2月9日に行われたレッドブルの発表がFIAのモデルカーベースで行われたことで、開幕前の各チームの新車発表も同じようなことになるかとの疑念が持たれたが、翌10日に実施されたアストンマーティン・アラムコ・コグニザント・フォーミュラワン・チームの発表会では『AMR22』の“ほぼ実車”が発表され、実に嬉しい驚きであった。
もちろん、予想どおりにベースは厳しいレギュレーションに則って、FIAモデルに似たアウトラインはみせているものの、アストンマーティン独自の開発が各所に散見されたからだ。フロントウイングは4枚組だがメインエレメントは2枚目であり、フォワードエレメントを数多くのヒンジで吊り下げるかたちで搭載。調整可能のトップフラップは過去の物に近いコンサバな形状を見せているが、これはアジャストによるエアロ変化をより効率的に大きく出そうとしたためだろう。
アストンマーティンF1が2022年型マシン『AMR22』を発表。体制強化でパフォーマンス改善なるか
ユニークなのはサイドポッドのエントリーダクト。四角く前方に突き出たインナー側と、FIAモデル型の後方へ仰角を持つアウター側に別れているところだ。さらに、サイドポッド上面は規則通り連続同曲率で後方へ向かい、その上面には上方に向かうフィンエッジ、規則内に低く収められた無数のスリットが開けられている。これはメルセデスPU搭載車には今後も見られる可能性が高い。後部排熱だけでは容量不足があるのかもしれないからだ。また、比較的単純な曲率が後方へ長く続くことから、上面空気流の剥離を遅らせるための排熱空気流の吸い出しを狙ったのかもしれない。
リヤウイングの形状もFIAモデル型だが、より実戦型の新規則内DRSフラップの現物が登場している。形状は今まで通りで、このフラップの形状は規則上、比較的フラットが維持されているので、他のリヤウイングエレメントが極めて複雑な3D形状のなかで、浮いた存在感を示している。
さらに、フロントタイヤのフェアリング・ディフレクターはFIAモデルよりも大きく、フロントブレーキダクトと一体化されて18インチホイールの内側を大きく覆っている。ホイールのアウターカバーも個性があり、フラットなリングではなく視覚的にスポークの様な処理が面白い。
これらはみな結構な個性を持っているように思えるが、今後登場してくる各車がこれらにどう対処しているのかが実に興味深い。実車発表の先陣を切ったアストンマーティン『AMR22』のこれらの個性が、果たして2022年シーズンのトレンドリーダーとなりうるのか、それはバルセロナテスト以後に明らかになってくるはずである。
《プロフィール》
津川哲夫(つがわてつお)
1949年生まれ。F1メカニックを志して1977年に単身渡英。トールマン、ハース、ベネトンなどのチームでメカニックを勤め、1990年シーズンでメカニックを引退。その後、F1中継でピットレポートやセッション解説、そして雑誌やwebメディアでメカニック経験を活かしたメカニカルな視点でF1の魅力を伝え続けている。
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