フォードと同じ値段で買えるフェラーリ
減価償却という避けがたい事実。新車のオーナーへは厳しい現実を突きつける場合がある一方、数年前なら手に届かなかったクルマを、身近な存在へ変えてくれることもある。
【画像】新車のSUVより魅力的? フェラーリ・モンディアル ポルシェ・ボクスター 718とローマも 全102枚
お手頃な価格に落ちた、イタリアやドイツの名門ブランドへ乗る、というアイデアは決して新しいものではない。英国では、「フォードと同じ値段で買えるフェラーリ」という表現をしばしば用いることもある。
ふと中古車市場を観察すると、思いもよらないモデルがこんな値段で、という発見がある。その可能性へ気がついたとき、思わずワクワクしてしまうのは筆者だけではないだろう。気持ちへ水を指すような、現実との兼ね合いが存在するとしても。
といっても、ガレージで長い眠りにつかないような、実際に走れる状態のフェラーリにはそれなりの金額が必要になる。フォードでいえば、トップグレードのクーガくらい、約4万ポンド(約700万円)前後の予算は覚悟したい。
しかし、中古のポルシェなら価格帯はずっと下にある。フォード・フィエスタに並ぶ、2万ポンド(約350万円)以下でも探せる。周囲の視線を集めるような、輝きは放っていないかもしれないが。
50年ほど前にポルシェ924が発売されて以降、こんな状況は続いている。実際、かなりの整備が必要な924なら、今でも数1000ポンド(数10万円)前後で購入することも、英国では不可能ではない。
真新しい718ボクスターの10分の1程度から
現実的な選択肢へ絞るなら、初代の986型ボクスターだろう。英国の中古車市場を調べれば、5000ポンド(約87万円)前後から豊富に玉数が揃っている。真新しい718ボクスターの、10分の1近い費用でポルシェ・オーナーになることが可能だ。
もっとも、リスクを減らすには1万ポンド(約175万円)前後まで予算は増やしたい。これに似た妄想なら何度もしてきた、という読者もいらっしゃると思う。
そこで現在の英国市場にある、1番お手頃なフェラーリとポルシェを実際に探してみた。われわれが目を付けたのが、モンディアルとボクスターという、今回ご紹介する2台だ。
検索するにあたって、一定の条件は設けた。左ハンドル車と事故歴があるものは除いている。走行距離は16万km以下に絞り、ポルシェの場合は初代カイエンも対象には含めなかった。やはり、スポーツカーに乗りたいという理由で。
ちなみに初期のポルシェ・カイエンも、SUVをお探しなら悪いチョイスではないだろう。ただしV8エンジンの場合は特に、冷却系のプラスティック製部品からラジエータークーラントが漏れたり、エアサスペンションが不調に陥ったり、トラブルも少なくない。
印象的なスタイリングも、好みが分かれると思う。涙目のヘッドライトのデザインは、初代ボクスターに似ているが。
1970年代の400や1990年代の456も
4万ポンド(約700万円)以下で売られているフェラーリも、複数存在した。チャレンジ精神に溢れる方なら、ゴージャスなV型12気筒エンジンを積んだ4シーター・クーペ、1970年代の400や412といった選択肢もある。
この価格帯へ含まれる多くには、オートマティックが載っている。それでもイタリアン・グランドツアラーとして、調子が良ければ素晴らしい運転体験を味わわせてくれるはずだ。
燃費は良くない。維持費もかかる。だが、魅力的なクラシック・フェラーリだと思う。見事な大排気量・多気筒エンジンを所有することができる。
後継モデルといえる1990年代の456 GTも、この付近の価格帯へ含まれている。同じくフロントにV型12気筒エンジンを搭載した2+2のクーペだが、維持費が高いことも共通している。AT車であることも多い。
というわけで、現実的なフェラーリの中古車を求めてお邪魔したのは、ケント・ハイパフォーマンス・カーズ(KHPC)社。創業39年という歴史を有し、恐らく英国では最大級の規模を誇る、フェラーリの中古車を主に扱う専門店だ。
大きなワークショップを有し、不調に陥ってもしっかりサポートしてくれる。お手頃な跳ね馬を、安心して選べるお店といっていいだろう。
ショールームに展示されていた1台が、243psを発揮する2.9L V型8気筒エンジンをミドシップした、モンディアルだった。1985年式で、走行距離は7万8800km。販売価格は4万7995ポンド(約840万円)だから、少々予算オーバーだけれど。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
整備費、部品代、修理代はナメてはいけないよ。
オイル漏れ直すだけで100〜600万くらいかかるぞ!
今時のフルオプションの国産コンパクトより安かった気がする