「EV」はBEVとPHEVとFCEVを総称した言葉だったはずが……
2015年にフォルクスワーゲンのディーゼル不正事件が発覚した後に話題になりはじめ、その後欧州では多くの国やメーカーが表明するようになったEVシフト。7月には欧州委員会が、2035年に新車のゼロエミッションを義務付けるという提案を行い、再び話題になった。
新車が消えゆくのは仕方ないが……すでに所有している「ガソリン車」にすら乗れなくなる可能性!
僕も気になって原文を読んでみた。すると驚きの記述があった。EVという言葉の位置づけだ。EVと言えば多くの人は、電気自動車のことだと思うだろう。しかし欧州委員会の説明では、EVはBEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池自動車)を総称した言葉としているのだ。
当然ながら日本が得意とするHEV(ハイブリッド車)はここには含まれない。欧州のEVシフトは以前も書いたように、自分たちの自動車産業を世界で優位に導くための戦略的要素が大きいからだ。
でもそれは以前からわかっていたこと。問題はEVシフトという強烈なメッセージを出しつつ、裏ではPHEVやFCEVもOKという逃げ道を密かに作っていたことだ。
なので皆さんもこれからは、欧州がEVという言葉を使ったら、それは電気自動車のことではないのかもしれないと、疑ってかかったほうがいい。
ところがその欧州委員会が発表した2035年のゼロエミッションは、HEVはもちろん、PHEVも禁止し、BEVとFCEVのみにするとある。いろいろ言い訳を重ねた末に、辻褄が合わなくなってしまった人みたいだが、いずれにしてもエンジンを使ったクルマは、2035年以降は欧州では売れなくなる。
欧州への依存度が低い日本メーカーへの影響は限定的
ではこれが日本の自動車メーカーに大きな影響を及ぼすかと言うと、そうとは思わない。日本の自動車メーカーで欧州比率が高いのはマツダぐらいで、他は米国や中国などが国外のメインマーケットだからだ。
でも米中もEVシフトなんでしょ? と言う人、あなたはマスコミの煽り記事に騙されている。
米国では今月、バイデン大統領が電動化戦略を発表した。2030年に販売される新車の半数をBEV、PHEV、FCEVなどのゼロエミッション車にするというものだ。つまり、残り半分はHEVはおろか、エンジン車でもいいことになる。
今回の発表は、これまでの大統領の政策同様、かなり中国を意識したもので、発言の中に何度も中国という言葉が出てくる。
では中国の電動化戦略はどうかというと、2035年にBEV、PHEV、FCEVが該当する新エネルギー車を新車販売の50%とし、残りはHEVなどの低燃費車とするという内容。エンジン車は入っていないがHEVはOKだ。
しかもコロナ禍前、つまり2019年の世界の自動車販売台数を地域別に見ると、トップの中国が3割弱、アメリカが約2割で、ヨーロッパは全体でもアメリカと同じぐらい。今の欧州は良くも悪くも、声の大きい少数派という感じがする。
おまけにこれは前に書いたように、日本の多くの自動車メーカーはこれ以上に欧州への依存度は低い。たとえばトヨタのヨーロッパ比率は約1割だ。たとえゼロエミッションになっても、壊滅的な影響は受けないと多くの人が思うはず。
ちなみに僕自身も、ヨーロッパは好きだけれど住むつもりはないので、まったく心配はしていない。
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みんなのコメント
それどころか、HEV、BEV、PHEV、FCEV、水素エンジン車と幅広く開発していますので
最後に笑うのはトヨタを筆頭に日本車勢でしょうね。