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ダニエル・リカルドのF1キャリアは本当におしまいなのか? F1ライター陣が斬る

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ダニエル・リカルドのF1キャリアは本当におしまいなのか? F1ライター陣が斬る

 以前からレッドブル陣営のリザーブドライバーであるリアム・ローソンにRBのF1シートを奪われる可能性が高いとされてきたダニエル・リカルド。シンガポールGPでは、リカルド本人の言動も相まって、これが彼にとってのラストレースになるとF1メディアは信じて疑わなかった。

 仮にリカルドが次戦アメリカGPからローソンに交代されるとするならば、レッドブル陣営の判断は妥当なのか? それとも間違っているのだろうか?

■リカルドは笑顔でF1を去る? ラストレースの可能性認めるもマクラーレン解雇の「2022年よりもずっと幸せな状態」

 motorsport.comのF1ライター陣が見解をお届けする。

F1での時間は終わった - Ben Hunt

 悲しいことに、F1でも個性的なキャラクターで愛されるドライバーのひとりであるリカルドが、ローソンに代わってRBから即刻解雇される時が来たと感じている。

 リカルドのF1キャリアは終わりへ近づいているかもしれないが、レッドブルのセルジオ・ペレスは成績不振でまだ不安定な立場にあり、これでおしまいと明言するほど白黒ハッキリしたモノではない可能性が残っているため、言葉は慎重に選びたい。

 F1取材1年目だった2012年、メルボルンからクアラルンプールへのフライトで、私の席から数席後ろのエコノミークラスにリカルドが座っていたことを思い出す。リカルドは当時も今も変わらず、素晴らしい人格者だった。とても楽しく、常に笑顔だ。

 しかしレッドブルを辞めて2019年シーズンにルノーへ移籍すると決めた瞬間から、リカルドのキャリアは悪い方向へ転がったように思えてならない。

 まったく不可解な決断だった。ルノーでは痛い目に遭い、マクラーレンではさらに調子を落とした。2021年にはイタリアGPで優勝したものの、レッドブル時代のような調子を取り戻し、本来のポテンシャルを発揮できるようには見えなかった。

 リカルドの笑顔は消え去り、F1で真剣に戦うために必要な情熱や覚悟もまた消え去った。

 オスカー・ピアストリを迎え入れる代わりにマクラーレンから解雇された後、リカルドは自身の将来を見極めるためにしばらく時間が必要だという理由でF1を去った。

 成績不振が続いたニック・デ・フリーズと入れ替わる形でトロロッソからリカルドはF1に復帰したが、正直なところ、F1に背を向けた男が偉大なカムバックを果たすとは思えなかった。

 マクラーレンを去った2022年、自身の将来を見極めながらアメリカGPで馬に乗ってパドックに乗り込んできたリカルドの姿を覚えている。その時には、リカルドの心がF1から完全に離れていたのだと思う。

 それはリカルドの決断だった。しかし今、決断を下すのはリカルドではない。

ローソン起用は理に適っている - Ewan Gale

 仮にリカルドがF1から去ることになれば、このスポーツは個性という点で寂しくなるだろう。リカルドの溌剌とした個性は、10年以上もパドックを明るく照らしてきた。

 しかしF1は結果のビジネスであり、2021年イタリアGPでマクラーレンと共に優勝した以外は、2019年にルノーへ移籍して以来、リカルドのベストな姿を見ることができなかったと言っても過言ではない。

 今やF1でトップに躍り出たマクラーレンでのリカルドの苦闘は、レッドブルにサードドライバーとして戻り、アルファタウリ/RBからF1復帰を果たしてからも克服されることはなかった。

 今季はチームメイトの角田裕毅がリカルドを上回るパフォーマンスを見せることが多く、リカルドは十分な改善ができずに現在のポジションに留まっている。

 交代人事が行なわれるのはアメリカGPだと噂されているが、シンガポールGP決勝日のリカルドの態度やインタビューでの受け答えがどうであれ、近い将来ローソンに交代させられる可能性は十分にある。

 レッドブル陣営にとっては理に適った人事だ。レッドブルが自由に選択できるF1ドライバー候補がこれまでで最も少ないというのは間違いなく、セルジオ・ペレスが苦戦を強いられているにも関わらず、どのドライバーも親チームから彼を引きずり下ろすことができないという事実が、それを物語っている。

 ローソンが来季、F1グリッドに並ぶことは確実で、リカルドが道を譲る可能性が最も高い。なら、ローソンにマシンに乗る時間を与えてみてはどうだろうか?

 現在のF1では、シーズン前の公式テストが3日のみ。フィルミングデーやピレリのタイヤテストも制限を受けるという状況では、シーズン終盤にリカルドに代わってドライブするというのは、ローソンがチームに馴染む上で有益でしかない。

 RBはリカルドが欠場した昨シーズンの5戦で代役を務めたローソンの実力を見たが、親チームでペレスの後を継ぎフェルスタッペンとコンビを組む可能性が高いローソンにとっては、さらなる経験を積むことはプラスに働くはずだ。

 今のマシンの状態を考えれば、リカルドとローソンの交代はポイント獲得を念頭に置いたモノではない。レッドブル陣営とその将来にとって必要なことであり、その安定性が既にほぼ失われている今だからこそ必要なことなのだ。

シーズン途中の交代には値しない - Sam Hall

 F1というスポーツ、そしてF1というビジネスには情緒が入り込む余地はないとよく言われる。リカルドをシーズン途中で解雇するという決定は、紛れもなくそれを証明している。

 ファンからの人気は非常に高く、パドック内でも最も好感を集める個性を持つドライバーのひとりであるリカルドは、尊敬を持って見送られるに相応しいだけのことを成し遂げてきた。

 確かにリカルドは今季の成績で2025年のシートを射止めることができなかったが、シーズン途中での解雇という不名誉を受けるほど悲惨な成績だったのだろうか? そうではない。

 獲得ポイントでは角田に10点届かないものの、カナダGP以降のリカルドの調子はチームメイトを上回る傾向にあり、結果主義という業界の厳しさを責めることはできない。

 将来を見据えて、陣営内の若い才能を評価するという理由には理屈が通ることは認めなければならない。しかし他のどのチームも行なっている通り、旧車テスト(TPC)やシミュレータを使用することで上手くいくのではないだろうか?

 言葉にするのは辛いことだが、リカルドにとって今季がF1ラストシーズンであるという意見には同意する。しかしメディアから送られるファンファーレだけで、リカルドをF1グリッドから追い出す理由はない。

 もしシンガポールGPがリカルドのラストレースであったならば、RBとレッドブルはレッドカーペットを敷き、その功績を讃えて、大々的にリカルドを送り出すべきだった。

 それ以上に、ファンへきちんと別れを告げる機会をリカルドに与えることができたはずだ。そうすれば、F1キャリアが正式に終わりを迎えるのをただ待つためにSNSをスクロールし続ける必要はなくなる。

 劣悪なマシンと、かつてのフェラーリのピットウォールからそのまま持ってきたかのような戦略把握能力では、今年のRBで達成できることには限界がある。ただハースがコンストラクターズランキング6番手争いで3ポイント差に迫っているだけに、この変更は大きな代償を伴うことになりそうだ。

レッドブルのギャンブルは報われず損切りへ – Haydn Cobb

 リカルドは昨年、かつての姿を取り戻すため、低迷していたニック・デ・フリーズの後任として旧アルファタウリに送り込まれた。ギャンブルではあったが、レッドブル陣営はそれに賭けた。

 そして2024年もリカルドを起用し続けたのは、調子を取り戻してペレスが結果を出すことができなかった場合にレッドブルで代役となるためだった。

 しかし今シーズン開幕8戦でリカルドが獲得したポイントはわずか5点。マイアミGPスプリントでの4位は称賛に値するが、基本的には角田に完敗していた。その壁は分厚かった。

 レッドブルがサマーブレイク中にペレス続投を決め、代役を用意しないと決めた時、リカルド再起用のプロジェクトが頓挫したということは否定できない。

 仮にレッドブルが冷酷なアプローチでRB/アルファタウリ/トロロッソのドライバーたちに接しているのであれば、リカルドとしてはサマーブレイク明けもチームガレージの上に自身の名前が残っているというのはラッキーなことだったはずだ。

 それから4戦、リカルドはノーポイントとかつての姿は見られず、レッドブル首脳陣は解雇へ踏み切ることを心に決めたようだ。

 またそこに拍車をかけたのが、ローソンとの契約におけるタイムリミット。陣営内にとどめておくには来季のF1シートを与える必要があり、育成プログラムの中で最もF1フル参戦に相応しい人材を失うリスクがあったのだ。つまりレッドブル陣営がリカルドをRBから降ろし、ローソンに全てを託すという選択肢は正しい決断なのだ。

 とはいえ、リカルドにはシンガポールGPでの別れよりも、より相応しいお見送りの仕方があったはずだ。

 私の同僚たちが雄弁に語ってくれたように、リカルドのいないF1は貧しい場所となり、パドックは笑顔いっぱいのジョーカーを失うことになる。スターを失うF1ドキュメンタリー『Drive to Survive』の制作チームにもご愁傷さまと言いたい。まずはハースF1からギュンター・シュタイナーがいなくなり、今回はリカルドもいなくなる。

 関係者全員が寂しい思いをするだろうが、リカルドの態度や言葉から、リカルド自身とレッドブルの双方が損切りのタイミングを心得ていることがうかがえる。

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