■軽と普通車、規格枠の違いで安全面は大きく変わる?
「軽自動車」というだけで嫌がる方も多いと聞きます。室内空間も広く、ターボモデルであれば走りの不満も近年の新型モデルでないと思います。そこでなぜ軽自動車を嫌うのか理由を尋ねてみると、「ボディの鉄板など薄く、事故にあったらどうなるか不安です」と言います。果たして、軽自動車は普通車に比べて安全性は劣るのでしょうか。
軽自動車と普通車が別物のワケ 規格や税、差異の根拠はどこにある?
軽自動車のボディの規格枠は決まっており、全長は3395mm、全幅は1475mmで、全車が共通になっています。最近の売れ筋モデルはそのほとんどが規格いっぱいのギリギリサイズで造られています。
小型/普通車の大きさはいろいろですが、5ナンバーサイズの小型車に属するコンパクトなホンダフィットは、全長が3990mm、全幅は1695mmです。フィットは小型車の中でも小さな部類に入りますが、軽自動車のボディはさらに全長が595mm短く、全幅は220mm狭いのです。
しかし軽自動車のホンダN-BOXは、室内長が2240mm、室内幅は1350mmもあります。フィットの1935mm/1450mmと比べて、あまり差がありません。逆に室内長は軽自動車のN-BOXの方が305mm長く、室内幅が小型車のフィットより100mm狭いだけです。
室内長は運転席前のパネルの一番手前から後席の後端までを計測したもので、形状によっても数値が違います。室内幅も含めて、あくまでも概算ですが、N-BOXがボディサイズの割に広い室内を備えることは確かです。
そうなると単純に考えれば、衝突された時に衝撃を吸収する部分が小さくなります。
例えば全幅から室内幅を差し引いた数値は、フィットは245mmですが、N-BOXは125mm。側面衝突された時に衝撃を受け止める部分は、あくまでも数値上とはいえ、N-BOXはフィットの約半分です。「軽自動車を購入して、万一の時に大丈夫かな?」と不安を感じるのは、当然だと思います。
■実際の様々な安全試験結果で比較
そこでひとつの目安として、独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が実施する自動車アセスメント(Japan New Car Assessment Program:JNCAP)の結果を見てみましょう。さまざまな安全試験を行った結果を公表しています。
この評価を見ると、N-BOXのフルラップ前面衝突試験結果は運転席が9.61点で助手席が10.57点。右側が衝突するオフセット前面衝突試験は10.58点/9.23点。車両の右側から衝突された時の側面衝突試験は運転席が11.81点。後面衝突頚部保護性能試験は運転席/助手席が11.32点です。総合的な乗員保護性能は88.8点になります。
フィットは2013年に現行型が発売された時の試験結果ですが、フルラップ前面衝突は10.59点/9.88点。オフセット前面衝突は10.67点/10.94点。側面衝突は12点。後面衝突は11.97点でした。総合的な乗員保護性能は92.59点です。
点数を比べると、総合評価を含めて全般的にフィットが優れていますが、さほど大きな差はないことがわかります。N-BOXで最も懸念された側面衝突も、優秀なレベル5に達しています。N-BOXはフィットに近い衝突安全性能を備えていると判断して良いでしょう。
N-BOXは緊急自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を作動できる安全装備も、フィットなどの小型車、さらに普通車とも基本的に共通のホンダセンシングを採用しています。ミリ波レーダーと単眼カメラをセンサーとして使い、歩行者を検知して緊急自動ブレーキを作動させたり、高速域でも車両に対して緊急自動ブレーキが働きます。
N-BOXは予防安全性能試験の結果も高く、時速50kmで停車車両に衝突しそうになった時、緊急自動ブレーキで回避できました。時速60kmの歩行者回避、時速35kmにおける遮蔽物から歩行者が出てきた時の衝突回避もこなしています。この評価は76.6点/79.0点とされ、N-BOXと同じ2017年にテストしたフィットの65.5点/79.0点を少し上まわりました。
N-BOXの優れた安全性能について、ホンダの開発者は「ホンダでは誰も(交通)事故の被害にあわないクルマ社会をめざしています。そこで(軽自動車の)N-BOXにも、先進的なホンダセンシングを装着しました。N-BOXは販売台数の多い車種でもありますから、(交通)事故を低減させる社会的な効果も大きいと思います」と述べています。
またホンダカーズ(ホンダの販売店)からは「今は軽自動車の安全装備が急速に充実しています。低価格で優れた安全装備が得られることも、軽自動車を選ぶメリットでしょう。その意味で設計の新しいN-BOXが安全性能の優れたホンダセンシングを装着するのは、当然のことだと思います。お客様の評価も高いです」と言います。
■今の軽自動車は小型車に匹敵する安全性能を備えた
ただし軽自動車の安全性は、車種による違いも大きいです。N-BOXの乗員保護性能は、総合評価が前述の88.8点でしたが、70点前後の車種もあります。共通化されたボディサイズと違って、すべての軽自動車が同程度の安全性を備えているわけではありません。
緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も同様です。時速30kmを上限に、車両だけを検知する車種もあります。小型/普通車にも当てはまる話ですが、衝突安全性や安全装備は、車種によって差があるので、自動車アセスメントなどを参考に安全な車種を選びましょう。
結論をいえば、今の軽自動車は小型車に匹敵する安全性能を備えているといえますが、それは安全性能が優れた車種であることが条件です。今の軽自動車は背の高い車種が売れ筋で、全高を1600mm以上に設定した車種が軽乗用車全体の75%を占めます。価格も高く、売れ筋車種の価格帯は140~170万円に達します。多額の出費を有効に活用するためにも、安全性能を良く調べて買いましょう。
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