■三菱を代表する「パジェロ」と世界戦略車「パジェロスポーツ」
現在では、多くの“SUV”をラインナップするメーカーが増えており、SUVブームの真っ只中です。その多くはオンロード走行を重視し、乗用車をベースとして設計されたモデルで、トヨタ「RAV4」や「ハリアー」などが1990年代に先鞭をつけました。
【画像】絶対カッコイイ! 三菱”次期型”「デリカ」こと「謎のコンセプトカー」を画像で見る(84枚)
当時はまだSUVという呼び名も日本では普及していませんでしたが、1990年代のSUVといえば、ラダーフレームを備え悪路走破性に優れた本格的な4輪駆動車(クロスカントリー車)が主流の時代でした。
1970年代までのクロスカントリー車といえば、軍用出自の「ジープ」に代表されるような「快適装備が極めて少ない、無骨な乗り物」というイメージが強くあり、一般的なユーザーは購入しにくいクルマでした。
しかし三菱が1982年に発売した初代「パジェロ」は、乗用車のような快適な内装と装備を持ちつつ、ジープ並みの悪路走破性を両立してヒット作に。
海外にも輸出が行われ、さらには過酷なパリ・ダカールラリー(当時)に出場し好成績をあげたことなどから、三菱のみならず日本を代表するクロスカントリー車として世界にも知られるようになりました。
1991年には進化を遂げてさらに快適性をアップした2代目が登場。その後1999年と2006年のフルモデルチェンジでは、車体の大型化と高級化が一層進みました。
しかし2019年、日本国内向けの生産および販売終了がアナウンスされ、さらに2021年には、パジェロを生産していたその名も「パジェロ製造」が閉鎖。パジェロの生産が完全に終了しました。
ところが、世界ではまだパジェロの名前は残っています。それが、「パジェロスポーツ」です。現行型は2015年デビューの3代目ですが、1996年に発売を開始した初代は、実は日本でも「チャレンジャー」として販売されていました。
チャレンジャーは、2代目パジェロのラダーフレームを流用して悪路走破性を保ちつつ、ステーションワゴン的な5ドア車体を載せたモデルでしたが、「エアトレック」の誕生に伴い、日本では2001年に終売しています。
2007年には、ピックアップトラック「トライトン」をベースに開発された2代目パジェロスポーツが登場。しかし生産拠点は海外に移動し、日本での生産・販売は当初から行われませんでした。
この流れは3代目パジェロスポーツも継続しています。三菱では、トライトンとパジェロスポーツを世界戦略車として位置付けていますが、残念ながらどちらも、日本国内での販売がされたことはありません。
このように、パジェロとパジェロスポーツの間には、車名以外の関連性はなくなっていますが、パジェロが持っていたタフなイメージと、ラダーフレームを持つ本格的な4輪駆動車としての性能は引き継がれています。
ところで、トライトンは2023年7月にフルモデルチェンジを受けたため、追って兄弟車であるパジェロスポーツも、4代目に発展すると予想されています。トライトンは2024年からいよいよ日本での発売が決まりましたが、SUVブームの最中といえる今こそ、パジェロスポーツの日本導入にも大いに期待したいところです。
■ジャパンモビリティショー2023では次期型「デリカ」を展示?
そんな折の2023年9月。三菱は、開催迫る「ジャパンモビリティショー2023」のブースイメージを発表しました。そこには、見知らぬシルエットのクルマが写っており、「これは次期型パジェロではないのか」などとSNSなどで話題を呼びました。
続く10月には、より詳しいニュースがリリースされました。前述のトライトン日本初披露のほか、「電動クロスオーバーMPV(MPVとは「多人数乗車可能なクルマ」、つまり「ミニバン」)のコンセプトカーを世界初披露」とも記されており、砂埃を巻き上げて走るミニバン風のクルマのティザーイメージも添付されています。
この電動クロスオーバーMPVの詳細を見ると、「SUVならではの走破性とMPVの居住性と快適性、使い勝手を兼ね備え、カーボンニュートラル社会の実現を見据えた電動クロスオーバーMPV」という文字が踊っています。
同社のクロスオーバーMPVといえば、「デリカD:5」が思い浮かびます。フル7シーターミニバンの実用性と、三菱伝統の悪路走破性を兼ね備えた唯一無二のモデルとして、市場で高い評価を受けています。
しかし現行型の登場は2007年。幾度もの改良を繰り返し、2019年には大規模なマイナーチェンジを行なっていますが、フルモデルチェンジの声が聞こえてきてもおかしくありません。そのためこのコンセプトカーは、次期デリカD:5を示唆する可能性が高いといえるでしょう。
※ ※ ※
パジェロの国内消滅から約4年経って開催されるジャパンモビリティショー2023でも、パジェロの復活は叶いませんでした。
しかし、トライトンの展示は大いに意味があると感じられます。パジェロの名を冠したパジェロスポーツが日本の路上を走る日も、そう遠くはないのかもしれません。
そして元祖パジェロ再登場への望みも、引き続き持ち続けたいと思います。
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