NからSへ換装 高まった完成度
初っ端から言い訳っぽくなってしまうのだが、昨年10月の筆者のBMWアルピナXB7のレポートは、個人的にはスッキリと咀嚼できていない。
【画像】アルピナとM、どう違う? アルピナXB7とBMW X7 xドライブ40dを比較【詳細】 全75枚
試乗会の会場である逗子マリーナから走りはじめてすぐ渋滞にはまり、高速道路の短い区間をビュッと走っただけで時間終了。結論としては「アルピナらしいシャシーファスター」、「でもSUVらしくカジュアル」と結んでいる。実際にそう感じたのだけれど、もっと乗り込めたなら違う表現もあったのではないか? と思わずにいられない。
あれから8か月後、マイナーチェンジを経てヘッドランプが上下2段、いわゆる「ダブルフェイス」となったBMWアルピナXB7に軽井沢で試乗する機会に恵まれた。軽井沢なら満足のいく試乗ができそうだ。
今回の試乗が楽しみな理由はもう1つある。ベースモデルとなったBMW X7のマイチェン前と後の違いが目覚ましいものだったからである。
後期型の識別ポイントは「顔」だが、最も重要な変更点はパワートレインだ。なんとV8エンジンがN63からS68に変更されている! という事実をもっとわかりやすく表現するならば「エンジンが標準的なBMW用からM謹製に変わっている」ということ。
もちろんXB7でもこれは同じだ。アルピナは現行のB3で史上初めてBMW M用エンジンを搭載し躍動感がプラスされている。後期型XB7にも同じ効果が表れているだろうか?
直線でも山道でも ペースを選ばず輝く個性
新型XB7に乗り込んですぐに「前と違う!」と感じたのは加速だった。スロットルの動きに寸分も遅れることなく、ドンッと加速する。S68ユニットの最高出力は621psなので前期型が搭載していたN63と同一。
だが48Vのマイルドハイブリッドが追加されており、加速しはじめのターボラグの段差をモーターの12psがうまく埋めているに違いない。もう1つ、8速ATのダイレクト感も増しており、加速をより鋭くキレのいいものにしている。
中軽井沢から鬼押し出しへと続く峠道では、瞬発力のあるパワートレインに対するシャシーも優れていることがわかった。おそらくエアサス自体は前期型と同じものだが、以前よりもロールやピッチングがはっきりと抑え込まれている。抑え込むと乗員の頭部に掛かるGが強くなり我慢を強いられたりするものだが、それがないことも素晴らしい。
ロールによる倒れ込みを待たず、クルマが前へ前へと出ていく感じ。XB7の駆動はAWDなのだが、コーナーからの立ち上がりではリア2輪に掛かったパワーが突出して感じられる点も気持ちがいい。リアの電制デフによるベクタリングもXB7をよく曲げてくれる。
スポーティなSUVの多くはスタビリティをAWD任せにすることでドライブフィールを濁らせてしまっているものが多い。だがアルピナは2.7t近い車重と真摯に向き合い、ファインチューンの蓄積により問題を解決している。
「そうそう、アルピナってコレだよね!」。久しぶりにSUVで、山道のドライビングを堪能することができた。
アルピナ・マジックの感覚は、2倍2倍!
では「アルピナってコレだよね!」のコレとは果たして何なのか? この命題に突き当たるといつも表現が抽象的になってしまうのだが、今回はいい機会なので考えてみることにした。
前期型を試乗した際は「こういうカジュアルなアルピナもありですよね」的な締め方だったのだが、今回の印象は違う。新型XB7は筆者が考える「これこそ王道!」といえるアルピナだったのだから。
パワートレインに関しては、シャシーファスターというより、最後のところで一歩だけパワートレインが引き下がる感じ。ギリギリまでせめぎ合いつつ調和している。
一方のアルピナのアシまわりは、まっすぐでも曲がっていてもソリッドに働くBMW Mのそれに対し、しっとりとした厚みを感じさせてくれるもの。
アルピナの動的質感に対する筆者の印象はいつも、まるでタイヤ幅が2倍あるような、そしてサスペンションストロークも(フルに使わないにしても)2倍あるような。防音防振材増し増しに感じられるのだ。
アルピナ=ドライバーが頑張らなくてもどんどんペースが上がっていくクルマ、もしくはスポーティであると同時にラグジュアリーでもあるクルマだとすれば、そんな例えもあながち的外れではないと思う。
少し話が逸れてしまったが、新型XB7の結論は明快だ。ボディサイズや車重から説明がつかないドライバビリティはまさにアルピナ・マジックそのもの。
メーカーとしては最終段階に入った現在のアルピナだが、クルマ作りの腕前は今なお冴えわたっていたのである。
アルピナXB7のスペック
価格:2740万円
全長:5180mm
全幅:2000mm
全高:1835mm
最高巡航速度:290km/h
0-100km/h加速:4.2秒
燃費:-
CO2排出量:-
車両重量:2670kgkg
パワートレイン:4.4L V型8気筒ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
エンジン最高出力:621ps/5500-6500rpm
エンジン最大トルク:81.6kg-m/1800-5400rpm
モーター最高出力:12ps/2000rpm
モーター最大トルク:20.4kg-m/0-300rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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