顔がないのが日本ならではの顔
日産インフィニティQ45をベースにインパルが作り上げたチューンドカー、インパル845Sについて、前編の記事(下の「関連記事」参照のこと)においては、プラモデル作例の作者・飯塚氏による解説をお読みいただいた。ここでは、845SのベースとなったインフィニティQ45の実車について触れておこう。
大人の艶で魅せるチューンドカー、「インパル845S」!アオシマ製プラモ「Q45」からの改造・前編【モデルカーズ】
【画像47枚】顔を付けてシャープに仕上がった845S、その再現工程を見る!
インフィニティQ45は1989年11月に発売された。この発売に先駆け、同年10月下旬開催の東京モーターショーにて同車は発表されている。車名の「インフィニティ」は広く知られているように、日産が北米市場でスタートさせた新しいプレミアムブランドの名(その後世界各地で展開)であり、アメリカでの発売も同日に行われた。日本でのインフィニティ・ブランドの展開はなかったため、国内での車名はあくまで日産インフィニティQ45であった。
Q45のボディサイズは全長5090mm/全幅1825mm/全高1435mm、ホイールベースは2880mm。このディメンションの元に構築されるスタイリングは、低く抑えたノーズと6ライトの大きなキャビンを持つものであったが、何と言っても最大の特徴は、高級車の象徴であるフロントグリルを持たないことだった。代わりに七宝焼きの大きなエンブレムがフロント中央に鎮座しているという、この個性的なスタイルは、開発テーマである「ジャパン・オリジナル」を体現したものである。また、このQ45のルックスは、1985年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカー、QUE-Xを発展させたものとも言え、多くの特徴が共通している。
エンジンはQ45のために新開発されたV型8気筒を搭載。このVH45DE型エンジンは排気量4494cc、90度V8でヘッドはDOHC、可変バルブタイミング機構(NVCS)を採用し、最高出力280ps/最大トルク40.8kgmを発揮した。後にこのユニットからは、二代目シーマやレパードJ.フェリーに採用された4.1Lバージョンも派生している。話をQ45に戻すと、V8が採用されたのはやはり北米市場を意識しての選択だったと言われている。ミッションは電子制御4速オートマチック(E-AT)が組み合わされ、後輪を駆動。
サスペンションは前後ともマルチリンク式で、市販車として世界初の油圧アクティブサスペンションをオプション採用したことも特筆される。これにより、スポーティなビッグサルーンとしての走行性能については、世界最高のレベルと評価が高かった。このアクティブサスはセレクションパッケージというオプションを選択すると、本革内装と鍛造アルミホイールとともにセットで装備された。なお、本革と鍛造アルミのみの場合はLパッケージとなる。
そのスポーティぶりを反映してか、インテリアは4名乗車を前提としたような設計で、後席も左右バケットシートのような形状となっていた(一応乗車定員は5名)。先述の「ジャパン・オリジナル」とは、世界に通用する日本独自の価値を追求するというものだが、その最も顕著な例と言えるのが、インテリアに採用された金粉蒔絵パネルのKOKONである。高級車の室内と言えば定番の本木目(Q45では採用なし)の代わりとして装着されるものだが、エッグシェルと呼ばれるホワイトの本革内装とのセットとしてオプション設定されていた。
このように独自の世界を展開したQ45であったが、それが災いしてか、日米ともに販売は苦戦。そのため1993年6月にはマイナーチェンジを実施、新たにメッキのフロントグリルと内装の本木目パネルを採用している。またこのとき、助手席側にもエアバッグがオプションで装着可能となった。グレード構成はタイプRとタイプVの2種となり、油圧アクティブサス装着車は後者に設定されている。こうしたテコ入れも効果は薄く、北米向けは1996年に二代目へとモデルチェンジを果たした(Y33型シーマがベース)ものの、日本国内向けはそのまま生産終了となった。
選択式のメーカー心づくしが嬉しいキット、その利点を活かす
インフィニティQ45のプラモデルについては、アオシマとフジミの両社から、1/24スケール・キットとして製品化されている。フジミのQ45はとにかくボディプロポーションが素晴らしいのだが、インテリアはバスタブ式、シャシーはトヨタ・セルシオと共通(流用)となるのが少々残念だ。しかし、左ハンドル用のダッシュボードも付属し、北米仕様が作れるという長所もある。現在(2023年6月)でも入手可能である。
アオシマのQ45は少々ボディ形状が固いのだが、実車をしっかりと再現したシャシーや、内張りが別体のインテリアが付くのがありがたい。このQ45をベースに、アオシマでは兄弟車のプレジデントJS(Q45のホイールベースを延長して生まれたのが三代目プレジデントだが、後に同寸のモデルがショートホイールベース版として加わった)もキット化していた。これらは別のキットだったのだが、現在販売されているのは、インフィニティQ45/プレジデントJSの選択式となっており、ボディをはじめとして異なるパーツは両車用のものがどちらもセットされた内容となっている。
ここでご覧いただいている作例はすでに述べた通り、アオシマのQ45(現在の選択式キット)をベースに、インパル845Sへと仕立てたものだ。このキットには、隠れたオマケパーツとしてインパルグリルが付属するほか、プレジデントのフロントバンパーも改造へと利用するにはもってこいの形状となっており、作例はそうしたメリットを最大限に活用したものになっている。興味の沸いた方は、同じ改造にチャレンジしてみるのも一興であろう。
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