ASTON MARTIN VANTAGE GT8
アストンマーティン ヴァンテージ GT8
アストンマーティンのレース直系にして究極のヴァンテージ「GT8」。 その性能をニュルで試す! 【Playback GENROQ 2016】
ニュル24時間レースの直前にGT8を走らせる
FIA世界耐久選手権LM-GTEクラスに参戦するV8ヴァンテージ。そのレーシングカーをモチーフとするのが新たに登場したGT8である。アストンワークスドライバーとして参戦経験を持つ桂 伸一が24時間レース直前のニュルブルクリンクでGT8を走らせた。
「アストンマーティンはレースで鍛えあげた強さをDNAレベルで持っている」
ニュルブルクリンクに隣接するアストンのテストセンターからロードカーのGT8を受け取り、向かうは北コース! そう、この数時間後に24時間レースがスタートするニュルのオールドコース、ノルトシュライフェをレース前にアストンマーティンのパレードで1周(約20km)するのだ。
その優美なスタイリングとは裏腹に、アストンマーティンはレースで鍛えあげた強さをDNAレベルで持っている。今年もニュルブルクリンク24時間に出場したアストンマーティン。その最大の注目はV8ヴァンテージの最高峰「ヴァンテージ GT8」での参戦である。
2008年に初めて迎えられて以来、昨年まで5度に渡りアストン・ワークスカードライバーとして招かれていた筆者だが、今年のシートに空きはなかった。代わりにGT8の国際試乗会とパレードのドライバー要請となった。今回が実戦デビューのGT8である。パレードとはいえ光栄の至りである。
パレード走行でも、ここぞというコーナーではタイミングを見計らって、レーシングスピードで突入した。そこで強いGフォースを感じ、GT8がいかに“ソレ用”に開発されたか理解できた。もちろんソレとはサーキットカーとしての実力を備えたロードカーという意味だ。
「ヴァンテージとして過去最軽量、標準車からは実に100kgを削減」
わずか150台のためにデザインされたスタイリングは、V8ヴァンテージも遂にここまできたか、と感慨深くなるほどに過激。見た目はWEC(世界耐久選手権)用のヴァンテージGT3のスタイリングに共通した、レーシングを強く意識させるダウンフォース仕様である。いわば“GT3クラス”だが、ヴァンテージGT8が究極の1台だと言えるのは間違いない。
ポルシェがGT3の名称使用権を抑えたため、本来ならGT3を名乗りたいスポーツカーの最高峰たちは、同門、たとえばアウディはNGでもベントレーはOKという話はいくつかある・・・というのは余談だ。
GT8は、ボディの基礎から空力パーツも含めて、素材にカーボンファイバーを多用する。故にヴァンテージとして過去最軽量、標準車からは実に100kgを削り取った。
「4.7リッターV8としては過去最強の446psを誇るGT8」
エンジンも自然吸気4.7リッターV8としては過去最強の446psを誇る。用意されるトランスミッションは、2ペダル7速自動MTのスピードシフトIIと、今や選ぶことが困難な3ペダル6速MTも選択可能というのが嬉しい。
ところで“速さ”とひと口に言っても何を求めるのかで、実は様々に異なる。純粋に最高速を狙うのであれば、軽く300km/hオーバーに達するV12が圧倒的に優れているし、サウンドも含めて魅力の宝庫である。一方コーナリングに関しては、元がV8で設計されたヴァンテージは、スポーツカーにとって最も重要な軽い身のこなし、フットワークに優れている。つまりは前後の重量バランスに優れたV8との相性がとてもいいということだ。これがGT8の個性なのである。
ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2が発生するグリップ力を感じさせる重い反力をステアリングから感じながら、ニュル24時間のレースコースを、もう1台のGT8と並走しながらパレードランと撮影、さらにインプレと忙しくこなす。
場所によっては2台並ぶとコース幅ギリギリになるところもある。進行方向左側を走行する筆者のGT8と、その右側で並走する本誌でもお馴染みのドイツ・シュポルトアウト誌の元編集長、ホルスト・フォン・ザウルマ氏。氏とは2009年の4.3リッターV8 GT4でチームを組んだこともあった。雑誌屋だけに並走撮影もお手の物。あうんの呼吸で車両の位置や間隔を測れることが嬉しい。コースの左側に沿っての走行など、本来の走行ラインでは有り得ない。そこを先導するカメラカーのペースは異様に速く、この速度で次を曲がれるのか!? という場面でもGT8は何事もなくスルッと通過する。この自在なハンドリングだけでも実力を垣間見たような気になる。
「驚くべきダウンフォース! 最小限の操作で的確に向きを変えていく」
コクピットのシート調整は重量の観点で言えば機械式が好ましい。もちろん一体型フルバケットシートではバックレストの角度調整はできないが、レーシングなドライビングポジションをとるとシート全体を寝かせたくなる。その場合は座面の前端が上下でき、シート全体の角度が変えられる電動調整機能のほうが、好みの姿勢が作りやすいことは間違いないのだが。
たしかに室内の雰囲気はロードカーだが、ミラー越しに臨む、隣のGT8はレースカーの出で立ちである。そのV8が奏でるレーシングサウンドは、チタン製エキゾーストパイプを通すためか、音質が“硬く”“明確”だ。アクセルの踏み込み加減で3400rpmからでも内部のフラップは開閉するが、4000rpm以上は確実に開いたオープンエキゾーストサウンドを楽しめる。しかし郊外はOKでも、早朝深夜の住宅地では、はばかられる音量だ。ことサウンドに関しては、各国のジャーナリストから指摘を受けたようで、質問するより先に「量産ではもっと抑える」とコメントしていた。
撮影のために離れた前車との間合いを詰めるべく全開にすれば、やはりここがGT8のホームであると気づかされる。路面に張り付いた感覚の安定感はもとより、ハンドリングが実に気持ち良く決まる。中速コーナーではダウンフォースの効果もあって、ステア操作とともに路面に吸い付いたように舵角の方に向きを変えていく。したがってステア操作は最小限の操作量で済む、というのがサスペンションとタイヤのグリップ力にエアロダイナミクスが加えられたクルマの特性である。ダウンフォースを受けるが故、サスペンションは基本的に硬めだ。ただしサーキットをあとにしてニュル近郊の村や住宅街の低速走行、石畳の通過でも硬さからの跳ねや飛びはなかった。路面とタイヤとサスペンションは微少のストローク領域でも、動きを減衰させ、路面からの突き上げ等、衝撃を伝えて来ない。
サーキットはもちろんだが、郊外の中高速コーナーやアップダウンが連続するカントリーロードも路面に吸い付いて走行するかのGT8。残念なのは日本ではそうしたシチュエーションにならないこと。つまりはサーキット専用車と考えがちだ。しかし、イギリスもそうだがドイツでもこうした個性を特別視せず、さらりと無造作に普段使いする。すると当然ながらそう扱うシーンにピタリとはまる。ヴァンテージ GT8を乗りこなして颯爽と街乗りしてほしい。
REPORT/桂 伸一(Shinichi KATSURA)
PHOTO/ASTON MARTIN LAGONDA LIMITED
【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン ヴァンテージ GT8
ボディサイズ:全長4540 全幅1922 全高1258mm
ホイールベース:2601mm
車両重量:1510kg
エンジン:V型8気筒DOHC32バルブ
総排気量:4735cc
圧縮比:11.3
最高出力:328kW(446ps)/7300rpm
最大トルク:490Nm(49.9kgm)/5000rpm
トランスミッション:7速セミAT(6速MT)
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
最高速度:約304km/h(予測値)
※公表値のみを掲載。
※GENROQ 2016年 8月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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