2021年11月にトヨタライズ、ダイハツロッキーにハイブリッドモデルが追加された。シリーズハイブリッドという日産ノートと同様なシステムが採用されたことに加え、その魅力的な価格に注目が集まっている。
そしてシリーズハイブリッドは、将来的に電気自動車への架け橋となるとみられるシステムだ。今後ラインナップを拡大し、採用車種も増えるはずだ。
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一方トヨタ系の販売店では、売れ筋のハイブリッドにトヨタ開発のTHSとダイハツ開発のe-SMARTの2種類が並ぶことになる。販売店はこの2種類のハイブリッドをどのように売り分けるのだろうか?
文/小林敦志、写真/ベストカー編集部、Daihatsu、Nissan、Toyota
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■ライズ/ロッキーにシリーズハイブリッドシステム“e-SMART”登場
2021年11月の一部改良で1.2Lエンジンを発電機として搭載するシリーズハイブリッドシステム、“e-SMART”搭載車が追加設定されたトヨタライズ/ダイハツロッキー
2021年11月1日に、トヨタライズ及びダイハツロッキーが一部改良を行った。一部改良といえば内外装のデザインを小改良し、装備内容を変更する程度が一般的。だが今回は、FFについては搭載エンジンを1L直3ターボからダイハツ新開発となる1.2L直3NAエンジンへ換装している。
これだけでも「一部改良にしては規模が大きい」との声が販売現場からは聞かれたが、さらに1.2Lエンジンを発電機として搭載するシリーズハイブリッドシステム、“e-SMART”搭載車が追加設定された。
ライズとロッキーは2019年11月5日にデビューしている。とくにライズはデビュー直後から大ヒットとなり、2020暦年(1月~12月)締め年間新車販売台数では12万6038台を販売し、登録車のみの通称名(車名)別販売ランキングでは、ヤリスに次いで2位となっている。
月販目標台数4100台に対し月販平均台数は約1万500台なので、目標に対し約2.5倍をコンスタントに販売したことになる。ロッキーについても、2020暦年締め年間新車販売台売では3万1153台となり、月販目標台数2000台に対し、約1.3倍をコンスタントに販売し、ダイハツ登録車全体の販売台数を一気に押し上げた。
おさらいもかねて、ライズとロッキーの大ヒットを分析すると、5ナンバーサイズのクロスオーバーSUVといえば、スズキ クロスビーぐらいしかいなく、“無風地帯”だったことが大きく影響しているだろう。
手ごろなサイズに手ごろな価格が魅力的で、最上級グレードにオプションテンコ盛りでも、300万円で買えるのでよく売れたとのこと。
ハッチバックスタイルのモデルばかりだったコンパクトカークラスには、新鮮に映ったのかもしれない。とにかくデビュー直後からよく売れたのだが、ひとつだけ購入決定にブレーキをかけたのが、ハイブリッドユニット搭載車がなかったことであった。
購入検討する人にとってみれば、トヨタブランド車といえばHEV(ハイブリッド車)がラインナップされていて“当たり前”との認識が高く、「HEVがないんだね、それじゃ」と購入をためらう人も少なくなかったと聞く。
お客さんにはダイハツからのOEM(相手先ブランド供給)車という意識が薄く、「ダイハツからのOEMなので」とすると、ある意味“ヤブヘビ(「えっダイハツ製なんだ」とお客さんが思ってしまう)”な部分もあるので、積極的にセールスマンも説明しにくいとの話も聞いたことがある。
そんな中、2020年8月にコンパクトクロスオーバーSUVとなる、“ヤリスクロス”がデビューする。こちらはトヨタが開発及び製造しているモデルなので、THS(トヨタ ハイブリッド システム)搭載車がラインナップされており、ライズではHEVがないので購入をためらっていた人の多くも購入したようだ。
■エンジンの変更でライズが売りにくくなる?
トヨタ ヤリスクロス。今まではライズと棲み分けができていたが、ライズにe-SMARTがラインナップされて事情が複雑になってきた
ヤリスクロス登場後は良い意味で“ガソリン車はライズ、HEVはヤリスクロス”と棲み分けができたようである。というのも、ヤリスクロスのガソリン車が1.5Lなのに対し、ライズは1Lターボエンジンを搭載していたので、自動車税がライズのほうが安かったことがあったのだ。
しかし、今回の一部改良でFFが1.2L自然吸気となった(4WDは1Lターボのまま)。これが販売現場のセールスマンには悩ましいとのこと。
「ライズのFFに搭載されていたのは1Lターボとなり、単に自動車税の問題だけでなく、ターボ独特の加速など走行フィールが好きで購入するお客様も目立ちました。
新開発エンジン搭載車はまだ試乗しておりませんが、スペックを見る限りは当然かなり1Lターボとはフィーリングが異なるようです。自動車税もアップしますので、現状では『売りにくくなったなあ』という印象が強いですね」と話してくれた。
それでは話題のe-SMARTについて聞いてみると、「ご購入されたお客様への納車を優先しており、展示や試乗車が届くのは2022年1月以降になる予定です。私ども実際触ったり、運転したりしておりませんし、展示・試乗車もないので、購入を検討されているお客様のご反応はまだ積極的にお聞きできておりません。
商談次第ではヤリス クロスのHEVと迷われるケースも出てくるでしょうが、そこはシステムの違いをご説明し、お客様に選んでいただくことになるでしょうね。どちらかをご説明せずに、一方を推してしまえば納車後に『なんで紹介してくれなかったんだ』とクレームにもなりかねないですからね」と説明してくれた。
また、「売る側だけでなく、買う側も『ルーミーに載ったらねえ(e-SMARTが)』と考える人も多いようです」とも語ってくれた。ルーミーもダイハツからのOEMなので、現状ではHEVの設定はない。
しかし、ライズとロッキーはDNGAというダイハツの新世代プラットフォームを採用しているが、ルーミー(トール)は旧世代プラットフォームとなっているので、e-SMART搭載はフルモデルチェンジを待ってからとなりそうである。
ルーミー(トール)は2016年にデビューしているので、フルモデルチェンジはそう遠くないうちに行われることになるだろう。
ライバルのスズキソリオがマイルドハイブリッドを搭載しているので、e-SMARTはルーミー(トール)には間違いなく搭載されることになるだろうし、1.2L NAと合わせてルーミーにこそ必要だと前出のセールスマンは語ってくれた。
■シリーズハイブリッドの先輩 日産“e-POWER”
シリーズハイブリッドの先駆であるe-POWERを搭載する日産 ノート
シリーズハイブリッドといえば、日産の“e-POWER”システムが国内では先行して広く展開され知名度も高くなってきている。
日本だけでなくタイにもe-POWERシステムの生産拠点を設け、さらに2021年10月には中国における日産の合弁会社である東風日産汽車が日産シルフィにe-POWERシステム搭載車を追加発表している。
世界的にはBEV(バッテリー電気自動車)が注目され、2035年までにはBEVなどゼロエミッション車以外が新車として販売できなくなる地域が出てくる模様。
しかし、それまでにはまだ14年ほどあるのでBEVに限りなく近いともいえるシリーズハイブリッドの世界的ニーズが期待できると判断しているのかもしれない。
世界一BEVを含む新エネルギー車(ほかにPHEV/プラグインハイブリッド車やFCEV/燃料電池車)の普及が高いとされる中国でも、新車販売全体における新エネルギー車の販売比率は15%弱ほどで推移してきた(最近は急増傾向にあるようだが)。
2021年11月末に広東省にある広州市で開催された広州モーターショー開催のタイミングで中国国内に登場した新型市販車(中華ブランド含む)のなかには、意外なほど内燃機関車のみを搭載するモデルの多さが目立った。
ただ、中国での排出ガス規制は欧州の“ユーロ基準”をトレースしてきたとされてきたのだが、最も厳しい“国6基準”について中国政府は、“独自基準を設けたので、ユーロ6より厳しい”としているとのこと。今回デビューした新型車も当然国6基準をクリアした内燃機関を搭載している。
世界でも特殊な政治体制であり、そのため政府の決定が速やかに実行される中国でも、2025年までに新エネルギー車の販売比率を20%前後までに引き上げるという少々控え目にも見える目標を掲げている。その中国でe-POWER搭載車をこのタイミングで市場投入するのはかなり意味深なトピックのようにも見える。
そのe-POWERを初めて搭載した先代ノートがデビューしたのが2016年11月。登場した当時、筆者の周囲のオジさん世代のクルマ好きから、「e-POWERってどうなの?」という質問をよく受けた。クルマ好きから見ればTHSとは異なる仕組みのハイブリッドシステムということで興味津々となったようである。
1.2Lエンジンを発電機として搭載しているシリーズハイブリッドという点では、ダイハツ(トヨタ)のe-SMARTと大きな部分では同じといっていいだろう。しかし、筆者の周囲に限っていえば、e-POWERには興味津々なのだが、結局ノートe-POWERを購入した人はいなかった。
■HV先駆者トヨタの偉大な功績
量産HEVの元祖である初代トヨタ プリウス
日本、いや世界での量産HEV車の歴史のはじまりといえば、1997年にデビューした初代トヨタプリウスとなるだろう。以来24年、“ファーストペンギン”として量産ハイブリッド車を世界に先駆けて発売し、その後ラインナップを拡大してきたトヨタのHEVへの信頼は、日本国内だけでなく世界的にも高い。
トヨタ以外でも日本をメインとした世界のメーカーの多くがHEVをラインナップしているが、世界第二位の自動車市場となるアメリカでは、トヨタとその他のメーカーのHEV車では明らかに売れ行きに差があるとのこと。
アメリカでレクサス車にHEVが充実してきたころ、レクサスディーラーにおいて「HEVはいかがですか?」とセールスマンが勧めると、「HEVはトヨタに限る」みたいな発言をお客さんにされた。そこでレクサスはトヨタの上級ブランドで、HEVはトヨタが製造していると説明して納得してもらったという話を聞いた。
つまり、トヨタ以外のメーカーが魅力的なハイブリッドシステムを搭載したモデルを投入してきても、「トヨタはどう出てくるのかな」とあくまでトヨタをスタンダードと位置付けてHEV購入の検討をするひとがいるのは否定できないだろう。
それだけHEV普及におけるトヨタの功績が大きいことも否定できない事実といえる。
■日本ではまだまだHEVが強い
日産 リーフ。e-POWERはBEVであるリーフのメカニズムをベースとしている
新車販売の現場でも、THSに一目置いている発言が聞かれる。ある日産ディーラーでは「e-POWERは、リーフのメカニズムをベースにしているので、その点では興味を持っていただけるお客様は多く、販売につながっております。
ただ実用性能ではTHSのほうが圧倒的に優れていると思います」とセールスマンは話してくれた。
残念ながら、日本はBEVのラインナップだけでなく、充電インフラ整備など、とにかく車両電動化(HEV以外)については、世界の動きから出遅れているのは間違いない。
販売現場でも「政府が充電インフラなどの環境整備を進めてもらわないと、“充電渋滞”などネガティブイメージが先行しているなかでは、『BEVを売れ』と言われても積極的にお客様には売り込めない」という声がセールスマンからは多く聞かれる。
最近でこそあまり言われなくなったが、初代プリウスがデビューしてからしばらくの間は、“HEV=バッテリー電気自動車”というイメージを持つ人が多かった。“モーターと電池を搭載したクルマ”と聞いて、BEVと勘違いする人が続出したのだ。
ようやく、HEVとはどんなものなのかが周知されるようになってきた中でe-POWERやe-SMARTが登場してきている。仕方がないのかもしれないが、メーカーは“ライズ(ロッキー)ハイブリッド”と紹介している。
ライズでe-SMARTを前面に押し出せば、ライズ自体をダイハツ製とであると販売現場で強調しなければならないので、意図的にボカしているのかもしれない。
だが、もう少し“THSよりBEVに近い”といったアプローチをしてもいいのではないかと考える。自動車ユーザーのゼロエミッション車への関心が思いのほか高いので、なんかもったいないような気もしてしまう。
■HEVとBEVのこの先は
バス型燃料電池車トヨタ SORA
e-SMARTはシリーズハイブリッドシステムだが、その先にはBEVシステムありきで開発されている。2022年にはダイハツの軽自動車にもe-SMART搭載車がラインナップされるとの情報もある。
そして、その先には軽規格も含みBEVの登場が待っている。時を同じくして日産・三菱では軽自動車規格のBEVを世に送り出そうとしているようである。
しかし、日産の販売現場で聞くと「長い間売ってきているリーフでも購入決断までは敷居が高いのに、軽自動車規格のBEVはさらに購入へのハードルを高めそうだ」と不安視する声も聞かれた。
そして、そのなかでダイハツからはe-SMARTを搭載した軽自動車がデビューするとの話もある。燃料費などの実用性能は別としても、“手を出しやすい”というイメージではどちらかいえば、やはりe-SMART搭載車となるだろう。
e-POWERはリーフの技術を応用し、リーフの後にデビューした。一方でe-SMARTは、今後それをベースとしたBEVが登場してくる予定。これは単に順番の違いというだけではないようにも見える。ちなみにトヨタは2022年にトヨタブランドの量販BEVをデビュー予定としている(e-SMARTの流れとは別)。
車両電動化だけでなく、国内販売で圧倒的なシェアを持つトヨタが動き出さないと、日本の新車販売ではなかなか物事が進まないとされている。
そのトヨタが車両電動化(というよりゼロエミッション車の普及?)についてグループ全体でも消費者に見える取り組みを見せ始めてきたとe-SMARTの登場で強く感じている。
グループ全体で見れば、FCEV(MIRAIやSORA)、そして水素エンジン車の開発にも積極的である。BEVのほかにも選択肢を用意ようとしているトヨタが、今後ゼロエミッション車へどのように消費者を導いていくのか、e-SMARTを見ても、実に興味深いところである。
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みんなのコメント
思いの外まだまだいるのですね。
お題に対する答えが明確でないよね?
何なんだこの記事は!?
文字数稼ぎも甚だしい!