いつの時代も、カタログ燃費と実走行での燃費の差は何か?というのが話題になる。カタログ燃費と実燃費が違いすぎる・・・この題は尽きることはない。
2016年6月10日、国土交通省と独立行政法人・自動車技術総合機構(NALTEC)の特別チームは、「現状の燃費測定法では実用燃費との差が大きいため、燃費値の差がより小さいものとなるよう、WLTP(国際調和排出ガス・燃費試験法)を導入した上で、新たな燃費表示法を検討する」と発表した。
■JC08モード燃費の計測法
現在、日本で採用されている燃費測定法は「JC08モード燃費」と呼ばれている。その昔の燃費計測は60km/hの一定速度での燃費(定地燃費)を表示していたが、1973年からは東京都の市街地走行を想定し、10項目の走行パターンを設定した「10モード燃費」に移行している。
そして、1991年からは郊外道路モードを追加した「10・15モード燃費」に変わり、2011年からは現在のJC08モード燃費へと替わってきている。
燃費試験(=実際には排ガス試験)はシャシーダイナモを用いて行なうが、事前に自動車メーカーが走行抵抗、つまり、空気抵抗やタイヤの転がり抵抗などを測定し、その数値をシャシーダイナモのローラーに同等の負荷をかけることで計測している。
また、測定時は、エアコンなど車載電装の電源はオフとする。運転するドライバーは、JC08モードの運転に合わせて表示されるモニター(堀場製作所製のドライバーズエイド)を見て「○秒間で○km/hまで加速」といった指示に合わせ、アクセルを操作する。
JC08モードの前半部分は市街地モードのため、緩やかな加速で、イメージ的にはアクセルペダルを2/8(アクセル開度は8分割表現)、つまり、軽く、わずかに踏み込む感じだ。後半の高速部分での加速はアクセルを半分程度踏み込むような加速となる。
2ペダル車の場合は、「Dレンジ」で運転する。指定速度の誤差は+-2km/hだ。独立行政法人・自動車技術総合機構(NALTEC)での型式認証時の計測では、この指定速度から外れると、そこで試験は中止となる。当然ながら自動車技術総合機構(NALTEC)の測定スケジュールは決められているため、測定が中止になると大事件になるので、自動車メーカーの運転担当者に失敗は許されない。そのため、社内で事前に練習しているのは言うまでもないが、その一方で都市伝説として、優れた燃費をたたき出すスペシャリスト!というわけではないのだ。
あくまでもモードに従った正確な運転ができるかどうか? が問題で、モードに合わせた繊細なアクセル操作ができれば、誰が運転しても燃費の差はまず出ない。
なお燃費測定という表現を用いているが、正確には排ガス計測であり、モード運転中に排出される排ガスのCO2の量を計測し、消費したガソリンに換算する方法で燃費が算出される。
このような燃費測定試験のために、自動車メーカーはCVTやATの変速特性をチューニングし、JC08モード試験のようなコンディションではオルタネーターによる発電を抑制するような制御チューニングなどが行なわれている。
しかし、いずれにしても電装系はオフの状態で、無風での試験コンディションであり、アクセルを大きく踏み込む急加速などは測定時に使用されないので、実燃費との差は生じるのは、いわば当然なのだ。
■各国の燃費測定法とWLTP
JC08モードは日本独自のもので、ヨーロッパではNEDC(新ヨーロッパ・ドライビングサイクル)、アメリカでは市街地とハイウェイの2種類の燃費を計測している。そのため、同じクルマでも、日本、ヨーロッパ、アメリカでそれぞれ異なる燃費データになるわけだ。
その一方で、世界的には国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)を採用しようという動きが加速している。世界共通の燃費計測法に統一し、地域、国による燃費表示の差をなくそうという動きだ。WLTPでの燃費計測法については表の様な運転モードが検討されている。
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