今や日本で最も有名なルノーといっても過言ではないのが、MPVのカングーだ。MPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)は多目的乗用車の意味で、ミニバンやトールワゴンのことを指す。
輸入MPVのなかでカングーはトップクラスの人気で、その愛らしいスタイルとバン譲りの高い積載力が日本の趣味人やファミリーの心を見事に捉え、溺愛されている。
新型ノート&ルーテシア 絶品高評価を支える鍵は新生プラットフォームにあり!!
その人気の高さは、同じくフランス生まれのMPV、シトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターの日本導入にも影響を与えたほど。
そんな人気者のルノー・カングーだが、2020年11月12日、新型となる3代目の概要が発表された。
発表されたといっても、ティザー発表といえるもので、ボディサイズは明らかにされていない。欧州での正式発売は2021年春を予定しているという。
そこで新型カングーはどんなモデルへと進化するのか? 現在、わかっている範囲内でのことになるが、新旧比較や最大のライバルとなるシトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターと比較してみた。
文/大音安弘
写真/ルノー グループPSA
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4タイプのボディを同時発表
こちらは現行モデルのカングー。写真は2020年12月10日、150台限定で販売されたルノー・カングークルール・カーキ。価格はベース車と同じ264万7000円。後席ドアは両側スライドドアとなる。カタログモデルはZEN(EDC)の6MTが254万6000円、EDCが264万7000円
2020年11月12日に発表された乗用ワゴンの新型カングー。欧州での発売は2020年3月を予定している。現行モデル同様、後席ドアは両側スライドドアになるもよう
商用バンとなる新型カングーバン
ルノーは、2020年11月12日、新型カングーについてのリリースと写真を発表した。2021年の春に、3代目となる新型を発売するという。
新型カングーのバリエーションは、乗用ワゴンのカングー、商用向けのカングーバン、ハイルーフ仕様の乗用ワゴンのエクスプレス、商用向けハイルーフ仕様のエクスプレスバンの4タイプが用意される。
乗用ワゴンのカングーは、現行型同様の後席ドアが両側スライドドアとなる5人乗り仕様。快適性を向上させ、先進の運転支援機能も採用する。現行型では、バンタイプに限定されるEV仕様も新型には追加されるという。
新型カングーの注目点は、日本のダイハツタントやホンダN-VANを想わせるBピラーレスドアを採用していること。しかし、現在までの情報ではバン仕様のみの採用となるもよう
またカングーバンでは、助手席側のBピラーレスドアを採用するが、乗用車タイプのカングーにはBピラーがしっかりと備わるようだ。
残念ながら、現時点ではスペックなどの詳細な情報はない。ただ全く新しいと明記されていることやEVの拡充、何よりもADASの搭載が謳われていることから、プラットフォームは刷新されているとみていいだろう。
カングーのハイルーフ仕様となるエクスプレス
カングーバンのハイルーフ仕様、エクスプレスバン
スタイリングも大きく変化し、現行型の質実剛健さは薄れ、カングー全体で力強いデザインに。乗用タイプは、よりワゴンらしいスタイリングへと進化する。
フロントマスクは、最新ルノー顔となり、ゆるキャラマスクからどっしりとした貫禄のあるマスクとなる。特にライトやグリルデザインが大型化され、メッキパーツも多用し、上級感も演出。
バンパー形状では、ロアグリルにもメッキパーツが取り入れられ、SUV風味を加え、タフさも感じられるデザインだ。
またフロントバンパーには、ミリ波レーダー用と思われるセンサーカバーが確認できる。
ボンネットデザインは、ノーズの感覚が掴みやすいそうな立体的なデザインだが、こちらは歩行者保護性能を高める狙いもあるのだろう。
サイドビューは、直線基調を強めるが、ドアモールを廃止し、キャラクターラインと抑揚を加えることで質感を高めている。ただ愛らしさが薄れたことは賛否を呼びそうだ。
リアスタイルの実車写真は公開されていない。デザイン画を見るかぎり、乗用ワゴンのカングーは跳ね上げ式テールゲートになるだろう
ハイルーフ仕様のエクスプレスのリアスタイルのデザイン画。観音開きのダブルバックドアに見える
リアスタイルは、デザイン画のみの公開となるため、予測になるが、乗用仕様のカングーは跳ね上げ式テールゲートのみとなる可能性が高い。
ただハイルーフとなるエクスプレスのデザイン画では、観音開きのダブルバックドアとなっているので、ボディタイプで分かれるのかもしれない。
テールレンズのデザインも異なり、ダブルバックドアタイプは、現行型カングーの名残が残るが、テールゲートタイプは、乗用車ライクなデザインにまとめられ、Cピラーに備わるテールランプもコンパクト化されている。
乗用仕様のカングーは、バン系と、今までよりもはっきりとした差別化が図られる可能性が大きいだろう。
最新のインフォテインメントシステムを装備
現行カングーのコクピット
新型カングーのコクピット。タッチスクリーン付きインフォテインメントシステムを備える。現行モデルのコクピットと比べるとかなりモダンな印象
インテリアは、ダッシュボードデザインが公開されている。水平基調のプレーンなデザインのダッシュボードを採用。
その中央には、大型モニターのタッチスクリーン付きインフォテインメントシステムが備わる。サイズは2種類あるようだが、バン仕様を含めて、ルノー最新の「EASY LINKマルチメディアシステム」が採用されている。トランスミッションは、現行型同様にMTとATの両方が用意されている。
ボディサイズについての情報はないが、スライドアの開口部やリアサイドガラスの大きさなどから推測すると、現行型よりも拡大されているようだ。
また、よりスクエアなデザインによって大きさを強調しているが、全幅もわずかに拡大するとみられる。若干のサイズアップは、安全面に加え、ライバルの影響もあるだろう。
同クラスのライバル、シトロエン・ベルランゴ&プジョー・リフターと比較
ベルランゴのカタログモデルの先行予約は2020年8月27日から開始(価格は312万~338万円)。2019年10月に行われた2度の先行オンライン予約では5時間で満枠となった。写真は2020年10月9日、追加生産が決定し発売された特別仕様車のSHINE XTR PACK。価格は349万円
2019年10月に先行モデルがデビューしたベルランゴの兄弟車、プジョー・リフターも2020年11月25日からカタログモデルの発売が開始された。価格はAllureが329万円~、GT Line First Limitedが379万円~
同じセグメントのシトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターのボディサイズは、全長4405×全幅1850×全高1850mm(※リフターは1880mm)となっており、現行型ルノー・カングー(※全長4280×全幅1830×全高1810mm)よりもひと回り大きい。
また側面衝突の安全性を高める意味でも車幅の拡大は十分あり得る。ただ現時点での現行カングーの積載容量が660L~2866Lであるのに対して、ベルランゴとリフターは、597L~2126Lにとどまり、カングーが一歩リードしている。
単純計算では、ボディサイズが拡大すれば、カングーの優位性がさらに高まるが、安全性能の強化やプラットフォームの刷新がユーテリティにどのような影響を与えるのか注目される。
お財布事情となると、シンプルな現行型カングーは、お手頃プライスを掲げているが、豪華装備とパワフルなクリーンディーゼルエンジンを備えるベルランゴとリフターは現行型カングーより、ずっと高価。
ただ装備やエンジンが異なるため、若干ユーザー層も異なっており、今はお互いのライバル意識は薄め。ベルランゴとリフターも仕様が異なるので、価格帯も少しずれる。
洗練されたデザインのベルランゴのコクピット
使い勝手のよさも人気のベルランゴのインテリア。2列シート5人乗りだ。本国には3列7人乗り仕様も用意されている
新型ルノー・カングーの日本導入は2022年となりそう
残念ながら新型ルノー・カングーの日本導入はかなり先になる見通し。2022年に導入される可能性が高い
現状は、互いがカテゴリーを盛り上げるよきライバル関係にあるといえるだろう。それだけに次期カングーが上級化を意識していることが気になるところだ。
しかし、日本への新型カングー導入は、そう早くはない様子だ。欧州でも2021年春の正式発売という表記にとどめられている。
歴代モデルの日本導入を振り返ると、新型がデビューイヤーにお目見えするケースは少ない。おそらく「東京モーターショー2021」が発表の舞台となり、その翌年となる2022年の日本導入とみるのが妥当だろう。
ルノー・ジャポン広報部によれば、2021年早々に販売を切り上げる予定はなく、日本法人でもフランス発表以上の情報は持ち合わせていないとのこと。
まずは欧州での新型の情報を確認し、現行型の購入か、新型を待つかの判断でも遅くはなさそう。
ただ、今後もフレンチMPVの独自性が保たれることは間違いなく、日本のミニバンにとって、より脅威的な存在となりそうだ。
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