Mercedes-Benz EQC 400 4MATIC
メルセデス・ベンツ EQC 400 4マチック
池沢早人師に訊くスーパーカーブームのウラ側「第4回:ボクも早瀬佐近も“ポルシェの魔力”にはまった」
メルセデスの最新バッテリーEVは革新よりも保守
アウディはe-tronを発表し、ジャガーはすでにI-PACEの日本発売に漕ぎ着けている。BMWのi3やテスラは、北欧や北米の西海岸あたりですっかり街の風景に溶け込んでいる。BEV(バッテリー・エレクトリック・ヴィークル)が続々と市場へ投入されるようになった昨今、個人的にステアリングを握る機会の訪れを今や遅しと待ち受けていたモデルがふたつある。ひとつはポルシェ・タイカン、もうひとつがメルセデス・ベンツのEQCである。
“あのポルシェ”、“あのメルセデス”が満を持して送り込んでくるBEVなのだから、それはもう自信たっぷりのたいそうなプロダクトに仕上がっているに違いないと期待していたのだけれど、今回ノルウェーのオスロ近郊での試乗が叶ったEQCを精査していくにつれ、こちらの勝手な期待とは異なる中身になっていることが判った。端的に言えば、メルセデスはEQCの開発にあたり、とりあえずは“革新”よりも“保守”を選んだのである。
GLCとプラットフォームを共用
BEVを仕立てるに当たっては、プラットフォームから構築するか、既存のそれを流用するかのふたつに分けられる。タイカンはすでにまったく新しいプラットフォームを採用する(以後はVWグループ内で共用する可能性あり)と発表しているので、メルセデスもてっきりEQC専用のものを出してくると思っていた。ところが、EQCのスペックや試乗会場に置いてあったベアシャシーを考察するに、基本的にはGLCのプラットフォームを流用していることが判明した。
EQCのホイールベースは欧州仕様で2873mm。これは同じく欧州仕様のGLCのホイールベースと同値である。フロントが4リンク、リアがマルチリンクのサスペンション形式もそのまま。しかしダンパーとばねのセットはさすがに改められていて、ダンパーは前後ともすべてのグレードで電子制御“なし”で専用設計のコンベンショナルなタイプ。ばねはリアのみ空気ばねを使用する。エンジニアによれば、電子制御式ダンパーを使わなかったのは、2.4トン以上もある車重のおかげで狙い通りの乗り心地が達成できたから。リアだけが空気ばねなのは、乗り心地というよりもむしろ加減速時や操舵時の姿勢変化をコントロールするためとのことだった。
最高速度は180km/h、航続距離は445km以上に達する
EQCの正式名称は「メルセデス・ベンツEQC400 4MATIC」なので、4000cc相当のパワーを持つ4輪駆動であることを意味している。前後にひとつずつ配置されたモーターが、それぞれ前輪/後輪を駆動する4WD機構は、アウディe-tronやジャガーI-PACEなどと同じロジックである。モーターはリダクションギヤ/ディファレンシャル/冷却システムなどと一緒にコンパクトなケースに収まっている。これが頑強なサブフレームにラバーマウントを介してしっかり固定される。メルセデスの説明によれば、前後トルク配分は一定的ではなく、状況や効率に応じて随時変化するという。ざっくり言うと、低負荷から中負荷くらいの領域では主にフロントモーターが働き、よりダイナミックな運転をドライバーが要求するとリアモーターが積極的に加勢する、そんなイメージだそうだ。
ふたつのモーターを駆動するための電力はリチウムイオン電池から供給される。48個のセルで1パックのものがふたつと、72個のセルが1パックのものが4つ、計384個のセルからなる。総重量はバッテリーのみで652kg。これをフロア下に敷き詰めている。電力量は80kWh、最大で405Vの電圧を有するという。ダイムラーと資本関係にあるDeutsche ACCUMOTIVE in Kamenz/Saxonyがドイツ国内で製造、保証期間は8年/16万kmだそうだ。充電時間はACの普通充電で約11時間、DCの急速充電で約40分。日本仕様はCHAdeMO対応なので、高速道路などの急速充電器が使用できる。メーカー公表値によれば、最高速は180km/h、0-100km/hは5.1秒。航続距離は使用状況にもよるが、445kmから471km(NEDC)とされている。
パッケージングはGLCに近い
スタイリングは背の低いGLCといった風情である。ボディスペックをGLCと比較してみるとEQCのほうが全長で2mm長く、全幅で6mm狭く、全高で16mm低い(いずれも欧州仕様)。全高が低く、床下には電池が収納されているから、GLCよりも室内は天地方向に狭いと想像したが、運転席に座った印象は圧迫感のないものだった。
目の前に広がる景色は最近のメルセデスと共通だが、センターコンソール上のエアコンの吹き出し口が運転席側を向いていて、ちょっとだけドライバーオリエンテッドな演出だと思った。そのエアコンの吹き出し口には赤銅色のアクセントが用いられている。これはモーターのコイルの銅線をイメージしているとのこと。パワートレインを始動させる前の段階で唯一、このクルマがBEVであることを知る手がかりである。
スタートボタンを押すと目の前にメーターグラフィックが浮かび上がる。当然のことながらアイドリング音も振動も皆無で、おそらくさまざまな電子式システムがキャリブレーションをとっている音がわずかに耳に届く。メーターは内燃機のメルセデスと同様に速度計を左側に置くが、右側にはロールス・ロイスのようないわゆるパワーメーターが表示される。パワーメーターとは最大パワーを100とした場合に、あとどれくらいのパワーが使えるのかを示すと同時に、回生ブレーキ使用時のチャージ量も見えるようになっている。
静粛性は高く、乗り心地はまさにメルセデスそのもの
ウインカーレバータイプのシフトレバーを動かしDレンジを選び、右足をブレーキからスロットルペダルに移して踏み込むと、EQCはすうっと滑らかに動き出した。静粛性が高いのは目の前で爆発を繰り返す内燃機を積んでいないEVならではの特性だが、最大で1万3000回転まで回るというモーターが発する高周波ノイズはうまく遮断されている。試乗前に見たベアシャシーのホイールハウス内側に、大量の吸音/遮音材が配されていた。
これは静粛性が高くなった分、内燃機ではさほど気にならなかったホイールハウス付近のスプラッシュノイズやタイヤのパターンノイズへの対策と思われるが、狙い通りタイヤ付近からのノイズも抑えられていた。乗り心地は速度域を問わず全般的に良好。これなら確かに電子制御式ダンパーは必要ないと感じた。652kgもの“重り”を床下に積んでいるわけで、ばね上の重量は相当重いはずだが、乗り心地に関してこれはいい影響を与えているのだろう。ゆったりとした減衰の仕方が内燃機搭載のメルセデスとまったく同じだったので、乗り心地はまさにメルセデスのそれだった。
ドライブモードはコンフォート/エコ/マックスレンジ/スポーツ/インディビジュアルの5種類。マックスレンジはバッテリーの最大効率を狙うモードで、例えばカメラが速度標識を認識すると、それ以上の車速に達する段階でスロットルペダルに反力が生じて制限速度を超えないようドライバーに注意喚起する。これは、フィードバック機能を持たせたハプティック式のスロットルペダルを採用しているからだ。さらに、マックスレンジを選択しナビゲーションに目的地を入れてディストロニックを使うと、地図データから勾配やカーブなどの情報を取り込み、カーブの手前で回生ブレーキを使って自動的に減速したり、下り勾配では強めの回生ブレーキでバッテリーへの充電を積極的に行う。
ほぼワンペダルでのドライブも可能
ステアリング裏にはパドルが備わる。といってもトランスミッションは存在しないので、「+」と「−」のパドルは回生ブレーキやコースティングモードの切り替えに使用する。通常のDレンジのままでスロットルペダルから足を離すと軽く回生ブレーキがかかる。「+」側のパドルを引くと「D+」となり、スロットルペダルから足を離すと回生ブレーキはかからずにコースティングモードとなる。「−」側のペダルは回生ブレーキの強さの調整。「D−」と「D−−」が選べ、「D−−」だとほぼワンペダルでの走行が可能となる。
秀逸だったのは、ペダルの入力に対するクルマの反応だ。スロットルペダルもブレーキペダルも、踏み込み量や戻し量に応じた加減速が内燃機仕様のメルセデスとほとんど変わらないのである。特にブレーキペダルは、踏み込み当初の回生ブレーキの部分と、その後のコンベンショナルなブレーキとの併用部分との差があまり感じられず、戻し側のコントロールもちゃんと出来てとても扱いやすかった。エコやコンフォートを選んでいるときの加速感はあえてエンジンに似せたようなセッティングになっているが、スポーツにするとそれが一転、モーター特有の素早いトルクの立ち上がりを強く意識させるパワーデリバリーに変化した。
メルセデスらしさが際立つ操舵フィール
操縦性もまたメルセデスらしいものだった。ステアリング操作に対するターンインから再加速に至るまでの一連の挙動は、腰の座った安定感に終始する。それでも操舵遅れなどはなく、重量やホイールベースを考慮すればむしろ回頭性はいい。電動パワーステアリングの操舵フィールがエンジン仕様にそっくりな点も、メルセデスらしさを印象づける要因のひとつになっているのだろう。
コンセプトはプログレッシブ・ラグジュアリー
EQはメルセデスにとって4つ目のブランドになる。これらのブランドの差別化を図るにあたり、メルセデスはそれぞれのコンセプトを掲げた。メルセデス・ベンツ=モダンラグジュアリー、メルセデスAMG=パフォーマンスラグジュアリー、メルセデス・マイバッハ=アルティメットラグジュアリー、そしてEQ=プログレッシブ・ラグジュアリーだという。
「プログレッシブ」には革新的とか進歩的などの意味がある。正直に言うと、EQCの乗り味はまだその域に達していないだろう。まずは、内燃機のメルセデスから乗り換えても違和感のない商品に仕上げ、市場の反応を窺う構えのようである。EVの味付けに関してはどのメーカーもいまだ手探り状態であり、BMWのi3やi8のほうがよっぽどプログレッシブだと思うけれど、商業的に成功しているとは言い難い。メルセデスがこれで終わるはずはなく、二の矢、三の矢がきっと控えているに違いない。プログレッシブの本当の意味は、その時になってようやく分かるのではないだろうか。
REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)
https://www.youtube.com/watch?v=KB-RIdOZ_Kg
【SPECIFICATIONS】
メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC
ボディサイズ:全長4761 全幅1884 全高1623mm
ホイールベース:2873mm
トレッド:前1625 後1615mm
車両重量:2495kg
ドライブシステム:2モーター
最高出力:300kW(408ps)
最大トルク:760Nm
バッテリー:リチウムイオン
バッテリー容量:80kWh
駆動方式:4WD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
電力消費量(NEDC):20.8-19.7kWh/100km
航続可能距離(NEDC):445 – 471km
【問い合わせ先】
メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
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