新型レガシィB4に続き、アウトバックも新型が発表になった。スバルの代名詞とも言える「レガシィ」だが、近年は大型化が進んでいる。
国内市場向けにレヴォーグが存在するもののやはり「レガシィ」の名は継承してほしいものだ。
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そこでスバルを語らせたら業界随一のスバリストライター、マリオ高野氏にこれまでの歴代レガシィベスト3をチョイスしてもらった。
新型レガシィの分析と共に、アツき思いをお届しよう。
文:マリオ高野/写真:スバル
■新型レガシィ、アウトバックから見えてくるものとは?
2019年2月のシカゴオートショーでセダンのB4がアンヴェイルされた。
そしてつい先日開催されたニューヨーク国際オートショーではアウトバックの新型が発表されている。
現行型からキープコンセプトで登場した新型。次期B4は国内生産はないというが、レガシィの伝統は途絶えてしまうのか?
これで次期型7代目レガシィの姿がおおむねわかるようになった。
おそらく2019年秋の東京モーターショーでデビュー(編集部註:発売は2020年春頃と予想)する日本仕様の詳細はまだハッキリしないものの、次期型B4は国内で生産されないことがニュースになっている。
そう、国内向けの次期型レガシィについては、あまり明るい話題がない。
現行型アウトバックは比較的安定して売れているものの台数は多くない。
スバルの大黒柱でもあるアウトバック。新型レガシィの系譜が徐々に明らかになってきた
さらにB4にいたっては月販2ケタ台で推移しているので、国内向けレガシィの展開が縮小する理由はよく理解できる。
国内の中型セダン/ワゴン市場が冷え込んで久しく、1990年代の国内販売の屋台骨だった「ツーリングワゴン」はすでに現行型より消滅し、そのポジションはレヴォーグが継承。
スバルのセダンはB4の他にWRX S4とインプレッサG4もあるので、次期型ではセダンB4が国内からなくなるのも致し方なしと思える。
車格はやや異なるがクラウンはよく売れているし、欧州車のセダン人気は今も堅調。
マークXなど他銘の中型セダンのシェアを奪う余地はまだまだ残されているように思えるが、セダンをやめて売れ筋のSUVに力を入れるというスバルの判断もわからなくはない。
古参のスバルファンから「レガシィは4代目まで。5代目からは違うクルマになった」とする声が聞かれることが少なくない。
レガシィについては、ある意味諦めの境地に達しているスバルファンも多いのだろう。
平成元年に生まれたレガシィも大人になり、客層も変わった。
個人的には、レガシィの販売の軸足は北米市場に置かれていることにすでに慣れているので、国内レガシィのラインナップ縮小は是非に及ばずといったところ。
筆者としても諦めきれない「6気筒の継続」や「MTの復活」を願う声は今後もクルマ雑誌やネット上では噴出するだろうが、それは叶わぬ夢になりそうだ。
北米向けのトップグレードに積まれる2.4リッターターボが国内向けにも導入されれば、守旧派のクルマ好きから支持されやすくなるはずだが。果たしてどうなるか。
現段階の予想としては寂しさが禁じ得ない一方、新しいアウトバックにもこれまでのレガシィが培ってきた伝統、グランドツーリング性を中心とした走りの良さはしっかり受け継がれているのは間違いない。
オフロードイメージのなかで発表されたアウトバック。世界観はレガシィのものがシッカリ継承されている証拠だ
NYショーでの発表の場でも悪路走破性やユーティリティ性の高さを強く訴求していたので、その点における「らしさ」が失われることもないと感じさせてくれた。
ミスターレガシィと呼ばれた故・桂田勝氏もよく口にしたという「不易と流行」を思わせるところが多いのも事実。
セダン、6気筒、MTがなくなっても納得できるクルマだと期待したい。
■独断でチョイスのマイベスト「レガシィ」トップ3
ということで、新型レガシィがもうまもなく生まれるという時期ではあるものの、個人的レガシィ(ツーリングワゴン含む)のベストモデル3選を選びたい。
1位 (初代セダン)レガシィRS type RA
1989年、スバルのモータースポーツ専門組織として立ち上がったばかりのSTIが、レガシィの「10万km世界速度記録」を達成した記念に製作した。
モータースポーツ競技用特装車をユーザーに提供するとともに、スバル積年の目標であるWRCへの本格参戦をレガシィで行うことへの決意も込められた、記念すべきSTIの限定車第1号だ。
すごく地味な存在ではあったが「そこまでやるか!!」というほどの手の入れ方はさすがスバルといった感じだ
10万キロ速度記録達成車と同様に、吸気ポート段差修正研磨や回転部分の入念なバランス取りを手作業で実施。
鍛造ピストンや高耐圧コンロッドメタルなどの採用により、出力アップなどのハイパフォーマンス化に対応出来る潜在ポテンシャルが与えられた。
最初は月産20台の受注生産だったが人気が高く、アプライドB型よりカタログモデルに昇格するも、競技向けゆえに現存個体は極めて少ない。
もはや街で見かけたら、脱帽して合掌せずにはいられない名車。
2位 (3代目セダン)レガシィS401 STiバージョン
レガシィシリーズ最初の「Sシリーズ」。3代目レガシィの開発をまとめた桂田勝氏がSTIの社長となりった。
「走ることへの情熱を抱き続ける大人の感性に響く、これまでにない質の高い走りの提案」として企画された。
エンジンはピストン、コンロッド、クランクシャフトは手作業によるバランス調整済み。
本格的なコンプリートカーとして登場したS401。カツカツした走りだけではなく、GT性能も追求する姿勢はこの頃から始まった
専用のバネ&ダンパーの装備やリヤサスリンクのピロボール化はもちろん、クロスメンバー補剛材追加などでボディも強化。
さらにはステアリングのギヤレシオ変更&高剛性化、市販品にはない専用サイズのピレリPゼロを装着。
仕上げにブレンボブレーキ採用、3代目レガシィ唯一の6MT(TY85)など、当時のスバル車としては最高・最強の装備で固め、作り手の執念を感じさせる。
2002年当時はプレミアムなレガシィは時期尚早にて、販売台数は伸び悩んだが、それゆえに希少性は高い。
3位 (4代目セダン/ワゴンの5MT)レガシィ2.0R
名車の誉れ高き4代目レガシィの、隠れた傑作グレード。
4代目で実施された排気の等長等爆化による改良効果はターボよりもNAのほうが大きく、中低速トルクを維持したまま大幅な高回転化と高出力化に成功。
4代目レガシィはターボモデルにどうしても目が行くが、あえてのNAモデルもとても楽しい
新形状のインテークマニホールドや、吸気バルブにAVCSを採用するなどしてMT向けは7100回転で190馬力を発生。
軽量ボディも相まって、痛快なNAスポーツグレードが誕生した。
スロットルボディがエンジン房内のほぼ中央にあり、しかも車室内向きに設置されるという縦置き水平対向エンジンならではのレイアウトを活かし、吸気チャンバーやエアクリーナーを堪能サウンドのためのスピーカーとして利用。
等長等爆エキマニであの「ドロドロ」音がなくなったが、それでも走りの効率はグッと上がった
チャンバー内部のリブの削除や高さの変更、チャンバー面の曲率や肉厚変更により狙いの周波数域に合わせるなどして音質を入念に調律している。
最初にして最後の痛快なNAレガシィとして覚えておきたい。
※※※
新型レガシィはもしやするとかつてのような刺激的な存在ではないかもしれない。
そしてB4やアウトバックについても国内生産は終了するという報道があるのを考えると、なんだか日本からレガシィが消えてしまうような寂しさも覚える。
しかし、脈々と受け継がれる走りのよさ、そして安全性の高さはきっと次期型も継承されているはずだ。
新型の日本上陸を心から楽しみにしたい。
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