スペシャリティカーにあるまじき破綻したデザイン!
ロータリーエンジン搭載を前提に開発は進められた
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日産シルビアの歴史の中で最も影が薄く、クルマ好きの記憶からもほぼ消え去っているモデルが今回のターゲットだ。そう、2代目である。
デビューは1975年。210サニーエクセレントをベースにL18型エンジンを搭載し、ひとクラス上のスペシャリティカーとして誕生したアレ…って、まだ思い出せないだろうか? だったら、当初ロータリーエンジンを載せるはずだったシルビアと言えば、やっと「おぉ、あったねぇそんなのが!」と思ってくれる人が10人中2人くらいいるかもしれない。
そんな2代目シルビアは、車両型式でいうとS10…なのだけど、1976年に登場したNAPS採用のL18インジェクション仕様になると、車両型式がS11に変わるため(取材車両がまさにソレ)、すでにこの時点で怪しい匂いがプンプン漂ってくる。そもそもマイチェンで車両型式が変わること自体、かなりのイレギュラーだ。
実車をまじまじと見るのはいつ以来だろう。2代目シルビアは、それくらい日常生活の中で遭遇することがない超絶滅危惧種だったりする。まずは、その佇まいがヤバイ。全長に対してホイールベースが短く、つまりはオーバーハングが長いという、どう見てもスペシャリティカーらしくない、非常にアンバランスなディメンションなのである。
しかも、本来は流麗であるはずのファストバックスタイルなのに、あろうことかボディサイドを走るキャラクターラインが後ろに行くほど下がるという、前代未聞のディテール処理。真横から見た時に何とも言葉では表現しがたい不安定感というか、嫌な胸騒ぎを覚えずにはいられない。
それと、やんわりカマボコ状に盛り上がったボンネットにも注目。これは、元々ロータリーエンジンを載せる予定だったのに、急きょL18を搭載することになり、カムカバーとの干渉を避けるために仕方なく取られた処理。
事実、ボンネットとカムカバーのクリアランスはギリギリで、予定通りロータリーエンジンが搭載されていたなら、こういう事態にはなっていなかったと予想できる。
ホイールはメーカー不明だが、そのデザインからどうやら当時モノっぽい。タイヤは、標準装着されたZ78-13-4Pサイズのバイアス(!)に代えて、185/70-14サイズのラジアル、ブリヂストンSF-270を履く。
室内は、助手席側まで横長のクラスターが覆うダッシュパネルのデザインが特徴。ステアリングコラム右側のノブを引くとスモール→ヘッドライトが点灯する。その下には、取って付けたような電動リモコンミラーのスイッチも確認できる。
LSEタイプXは上から2番目のグレードでパワーウインドウなども標準装備。また、メーターは右から電圧/水温、200km/hフルスケールスピードメーター、タコメーター、油圧/燃料計が並ぶ。
センターコンソールは最上段にAM/FMラジオチューナー、リヤデフォッガー/ハザード/パーキングランプのスイッチ、各種警告灯が並び、その下に灰皿、エアコンスイッチ&吹き出し口を配置。
ミッションはメーカーオプションの5速MTで、パターンは1速が左下にくるローバックタイプとなる。シフト操作ミスを防ぐため、リバースに入れるとブザーが鳴る簡易安全装置も付いてたりする。ちなみに、標準のミッションは4速MTまたは3速ATだ。
ハイバックタイプが主流だった時代にヘッドレスト別体型の前席を採用するあたり、スペシャリティカーとしての意地(?)が見え隠れする。
後席は身長176cmの自分でも普通に乗れるくらいの居住性が確保されるなど実用的だ。また、内装色は淡いグリーンでなかなかお洒落。
エアクリーナーボックス直後にセットされたフラップ式エアフロ。吸気時に開くフラップの角度を電気信号に置き換えて燃料噴射量を決める。ちなみに、インジェクターはマルチポイントだが、シーケンシャル噴射でなく同時噴射だ。
ボンネット裏の注意書きには、何と「48ヵ月ごとに触媒を交換せよ」ということが記されている。触媒が定期交換パーツだったという事実は衝撃的でもある。
L18Eはカタログ値でグロス115psと物足りなさを感じるが、1トンちょうどの車重と絶妙なギヤレシオを持つミッションのおかげで、想像以上にトルクフルな走りを披露。特に3~5速のギヤ比がクロス気味で、高いギヤでも加速に変な間延び感がないのが良い。もちろん100km/h以上で「ブーッ、ブーッ…」と速度警告ブザーが鳴るのは、この時代のクルマのお約束だ。
乗り心地は、若干抜け気味のダンパー効果もあってマイルドの一言。ストラット式のフロントサスは良いとして、スペシャリティカーなのにリヤがまさかのリーフリジッド式(!)というあたりが時代を感じさせてくれる。
変態グルマの大事な要素の一つに挙げられるのが“破綻した外装デザイン”だと思うが、2代目シルビアはまさにソレを地で行く1台だった。取材を終えて走り去る、ボテッとした尻下がりのボディラインに超ナロートレッドの実に情けない後ろ姿を、一生忘れることはないだろう。
■SPECIFICATIONS
車両型式:S11
全長×全幅×全高:4135×1600×1300mm
ホイールベース:2340mm
トレッド(F/R):1280/1265mm
車両重量:1000kg
エンジン型式:L18E
エンジン形式:直4SOHC
ボア×ストローク:φ85.0×78.0mm
排気量:1770cc 圧縮比:8.5:1
最高出力:115ps/6200rpm
最大トルク:15.5kgm/3600rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/リーフリジッド
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイヤサイズ(FR):Z78-13-4P
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
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みんなのコメント
そしてリヤフェンダーのラインが上から被さって来るって、
「新型Z35」の処理が正に一緒じゃん。
ご先祖様がここに居た!(笑)