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サーキットでこそ本領を発揮! 底しれぬメルセデスAMG GT Rのパフォーマンスを体感 【Playback GENROQ 2017】

掲載 更新 4
サーキットでこそ本領を発揮! 底しれぬメルセデスAMG GT Rのパフォーマンスを体感 【Playback GENROQ 2017】

Mercedes-AMG GT R

メルセデスAMG GT R

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そのパフォーマンス、まさにレーシング

AMGの本気が止まらない。いや、本気が進化しているのかもしれない。GT3マシンで得られたノウハウを旺盛に取り入れたというこのGT Rは、そのコンセプトを理解していても、相手にするには相当な覚悟が必要だ。もはや舞台はサーキットのみか!?

「試乗の舞台はポルトガルはアルガルベ サーキット」

メルセデスAMG GT Rのテストドライブの舞台は、ポルトガル南西部のアルガルベ サーキット。到着するとウォームアップの済んだマシンが、ずらり威嚇するように並んでいた。

300 SLプロトタイプのそれをモチーフとした新しいAMGパナメリカーナ・グリルも目を惹くが、何よりロー&ワイドぶりが半端じゃない。実はこのクルマ、全幅がAMG GTよりさらに68mmも広げられて、2007mmにまで達している。

メルセデスAMGの国際試乗会は至ってシンプルだ。技術展示を眺めエンジニアに話を聞いていたら、すぐにサーキット走行の順番が回ってきた。DTMレジェンド、ベルント・シュナイダーの先導による4ラップで1セッションである。

「9段階に調整できるトラクションコントロールはGT3譲りの実戦向き機能だ」

カーボン製フルバケットシートに身体を収めて、ダイナミックセレクトは「RACE」、ESPは「スポーツ」モードにセットする。目新しいのはダッシュボード中央に追加されたダイヤルで、これによってESPオフの際にトラクションコントロールの効きを9段階で調整できる。GT3マシン譲りの実戦向き機能だ。

ピットロードですでに驚かされたのがエンジンのピックアップの鋭さである。V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは、ターボチャージャー、ウエイストゲートの刷新など細かく手が入れられ、更に過給圧を0.15bar増の1.35barに高めた結果、最高出力をAMG GT Sの510psから一気に585psにまで高めているが、それがシャープなレスポンスを犠牲にするどころか、さらに磨きをかけている。

しかも車体は軽く、いかにも剛性が高い。フロントフェンダー、トランスアクスルのトルクチューブ、ドライブシャフトなど広範囲にCFRP素材を使い、車両重量はAMG GT Sの15kg減を達成。後述する追加装備の数々から考えれば、十分な軽量ぶりと言えるはずだ。

「AMG GT Rは、そのフットワークこそ最大の魅力、最大の個性」

それだけにコースに出てアクセルを踏み込むと、まさに弾けるような加速が始まった。AMGスピードシフトDCTのシフトアップは、手動ではその勢いにとても追いつかないほどだ。変速スピード自体も軽量デュアルマスフライホイールの採用で更に切れ味鋭くなっている。なお、0-100km/h加速は後輪駆動にして、わずか3.6秒である。

しかしながらAMG GT Rのハイライトは、加速やトップスピードではない。そのフットワークこそ最大の魅力、最大の個性だ。

CFRP製に改められた車体後半部床下のクロスメンバーの採用などにより、軽量化だけでなく剛性アップが図られた車体には、よりハードなサスペンションと電子制御ダンパーが組み合わされる。また後輪を100km/h以下では前輪と逆位相、その先では同位相に最大1.5度までステアする後輪操舵機能も備わる。タイヤは今回サーキットを走行した車両は、前275/後325サイズのミシュラン・パイロットスポーツ カップ2を履いていた。

「コーナリングスピードを高めに保とうとする方がかえって挙動が落ち着く」

そのドライブフィールは明らかに別物と言っていい。ステアリングフィールはダイレクト感が高まり、前後輪とも非常に濃いインフォメーションを伝えてくるから手の内における感覚が俄然、色濃い。実際の挙動も、アクセルペダルに足を乗せていないといつまでも流れが止まらないAMG GT Sと比べるとリヤが格段に落ち着いて、コントロールが容易になっている。後輪操舵の感覚はあるが、違和感というほどではない。走りを邪魔せず、むしろ速さと安心感の両立に繋がっている。

しかし、それでもシュナイダーのペースについていくのは難しい。当たり前だと言われそうだが、それでも何で、そこまで行けるのだろう?

2度目のセッションでは、コースへの慣れもあり、さらにペースが上がる。ここで分かったのは、抑え過ぎずむしろコーナリングスピードを高めに保とうとする方がかえって挙動が落ち着くということである。

「まるでフォーミュラマシンのように攻めるほどにダウンフォースが増す」

これは煮詰められた空力性能の賜物だろう。一見して解るのはワイド化されたフロントのスプリッター、大型化されたリヤスポイラーにディフューザー辺りだが、AMG GT Rは目立たないところにも空力的な工夫が凝らされている。フロントの開口部内のエアパネルは、冷却に必要な時以外は閉じて前方からの空気を車体下面へと導く。また、車体下面に備わるアクティブエアロダイナミクスシステムは高速域では下方に40mmせり出し、ベンチュリー効果でダウンフォースを稼ぎ出す。

まるでフォーミュラマシンのように攻めるほどにダウンフォースが増して、さらに攻められる。そんな走りが実現されているのである。

それが分かった3回目の走行は、さらに踏み込めた。ただし速度域が尋常ではないのでミスの許容範囲は広くない。じわり汗をかいてくる。

クールダウンのため、続いて一般道へ。タイヤはピレリPゼロ、リクライニングスポーツシート付きの車両だったが、乗り心地は硬いながらも許容範囲内で、ドライバビリティも良く、流しているだけでも十分に満足感が得られた。遮音材を削っているのでロードノイズは気になるが会話できないほどではない。

「ニュル北コース、7分10秒9──。じっくり時間をかけて挑む価値はある」

最後のサーキット走行は途中で雨が降り出すコンディション。大トルクのおかげで、ちょっと踏み過ぎるとすぐ横を向いてしまうが、正確なステアリング、高い接地感のおかげでコントロールはしにくくない。しかしESPオフはさすがにシビレた。9段階調整のトラクションコントロールを、ほとんど試せずじまいとなったのが悔やまれる。

計16ラップ。走りに走ったが、それでも後ろ髪をひかれる思いでサーキットを離れたのは、AMG GT Rが乗り手との対話性に優れ、意のままに操る歓びにあふれた素晴らしいスポーツカーに仕上がっていたからだ。敢えて言えば、あまりに速過ぎるという気はしないではない。何しろニュルブルクリンク北コースのラップタイム、7分10秒9である。これを御せる人が果たしてどれだけいるだろうかとも思うが、じっくり付き合い、そこに挑む価値はある。

AMG GT Rの日本導入は2017年中盤を予定している。ただしこのクルマ、ガレージにしまい込むつもりなら無用の長物である。サーキットを真剣に攻めるつもりの人にこそ手に入れていただきたい。

REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)

PHOTO/Daimler AG

【SPECIFICATIONS】

メルセデスAMG GT R

ボディサイズ:全長4551 全幅2007 全高1284mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1630kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
最高出力:430kW(585ps)/6250rpm
最大トルク:700Nm(71.4kgm)/1900-5500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ローター径:前390 後360mm(カーボンセラミックローター:前402 後360mm/オプション)
タイヤサイズ(リム幅):前275/30ZR19(10J) 後325/30ZR20(12J)
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:3.6秒
環境性能(EU複合)
CO2排出量:259g/kg
燃料消費率:11.4L/100km
※公表値のみ掲載

※GENROQ 2017年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

4件
  • MOUROQジジイ
  • いつも思うけど、ハイパワーの車に乗っていると、重要なのはタイヤですよね。普通に高速とか首都高走っていると車体の剛性とかサスとかより、結局タイヤの限界が最も重要と思えるのです。1600キロぐらいだと300馬力をフルに使う状況はほぼないですよね。カーブでタイヤのグリップが気になることの方が遥かに頻繁ですよね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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