新型コロナウイルスの流行により世界中の主要スポーツが中断を余儀なくされている中、5月17日(日)にアメリカのダーリントン・レースウェイでNASCARの最高峰クラス、カップ・シリーズのレースが行なわれた。
なぜNASCARが世界の他のカテゴリーに先駆けてレースを実施できたのか。そしてそれがどんな意味を持つのか……。motorsport.comは、XfinityシリーズやGANDER RV & OUTDOORS TRUCKシリーズに参戦するHattori Racing Enterprises(HRE)を率いる服部茂章氏に電話取材を行なった。
■NASCARカップ第5戦:コロナ禍の中シーズン再開。最初のレースをハービック制す
今回のレースについて服部氏は「予選も練習走行もなくレースだけになりましたけども、何かがスタートしていかなくちゃいけません。今回カップ・シリーズがこうしてレースをやったという事実は大きいのかなと思います」と語った。
ウイルスの感染拡大を避けるため、徹底的な対策が施された今回のレースは、指導に従ってレースフォーマットを変更。予選はおろか、練習走行もない中でレースが行なわれたのだ。
NASCARが他にどんな対策を実施しているのかについて訊くと、服部氏は次のように答えた。
「NASCARの方から、30ページにも及ぶ対策が渡されています。サーキットに行ける人数もかなり制限されていて、PRの人間や僕もサーキットには行きません」
「ピットクルーやクルーチーフを含め、本当に限られた人数になっています。当初は決められた周回数で全車がピットインし、ピット作業の時間を決めることでピットクルーも削減しようという声もありましたけど、ピット戦略もあるのでそれは普通にやろうということで元に戻りました」
「サーキットの中では体温管理をしっかりして、今週のカップ戦もそうでしたけどマスクをし、インタビューも長いマイクを使って離れてやっていました」
チーム独自の対策などは考えているかと訊いたところ、「問題に対して、毎週のようにチーム間でミーティングをやっているので、シリーズとして対策が徹底されています」との返答。シリーズ全体で、対策を煮詰めているようだ。
NASCARと同じく北米で行なわれているインディカーもレース実施に向けて動いており、現時点では6月6日のテキサス・モータースピードウェイ戦が開幕戦となる予定だ。
しかしNASCARはそれよりも3週間早い再始動となった。なぜそんなことができたのか。その背景について訊くと、服部氏はシリーズ側の姿勢と、政府の支援が大きかったという。
「NASCARはレース数が多い(カップ・シリーズは36戦)じゃないですか。全レースできるのかという疑問がある中で、各チームが契約しているスポンサーとお金の関係で色々な問題が出てきてしまいます。NASCAR側から『とりあえず心配するな。どれだけ中断が長くなってもしっかりとレースはやるから、スタッフは解雇せずにいてくれ』という話がありました」
「あとNASCARはトランプ政権とかなり近いんですよね。開幕戦のデイトナにもトランプ大統領が来て、レース前のパレードにも参加していました。政権が早く経済を元に戻そうと目指しているので、そういう力もかなり働いたんだと思います」
「NASCARのチームは約90%がシャーロットにあるんですが、ノースカロライナ州がロックダウンを解かないとチームは仕事ができなかった。ですが2、3週間前にNASCARチームは仕事をしていい業種に指定されたので、平常通りに戻ったんです」
そうした動きには、アメリカの国民にとってスポーツ観戦が大きな意味を持つという、文化的な背景も一因となっていると服部氏は考えているようだ。
「アメリカって日本と少し環境が違うというか、スポーツの存在がかなり大きいんです。ロックダウンで自宅にいる中で、スポーツが観れるということが国民にとって重要なんです。こうしてNASCARが始まって、来週にはゴルフもやるみたいですし、そうなると気分的にもだいぶ違うと思います」
「日本も政府が動いて、例えばスーパーGTを復活させてTVで観てもらわないとって動けば別ですけど……日本なら相撲や野球からですかね。そうしないといつまでコロナのために家にいなくちゃいけないんだという不安が拭えませんからね」
「6月になればインディカーなど、色々なスポーツが始まっていきます。普通に戻りつつあるという気分的なところが大きいのかな。バスケットボールは屋内のコンタクトスポーツなのですぐに再開というのは難しいかもしれませんけど、屋外の野球やモータースポーツの方がやりやすいと思います」
「今回のTV中継にも政府の人間が出てきて、『NASCARとチーム関係者には感謝している。みんなで協力して経済を元に戻そう』とインタビューで言っていました。アメリカにとってモータースポーツは大きな存在だし、ファン層も多いのでNASCARへの要請があったんだと思います」
NASCARが真っ先に再開に至ったのは、シリーズやチーム側が多大な努力をしたこと、そしてアメリカ独特の事情が大きく影響したようだ。そういう意味では、他のカテゴリーの参考にはならない部分もあるのかもしれない。しかし、NASCARが世界中のモータースポーツにとっての”前例”を作ったのは間違いなく、大きな意味を持つはずだ。
「チーム側も最初『6月までレース実施は難しいだろうな』と感じてましたけど、それが5月の中旬になったというのは相当頑張った結果だなと思います」
「アメリカは感染者も死者の数もとても多いです。一時は1日に700人ほどが亡くなっていましたけど、今考えるとそれが2週間ほど前の話です。少し落ち着いてきましたけど、まだたくさんの人が亡くなっています。そんな中でレースをやるというのは本当に勇気がいる判断だと思いますけど、一歩前に踏み出せたことが大きいですね」
「F1の場合はまた事情が違って、各国に行くじゃないですか。国によって状況が違うし、チームの拠点が違う国にある。そして開幕戦のオーストラリアでコロナの感染者が出てしまったので、相当慎重にならざるを得ませんよね」と、服部氏は付け加えた。
「そういう意味でNASCARがひとつ前例を作ったことは大きいと思います。何かがあったら批判されますし、最初に手を挙げるのはなかなか難しいですからね」
服部氏が率いるHREが参戦するXfinityシリーズは地元シャーロットで25日(月)に、26日(火)にはGANDER RV & OUTDOORS TRUCKシリーズのレースも予定されている。
服部氏は、トップ争いを目標にするのと同時に、観ている人に元気を与えられるようなレースがしたいと意気込んだ。
「レースができない間も、もちろんeスポーツなどはありましたけど、生のレースをTVで見ると全然違います。僕たちも頑張って、観ている人たちが『頑張るぞ』と良い方向に向くようなレースがしたいと思います」
「トラックは現時点でポイントリーダーです。2018年にチャンピオンを獲ってトップレベルのチームになっていますし、どんな状況でもトップ争いができるということを意識していかなくちゃいけません。最低限の人数でしたけど、休みの間もクルマを作ってきたので、シーズンが再開しても常にトップ争いができるようにしたいです」
「Xfinityはひとつ上のクラスで、昨年からやっとスポット参戦するようになり、今年もスポット参戦になります。早くトラックと同じような体制になり、トップチームの一角に入れるようにしていかないといけません。そのためには今年1年が重要だと思うので、頑張っていきたいと思います」
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