■生意気そうなフロントフェイスの小型車を振り返る
クルマの外観デザインは販売を大きく左右する重要な要素ですが、なかでもフロントフェイスは文字どおりクルマの「顔」にあたる部分で、第一印象が決まるといえるパートです。
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このフロントフェイスは時代によって流行が変化しており、近年はLEDヘッドライトの普及によって造形の自由度が増したしたことから、シャープな印象のコワモテなクルマが多くなりました。
以前はコワモテなクルマというと大型のミニバンやセダンというイメージが強かったのですが、近頃はコンパクトカーや軽自動車にも波及。
そこで、生意気そうに見えるほど眼力が鋭いコンパクトモデルを、5車種ピックアップして紹介します。
●スズキ「アルト」
1979年に誕生して以来、スズキを代表する軽自動車のエントリーモデルである「アルト」は、現行モデルで8代目にあたり、すでに40年以上もの歴史を刻んできました。
現行モデルのアルトは2014年に発売され、軽乗用登録の5ドアセダンが基本で初代からの伝統を受け継ぐ4ナンバーの商用バンをラインナップ。
新プラットフォームの採用によりエンジンルームを最小化したことで、軽セダンではトップクラスの室内長を実現するとともに従来モデル比で60kg軽量化され、最軽量の「アルト F」グレードでは驚異的な610kgを達成しています。
この8代目アルトのフロントフェイスはスパッと切り落としたような平面のようで、台形を横置きにしたコンビネーション・ヘッドライトを配置。
7代目がファニーな印象だったのに対して、8代目では睨むような目となっています。
また、近年の軽自動車としては珍しくメッキパーツでの加飾はエンブレム以外無く、エントリーモデルらしくシンプルさを強調。
64馬力のターボエンジンを搭載する「アルトワークス」では同様のデザインながら、メッキパーツをアクセントに使うことで、よりヤンチャな印象となっています。
●三菱「eKクロス」
2019年3月に発売された三菱の軽トールワゴン「eKクロス」は、4代目「eKワゴン」と同時に発売された、流行のクロスオーバーSUVです。
外観の特徴である縦型3灯式LEDヘッドライトは、三菱車共通のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を取り入れており、一見するとヘッドライトに見えるシャープに吊り上がった薄型のライトがポジションランプで、かなり押し出し感のあるフロントフェイスとなっています。
また、前後フェンダーアーチとサイドステップをブラックカラーに加飾し、ルーフレールを装着するなどSUVらしさを演出。
パワートレインにはCVTと2.7馬力のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドが採用され、最高出力52馬力の直列3気筒自然吸気エンジンと、64馬力の直列3気筒ターボエンジンが用意され、三菱初の高速道路同一車線運転支援技術「MI-PILOT(マイパイロット)」を設定するなど最新モデルにふさわしく、先進安全技術も充実しています。
●ダイハツ「ブーン シルク」
ダイハツ「ブーン」は2004年に初代が登場した5ドアハッチバックのコンパクトカーです。トヨタにもOEM供給され「パッソ」として販売。軽自動車よりも余裕ある走りが可能なことから、一定の人気をキープしています。
そして、現行モデルのブーンは2016年にデビューした3代目で、標準グレードの「X」と、ヘッドライトやフロントグリル/バンパーの形状を変更した上級グレードの「CILQ(シルク)」、ダイハツのオリジナルデザインとなる「STYLE(スタイル)」のデザイン違いによる3タイプをラインナップ。
エンジンは全グレードで共通の1リッター直列3気筒DOHCを搭載。最高出力は69馬力とローパワーながら910kg(2WD車)と軽量なボディで、キビキビとした走りが可能です。
この3代目ブーンのなかでもシルクは大胆なデザインの六角形大型フロントグリルが特徴で、近年のモデルでは珍しい丸目基調でいて吊り上がったヘッドライトとの組み合わせによって、口を大きく開けて怒っているようなイメージとなっています。
なお標準グレードのXはフロントグリル上部の水平ラインをシルバー塗装に加飾され引き締まった顔立ちで、スタイルはシルクと似ていますがフロントグリルは丸みのある笑った感じのカワイイ印象です。
■海外専用モデルの日本車は目ヂカラがすごい?
●日産「マーチ」メキシコ仕様
1982年に発売された日産のベーシックカー初代「マーチ」は、欧州市場も視野に入れた世界戦略車として開発され、日欧でヒットを記録しました。
現在、欧州で販売しているマーチは初代から継承する「マイクラ」の名ですが、2016年以降は日本のマーチとは別モノの海外専用モデルとなり、3ナンバーサイズとワンクラス車格が上の5ドアハッチバックです。
一方、日本だけでなくタイなどのアジア圏やメキシコでは日本と同様なマーチが展開されていますが、ユニークなのがメキシコ仕様で、独自の2021年1月に独自のマイナーチェンジがおこなわれました。
このマイナーチェンジによって日産のデザインコンセプトである「Vモーショングリル」を強調した精悍なフロントフェイスへと変貌。
ヘッドライトも丸基調の日本仕様とは異なるシャープなデザインとなり、どちらかというと欧州のマイクラに近い印象です。
なお、国内のマーチは2020年7月に先進安全技術のアップデートを中心とした改良がおこなわれましたが、外観はとくに変更されていません。
●トヨタ「アイゴ」
2005年にトヨタはPSAグループ(現在はステランティス)と共同開発した欧州市場向けAセグメントのコンパクトカー、「アイゴ」を発売しました。
アイゴは前出のパッソよりもさらに小さいモデルで、プジョー「107」、シトロエン「C1」と兄弟車です。
現行モデルのアイゴは2014年に発売された2代目で、ボディタイプは3ドアと5ドアハッチバックがあり、エンジンは72馬力の1リッター直列3気筒DOHCでパッソと同型を搭載。
ボディサイズは全長3465mm×全幅1615mm×全高1460mmとかなりコンパクトで、軽自動車よりもひとまわり大きいくらいのサイズ感です。
ユニークなフロントフェイスは日本の漫画やアニメに強くインスパイアされたものといわれていますが、「X」をモチーフにしたデザインは、ホワイトのボディカラーでは歌舞伎の「隈取」のようにも見え、コンパクトカーながら強い存在感を主張しています。
また。フロントフェイス以外にもヘッドライトからフロントウインドウへとつながるライン、リアの大きなガラスハッチ、フロントバンパーと共通するデザインのリアバンパーなどが特徴的です。
※ ※ ※
繰り返しになりますがクルマのデザインは服などと同じく流行があり、各メーカーも流行に逆らうことなく乗じている状況です。
やはり、あまりにも奇をてらうと失敗する可能性があり、実際に過去のモデルでもマイナーチェンジでフロントフェイスのデザインを一新したケースも少なくありません。
とはいうものの、横並びで同じようなデザインというのも、寂しいところではないでしょうか。
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