)のより民主化された理想とは?本当の意味での快適性とは?フェラーリの純粋なDNAを備えた快適性とは何でしょうか?」
「スペースがあれば、人間工学に基づいた快適な乗り心地をどのように確保できるのか。スポーティなレイアウトと快適性を重視したデザインをどう組み合わせるか。HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)をどうするか。当社のHMIはドライバー志向ですが、どうすればもっと民主的なものになるのでしょうか。快適性とは何か。快適性を追求したフェラーリのピュアなDNAを持つクルマとは?」
「それは『挑戦』であり、『機会』であり、『楽しみ』でもあります。コンセプトの中には近いものもありますが、175のようなクルマで我々がやりたいことの1つは、製品レンジを構成し、何か違うものを手に入れることです」
フェラーリらしいSUVのデザイン
ライターズは、2つの新しいアーキテクチャーについて、将来のフェラーリモデル間ではるかに大きな柔軟性を提供すると述べた。
「V6やV12が必ず出てくるとは言えませんが、想定はしてきました。わたしの仕事は、会社に新しいモデルの可能性を示すこと。そして市場ニーズに耳を傾けることです」
「求められる機能性はお客様によって異なります。どれだけの広さが必要なのか。6気筒や8気筒は必要なのか。ホイールベースは長い方が良いのか。そこでV6、V8、V12エンジンを用意し、フロントミドシップやミドシップ、ハイブリッドの有無や駆動方式、シートレイアウトなど幅広い選択肢を用意します。ホイールベースの長さも自由です。最小限の影響で、ドライブトレインやレイアウトを変更できるのです」
フェラーリのデザイン部門の主任であるフラビオ・マンツォーニによれば、物議を醸すであろう同社初のSUVのために、デザイナーは当初からエンジニアリング部門とともに仕事を進め、より最適なプロポーションを目指してきたという。
「最初のステップでクルマのデザインを定義し始めるのです。その定義づけの段階で、エンジニアと協力しながら方向性を決めていきます。プロポーションとボディサイズを決定することで、優れたデザインのベースが生まれるのです。それはSUVの場合でも同様です。多くのSUVは、他のクルマの派生モデルです。デザイナーは技術要件での制約をクリアしなければなりません」
「フェラーリの場合、妥協は許されないのです。エンジニアと一緒にデザインを進めなければ、パッケージの決定段階で問題が発生します。新しいプロジェクトを始める時は、(他部署との)協力を推し進めています」
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みんなのコメント
走行中の安定感などを考えるとSUVは優れているとは言えないが、それを重視しない人が多いのもたしか。ただ、街中でウルスを見かけるとほぼ100%のドライバーが車に釣り合っていない成金感満載の人しかいない。SUVがファッションアイテムとなり、車そのものに興味がない人ばかりが買っているのだろう。ランボ自体は作りたくなくともVWの意向には逆らえなかったのだろうが、フェラーリまでもそうなったのかと思う昨今。まあ、そのおかげで2シータなども作れている(今後そうなる)ので致し方ないかな。
ただ、ウルスオーナー同様、無駄な空ぶかしはうるさいのでやめていただきたい。