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【ヒットの法則167】プジョー1007はユニークな存在だが、その走りはまさしく「プジョー」だった

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【ヒットの法則167】プジョー1007はユニークな存在だが、その走りはまさしく「プジョー」だった

2004年に欧州でデビューしたプジョー1007が、日本にやってきたのは2006年2月のこと。プジョーにとって車名の中央に0をふたつ並べた初のモデルとなった。その後、この4桁の車名は「従来のカテゴリーにとらわれない新しいコンセプト」のモデルにつけられることになる。その最初のプジョー1007は、両側に大型電動スライドドアを採用したトールワゴン。世界的にも珍しいユニークなコンパクトカーの日本上陸ファーストインプレッションを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年4月号より)

ユニークだがカッコ優先の異端児的ではない
プジョー1007を「小っちゃくて可愛い」「室内色を自分で変えることができてオシャレ」という理由だけで選んだ人も、とても幸せな数年間を過ごせるはずだ。可愛いクルマを所有するワクワク感。そのトキメキが、最初の瞬間だけでなく、付き合えば付き合うほど、志を知れば知るほど新たに芽生えてくる。飽きることがない。そんなクルマだ。

【くるま問答】トヨタ2000GTのサイドにある四角い部分には、いったい何が入っているのか?

昨年2005年4月に本国で発売が開始されたプジョー1007は、206と比べて全長が約10cmも短いBセグメントモデルだ。ちなみに中央の「00」は、従来のモデルとは一線を画す無限(∞)の挑戦を意味しているという。

日本に導入されたエンジンは73ps/12.0kgmを発生する1.4L SOHCと、1.6L DOHCのガソリン2種。その価格はすこぶる戦略的だ。とくに1.4モデルは、本国での同様グレードの価格が円換算で220万円程度だが、日本ではそれよりも大幅に安い199万円となる。これで7エアバッグ&ユーロNCAP5つ星の安全性も、イモビライザーもバックソナーもCD付オーディオも含まれているのだから、内容を考えるとバーゲンプライスと言えるかもしれない。

リモコン右ボタンを押す。スーッと電動ドアが開く。クルマがドライバーとの「合体」を早く早くと急かしているようで、ガンダム世代としてはトキめいてしまう。

開口部が920mmと広いスライドドアのため、リアシートへのアクセスも容易だ。だが、ここでひとつの「?」が頭に浮かぶ。確かに短い全長にしては、後席も大人が十分普通に座れる。ただ、室内長1800mmというカタログスペックの割には、見た目にも実際座っても、そこに広さ感はないのだ。この「?」が、後ほどプジョー1007の魅力を解くカギになるとは、まだ知る由もない。

キーを挿しエンジンをかける。プジョー車としては初採用となる5速2トロニックだが、これはPSAのシトロエンC2と同じ2ペダルMT。トルコンATに乗り慣れている身としては街乗り時にギクシャク感があるが、これはアクセルペダルの踏み/抜きのタイミングをマスターすることで解決する。その上で「AUTO」モードにせずパドルシフトを積極的に駆使すれば、MT特有のダイレクト感のある走りも手に入れることが可能だ。ただし1.6rエンジンでも低中回転のトルク感にそこまでの余裕はないので、やはりメカに頼らず上まで引っ張って、元気に走らせるドライビングが合う。

昨年2005年、欧州で1007の国際試乗会があった際の自分のメモを見てみると「路面の凹凸を細かく拾う。足がカタイ」と書いてあったのだが、いざ日本で乗ってみると、ギャップのいなしも上手く、乗り心地も締まってはいるが悪くはない。何よりストローク感があり、プジョー車特有の味わいも持つ。

後席では、タイヤが新品だったせいか路面のザラザラ感が多少お尻に伝わってくるものの、車軸上に座っているとは思えないほど上下の揺さぶられは抑えられている。またシート自体も座った姿勢も、長距離移動で疲れないように仕立てられている。

ここで先ほどの「?」に戻る。そう、室内に広さ感がないのは、前席/後席ともそのシートが、このクラスの常識では考えられないほどしっかりと作られているからだ。フレキシブルな荷室スペースを考えるとき、国産車では薄く小さい後席座面にして折り畳みを重視するような手法を取りがちだが、プジョー1007は違う。

まずは大人4人が長距離をいかに疲れずに移動できるか。また1/2人乗り時、全長3.7mの小さいボディサイズでいかにマルチに荷物を積載できるか。おそらく日本とフランスのクルマ文化の違いがこうしたアプローチの違いを生み、結果、同じようなコンセプトの国産車とは違う深い味わいを生んでいるのだと思う。

車名の通り、1007は通常のプジョー・ラインアップとは異なる位置付けとなる。ただしカッコ優先の異端児的なクルマではない。欧州小型車の基本とニーズを押さえつつ可能性を追求した志の高さ。それを理屈っぽくなく、優れたデザインで昇華させる心のゆとり。フランス流の「可愛さ」だけでは、このワクワク感を説明できない。(文:根岸誠/Motor Magazine 2006年4月号より)



プジョー1007 1.6(2006年) 主要諸元
●全長×全幅×全高:3730×1710×1630mm
●ホイールベース: 2315mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:108ps/5800rpm
●最大トルク:147Nm/4000pm
●トランスミッション:5速AMT
●駆動方式:FF
●車両価格:299万円(2006年当時)

[ アルバム : プジョー1007 1.6(2006年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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