各位が復活を熱望しているマツダのロータリーエンジンではあるが、同社が6月17日に発表した電動化戦略によれば、ロータリーエンジンは今後「ハイブリッドシステムの一環」としてしか復活しない公算が強い。
となれば、2003年から2012年にかけて販売されたマツダ RX-8こそが「最後のロータリースポーツ」ということになるのだろう。RX-8が純粋なスポーツカーかどうかという議論はさておいて。
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そんなマツダ RX-8の中古車市況は今、どうなっているのか? 1980~90年代の中古スポーツ各モデルの相場が超絶高騰しているなか、2003年という比較的近年にデビューしたRX-8の中古相場も、やはり上がってしまっているのだろうか?
もろもろの数字から紐解いてみることにしよう。
文/伊達軍曹、写真/マツダ
【画像ギャラリー】最後のピュアロータリー車となってしまうのか?マツダRX-8の足跡をたどる
■最後のロータリースポーツ、RX-8の中古車市況は?
まず、マツダ RX-8全体の中古車流通量は、中古車情報サイト「カーセンサーnet」によれば2021年9月半ば現在、全国で360台。1997年から2002年まで販売された最終型RX-7(FD3S)の流通量が90台でしかないことから考えると、RX-8の中古車流通量は「まあまあ豊富」と捉えていいだろう。
RX-7の後継として誕生したRX-8。21世紀のクルマとして絶対的な動力性能だけでなく、低速トルクや燃費向上も重視した新世代ロータリーエンジン「RENESIS」を搭載したことが話題となった
そしてその相場は、モデル全体で約25万~約360万円。25万円付近の個体はさすがにボロいので無視するとして、「ボリュームゾーン」は100万~150万円付近。そして「なかなかのスペック(走行距離などの諸条件)」を有する個体が集中しているゾーンが260万~350万円といったところだ。
■ピュアスポーツであるRX-7に比べるとまだ買いやすい価格帯ではある
同じロータリーエンジンを搭載しているモデルでも、FD3S型RX-7の場合は、
・モデル全体:約270万~約1000万円
・ボリュームゾーン:300万~500万円付近
・なかなかのスペックゾーン:500万~1000万円
となっているので、その差はかなりデカい。すなわちFD3Sはもはや天文学的……とまでは言わないが、まぁかなりの高値圏に達してしまっているのに対し、RX-8は「長期的に見て値上がりはしているが、まだ普通に買えるゾーンにはある」と言うことができる。
08年3月に行われたマイナーチェンジを境に「前期型」と「後期型」に分けるとしたら、各々の流通台数とトランスミッション、価格帯は下記のとおりとなっている。
こちらは前期型。見た目のスタイリッシュさと4人乗りの実用性を兼ね備えたコンパクトで丸いキャビンが特徴。このキャビン実現のため、観音開きドアの採用も新鮮だった
●前期型AT|約80台|25万~240万円
●前期型MT|約180台|30万~240万円
■後期型AT|約50台|50万~300万円
■後期型MT|約60台|90万~360万円
当然ながら「AT車よりMT車のほうが高い」「流通量もMT車のほうが多い」という状態だが、各々の差は意外と大きくはない。特に価格の面では、ATのMX-8も意外と健闘している。
こちらは後期型。前期型にくらべスポーツカーらしい精悍さや華やかさも加味された。なお後期型のエンジンはレギュラーガソリンへの適合を含めた改良の結果、出力が若干ダウンしている
これは、曲がりなりにも後部ドアを備えているため「ファミリーカーとしても(いちおう)使えるクルマだから」という意味で、AT車もそれなりの人気はあるからーーということなのだろう。
■走行距離も1万km~ 15万km迄色々だが、距離よりコンディションの良し悪しで選びたい
また、こういった年式のクルマで「走行距離」をウンヌンしてもさほど意味はないのだが(クルマというのは古くなってくると、ご存じのとおり、走行距離の多寡ではなく「扱われ方の差」「整備の内容と頻度」によってコンディションが決まる)、一応、走行距離別の流通量内訳も見ておこう。
●1万km未満:2台
●1万~2万km:3台
●2万~3万km:7台
●3万~4万km:26台
●4万~5万km:28台
●5万~6万km:36台
●6万~7万km:43台
●7万~8万km:58台
●8万~9万km:45台
●9万~10万km:43台
●10万~15万km:97台
●15万km~:9台
やはり、年式相応の走行距離である「10万~15万km」という物件が最多だが、走行5万km以下の個体数も思いのほか多いのが、現時点のRX-8の特徴ではある。
とはいえ「走行距離が短いから必ずコンディションがいい」とは言えない。なかには「走行3万km台だが80万円くらい」という個体もあり、逆に「走行10万km超だが、車両価格は200万円以上」という個体も存在している。
走行距離は短めであればあるほど「純正内装のコンディションがいい」という傾向はあるが、クルマ全体としてのコンディションは、必ずしも走行距離の多寡と相関しているワケではないのだ。
そのためマツダ RX-8の中古車をこれから探す場合は、走行距離は「参考にはするが、盲信はしない」という姿勢で臨むのが正解となるだろう。
以上のとおり、流通量はそれなりに豊富で、FD3Sやそのほかの90’s国産スポーツのような超絶高騰はしていないマツダ RX-8は「まだ買える国産ネオクラシックスポーツ」として、大いに魅力的な選択肢である。
RX-7の頃と同じ13Bを名乗るが、新世代ロータリーとして「RENESIS」と名付けられた。その名に恥じぬ様々な新技術にチャレンジ。その半面コンディション維持にはきめ細かなメンテが必須だ
もしもこれからRX-8の中古車を買うとしたら、どのような個体を選べば良いかというと――ここまでいろいろな数字を挙げてきたことと若干矛盾はしてしまうのだが、「年式や走行距離にはこだわらず、『信頼できる専門店』で『できるだけフルノーマルに近い個体』を買う。そのうえで、100万円ほどの『メンテナンス予算』も用意しておく」というのが、おそらくは正解だ。
25万円の超底値物件はさすがにおすすめしないが(そもそも部品取り車レベルだろう)、だからといって「300万円超の個体を買えば絶対安心」とも言えないのが、ロータリースポーツの難しいところである。
■信頼できるお店探しと購入後のアフターケアにも十分な予算確保が必要だ
より具体的に言うと、「高くていい中古車」もあるが、「ただ高いだけの中古車」もあるというのが現状で、そのよし悪しは、我々アマチュアが内外装やエンジンルーム、下回りなどをサッと見たぐらいではほとんどわからないのだ(わかったつもりになっている自称ベテランはたくさんいるが……)。
そのため、我々ができることと言えば、
・信頼できる専門店を必死で探す
・そこの大将に「これならたぶん大丈夫」というRX-8を探してもらう
・そのうえで、その個体をビシッと整備する
・さらに、その後の整備予算も確保しておく
恐らく最後の純ロータリーエンジン車となるであろうRX-8。4人乗りという思わぬ実用性も兼ね備えており、タマ数のある今のうちに購入し、大切に乗り継ぐラストチャンスかもしれない
ということしかないのだ。 こうすると、当然ながらそれなりのカネはかかることになる。だがそれでも、約1000万円にも達してしまった上物のFD3S型RX-7を買うことと比べれば、ずいぶん「安上がり」ではあるはず
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