軽自動車や小型車を中心に普及している「マイルドハイブリッド」システム。日本車では、マイルドハイブリッドといえば12Vですが、欧州では、48Vマイルドハイブリッドが積極的に採用されており、スズキもスイフトスポーツの欧州仕様に限って48Vマイルドハイブリッドを搭載しています。
なぜ、欧州メーカーはマイルドハイブリッドの駆動電圧を48Vに上げて使うのか、日本車でも今後48Vマイルドハイブリッドが普及する可能性があるのか、考察します。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
写真:SUZUKI、Mercedes-Benz、BMW、VW、Audi
イラスト:著者作成
マイルドハイブリッドは簡素で低コストだが、燃費向上効果は小さい
ハイブリッドシステムは、モーター出力とバッテリー容量の大きさによって、マイルドハイブリッドとフル(「マイルド」に対して「ストロング」とも呼ばれる)ハイブリッドに分類されます。しかしながら、分類に明確な定義はなく、通常は特別な高電圧対応が必要な60Vよりも駆動電圧が低いものを、マイルドハイブリッドとして扱います。
・マイルドハイブリッド
比較的小さなM/G(モーター/発電機)とバッテリーの組み合わせによって、減速時に発電機で発生する電力をバッテリーに充電(減速エネルギー回生)し、その電力を使って加速時などでエンジンの駆動力をアシストするシステムです。モーター走行がそれほど期待できないため、燃費向上効果はフルハイブリッドの半分程度にとどまりますが、低コストでコンパクトなので、軽自動車や小型車などで多く採用されています。スズキのS-エネチャージなどが該当します。
・フルハイブリッド
比較的大きなM/Gと大容量のバッテリーを、通常駆動電圧100V以上の高電圧で駆動します。多くの減速エネルギーが回収でき、出力の大きいモーターで駆動するため、ある程度の距離でモーター走行が可能。一般的なエンジン車で30%を超える燃費向上効果が得られます。トヨタのTHS-IIやホンダのe:HEV、日産のe-POWERなどが該当します。
フルハイブリッドは、通常2つのM/Gを使うことが多く、左図はトヨタのシリーズ・パラレル方式のTHS-II、右図のマイルドハイブリッドは日本で一般的な1つのM/Gをベルトで駆動するパラレル方式(イラスト:著者作成)
48Vは、「フル」と「12Vマイルド」の中間
一般的に、マイルドハイブリッドは、エンジンのオルタネーター(発電機)の代わりにISG(スターター機能付きの小型M/G)を搭載しており、冒頭でも触れたように、駆動電圧は、日本車では12V、欧州車では48Vが多く採用されています。
・12Vマイルドハイブリッド
モーターの出力が3~5kW程度に限られるので、回生できる減速エネルギー量は少なく、低速時や加速時にエンジン出力をアシストするのが主な役割です。安価なシステムですが、モーター単独で走行するだけのパワーはなく、燃費向上効果も小さめです。
・48Vマイルドハイブリッド
モーター出力を10~15kW程度まで増大させており、エンジン出力のアシストだけでなく、(システムの仕様に依りますが)30km/h~40km/h程度の低速運転でモーター走行が可能です。コストと燃費向上効果は、フルハイブリッドと12Vマイルドハイブリッドの中間となります。
48Vマイルドハイブリッドは、日本の国内メーカーではまだ採用例がありませんが、欧州では主要メーカーのほとんどが高級車の一部モデルに採用しています。冒頭でも触れたように、2020年、スズキが欧州仕様に限定して48Vマイルドハイブリッドを、スイフトスポーツで採用しました。
電動化技術の効果は、概ねシステムコストに比例。48Vマイルドハイブリッドのシステムコストと燃費向上効果は、フルハイブリッドと12Vマイルドハイブリッドとの中間となる(イラスト:著者作成)
「フル」がなかったため、出力の大きい「マイルド」が必要だった
欧州メーカーが、48Vマイルドハイブリッドを積極的に採用しているのは、12Vマイルドハイブリッドを採用する日本メーカーとは異なるいくつかの事情があります。
そもそも欧州メーカーは、2000年頃、シェアが高く燃費に優れたディーゼル車でCO2規制に対応することを優先したことが影響し、現在もフルハイブリッド技術で日本に後れをとっています。
カーボンフリーが強く求められるようになった現在、限られた数のバッテリーEVとプラグインハイブリッドだけでは、直近のCO2排出規制を乗り切ることができないため、欧州メーカーとしてもハイブリッドシステムは必要となっているのですが、フルハイブリッドでなくマイルドハイブリッドを選択しているのは、マイルドハイブリッドはシステムが簡素であることから、開発投資が抑えられるためです。
また、12Vではなく、48Vマイルドハイブリッドを採用しているのは、日本よりも全体的にクルマが大きいことで、高出力のM/Gが必要だったためです。駆動電圧を12Vから48Vに上げれば、モーター出力は単純に4倍になります。それならもっと駆動電圧を上げればとなりますが、直流電源の電圧は60Vを超えると人体に危険なので、特別な安全(漏電)対策が必要。60Vを超えない範囲で、高い48Vが選択されたのです。
燃費以外にも、欧州メーカーが48Vマイルドハイブリッドを進める背景には、48V電源の規格化の推進があります。現在クルマの機能部品は12V駆動ですが、EPS(電動パワステ)、電動ブレーキ、電子サスペンションなど車体系アクチュエーターの駆動電圧も48Vにすれば、駆動電流を小さくできて高効率化が可能。すでに欧州の部品メーカーは、駆動電圧の48V化を積極的に進めているのです。
スズキの国内仕様のスイフトは、12Vマイルドハイブリッドを搭載。ただし、スイフトスポーツの欧州仕様は、駆動電圧を上げた48Vマイルドハイブリッドを2020年に投入
日本では48Vの普及は限定的か
しかし、日本では、トヨタもホンダも日産(含、三菱)も、すでにフルハイブリッド技術をもっていることから、これら国内メーカーが国内向けモデルに、48Vマイルドハイブリッドを採用することはまずないでしょう。また、構造上ハイブリッドシステムを搭載することが難しい水平対向エンジンのスバルと、ロッキーで採用した簡素なシリーズハイブリッドの展開を図るであろうダイハツも、可能性は低いと思われます。
フルハイブリッドを持たないマツダは、近々登場する新型CX-5とマツダ6で48Vマイルドハイブリッドを採用することを発表していますが、マツダのメインマーケットが、北米や欧州といった海外市場であるため、日本向けも、48Vマイルドハイブリッド一本で開発する方が、効率はいいのでしょう。また、すでに欧州仕様で採用しているスズキは、燃費向上策として国内でも採用してくるかもしれません。
このように、日本では今後も、48Vマイルドハイブリッドが主流となることはないと考えられます。
◆ ◆ ◆
完成度の高いフルハイブリッドを開発した日本メーカーに対して、簡素な48Vマイルドハイブリッドで対応してきた欧州メーカー、技術的には日本の方が優れているのは明らかです。しかし、カーボンニュートラルの勢いでハイブリッドシステム自体が淘汰される可能性もあり、戦略的にどちらが適切な選択なのか、現時点では明確となっていません。全世界の自動車メーカーの存続がかかっているパワートレインの環境対応。今後の展開からは目が離せません。
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みんなのコメント
勉強になりました。
ベンツはsクラスを48vモーターとスーチャーとターボでドーピングし、3リットル6気筒で楽々走らせますが、この発想は日本人には受け入れられないでしょう。