■ミラノの屋外イベントでブガッティがワールドプレミアした理由
2021年にイタリア・ミラノで開催された第1回ミラノ・モンツァ モーターショー(MIMO)では、4台のブガッティが展示された。その内、ワールドプレミアは2台。
最高速500キロ! 1850馬力のブガッティ「ボライド」の1号車がついに完成!
では、どうして初開催のオープンエアのイベントで、ブガッティは4台もの車両を展示したのだろうか。
まず、展示された4台のブガッティは次のとおりだ。
・「シロン・スーパースポーツ」(ワールドプレミア)/320万ユーロ
・「ボライド」(ワールドプレミア)/800万ユーロ以上(予想)
・「シロン・ピュールスポール」/300万ユーロ
・「シロン・スポーツ」/240万ユーロ
ブガッティは1台1台、仕様によって価格は異なるため、少なく見積もっても4台合計で1660万ユーロ(邦貨換算約21億7000万円)の車両がドゥオーモ前に展示されていたことになる。
MIMOの主催者であるアンドレア・レヴィは、もともとミラノではなくトリノで同様のオープンエアのイベントを開催しており、大きな成功を収めていた。つまり、場所が移っただけで基本となるコンセプトは同じだったため、出展社の賛同が得られやすかったということもある。
さらに、2021年7月5日には、ブガッティとリマックが新合弁会社を設立したことも関係しているかもしれない。ブガッティとランボルギーニのCEOであるステファン・ヴィンケルマンが、EVになる前のブガッティをイタリアの地に集めたことは、何かを暗示しているようにも思えるのだ。
●4台のブガッティが並ぶという奇跡
ワールドプレミアされた1台「シロン・スーパースポーツ」は、8リッターW16エンジンを搭載し、最大出力が1600psで最高速度は440km/hを達成したグランドツアラーである。
シロン・スーパースポーツの高速テストでは、リアウイングの角度、車高、ダンピング、電動アシストステアリングの可変領域に基づいて、さまざまなパラメーターを再調整して最適化されている。そのなかには、440km/hでのハンドリングを改良するといった作業も含まれている。このように安全性を確保するために、一切の妥協のない開発をおこなうのがブガッティなのである。
また、空力面も約100個以上のセンサーにより、すべての部品を最高速度と全負荷でモニタリングし、必要に応じて最適化がなされている。さらにスーパースポーツは、エンジンも従来よりも100psスープアップされた関係で、トランスミッションもモディファイされている。
ボライドは、2020年秋にデビューを果たしながらも、これまではデジタルの世界だけであった。それが今回、ミラノのドゥオーモ前に展示され、リアルでの初お披露目となったのである。このサーキットに焦点を合わせたハイパースポーツカーは、最高出力1850ps、重量1240kg、パワーウェイトレシオは0.67kg/psを誇る驚異的なパフォーマンスを実現した。今までのクルマとはまったく違う異次元のクルマだ。
このほかにも敏捷性に特化して作られたピュールスポールも展示された。シロン・スーパースポーツに最大出力は僅かに及ばない1500psではあるが、全速度範囲でダイナミックなコーナリングと新次元パフォーマンスを実現しており、操って楽しいクルマである。尖ったスーパースポーツではなくダイナミックなクルマを探すなら、ピュールスポールが最適だろう。
そして最後は、ブガッティ・シロンの基礎となるスポーツだ。スーパースポーツやピュールスポールは、それぞれの方向性に従ってチューニングされているが、ベースとなるスポーツはそのすべてがナチュラルである。とはいえ、最大出力1500psということには変わりない。これがブガッティのスタンダードだと思うと、驚くしかない。
また、シロン・スポーツを見ると、そのほかのブガッティがどれほど手が加えられているのかがよく分かる(もちろん、ボライドはまったくの別モノであるが)。4台を一度に見比べることができるのは、ファンにとってはまたとない機会だ。
●販売ではなく、ブランディング目的の展示
ブガッティのすべてのラインナップは、生産台数が限られており、モルスハイムからデリバリーされる際にはオーナーが決まっている。普段乗りで使用されるようなクルマでもなく、ほとんどがセキュリティの高いガレージに保管されているのが現状だろう。そのため、なかなか目にすることができない希少性がある。
IAAなどの屋内型モーターショーでは、ブガッティのようなハイパーカーのブースには、カスタマー向けにラウンジが用意されているのが常だ。そこで顧客と商談するわけだが、MIMOのようなモーターショーにはそれがない。
裏を返せば、ブガッティにとってはデリバリー前にソールドアウトしているクルマを従来型のモーターショーに展示するより、SNSで拡散されることで人の眼に触れる機会が増えるMIMOの方が、ブランディング的に価値があると見てよいだろう。それが、写真映えのするドゥオーモ前ならばなおさらだ。
こうしたクルマをMIMOのような誰にでも開かれたモーターショー、しかもミラノのような歴史ある都市の中心部で展示することは、ファンにとっては喜ばしいことであり、ブランドにとってもその価値を高める役割の一端を担っているといえるだろう。
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