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メルセデス・ベンツのEVコンセプト「ビジョン ワンイレブン」とは? 伝説の実験試作車「C111」をオマージュした新時代へのマニフェストでした

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メルセデス・ベンツのEVコンセプト「ビジョン ワンイレブン」とは? 伝説の実験試作車「C111」をオマージュした新時代へのマニフェストでした

300SLと並ぶメルセデス・ベンツのデザインアイコン「C111」

1969年にデビューしたメルセデス・ベンツ「C111」は、伝説の「300SL」を彷彿させるガルウイングドアを持つミッドシップ2シーターで、心臓部には当時「夢のパワーユニット」だったロータリーエンジンを搭載していました。市販車では全くなく、あくまでも実験試作車であったC111をオマージュして2023年に発表されたコンセプトカー「ビジョン ワンイレブン(Vision One-Eleven)」を紹介するとともに、そこに込められたメルセデス・ベンツの想いを読み解いていきます。

2億5500万円は極めて順当。メルセデス・ベンツ「300SL」はどうしてガルウイングにせざるを得なかったのでしょうか

ガルウイングと「ワンボウ」デザインをダイナミックに再解釈

2023年6月、メルセデス・ベンツは、北米デザインセンターで新しいコンセプトカーを発表し、同年ミュンヘンで開催されたIAAモビリティにも出品した。ビジョン ワンイレブン(Vision One-Eleven)はその名が示すとおり、伝説的な実験試作車「C111」へのオマージュであり、次世代のメルセデス・ベンツが目指す「アイコニック・ラグジュアリー」の方向性を示すものである。ダイナミックなデザインと革新的な全電動パワートレイン技術を組み合わせている。もちろんフロア下にはバッテリーを搭載している。

スタイルは、メルセデス・ベンツのシグネチャーである「ワンボウ」のデザインを巧みに表現しているのが特徴である。つまり、1本の弓なりのカーブでシルエットを形成する特徴を受け継ぎ、全高は1170mmと非常に低い2シーターに仕上げている。22インチの大径ホイールをシームレスに納めて大きく盛り上がった前後のフェンダーがダイナミックであると同時に、低車高感を強く打ち出している。

また、非常にエアロダイナミックなミッドシップのビジョン ワンイレブンは、独特のガルウイングドアと目を引くオレンジのアルビーム塗装と黒の塗装により、今日のデザインアイコンとなっている。この「カッパーオレンジ」と呼ばれるアルビーム塗装は、メタリック層の上にカラー層を重ね塗りすることで、C111よりもパワフルで、光によって変化し鮮やかさと深みを増している。さらに、サイドウインドウにこのボディカラーと同色を施し、外側から不透明でピクセル化されたパターンでカモフラージュされたウインドウをボディに見事に融合させている。

インテリアデザインではダッシュボードなどの大きな表面はハイルックスのハニカム構造を示す白い生地で装飾してあり、素材は100%リサイクルポリエステルで作られている。室内幅いっぱいに水平に広がるインパネにはドット表示のディスプレイをビルトインしている。

メルセデス・ベンツの「アイコニック・ラグジュアリー」を象徴

メルセデス・ベンツの最高デザイン責任者であるゴルデン・ヴァゲナー(Gorden Wagener)は、次のように語っている。

「メルセデス・ベンツの目標はスタイリングすることではありません。アイコンを作ることが私たちの目標です。300SLやC111のようなデザインアイコンは、どちらもガルウイングドア付きで、私たちのDNAの一部です。(中略)当社の全電動ビジョンカーは、当時アバンギャルドだったC111を現代風にアレンジしたものです。驚きの要素は、その非常にクリーンで純粋、そして同時に非常に筋肉質なプロポーションから来ています。このアイコニックな透明感はインテリアにも反映されています。同様に官能的でありながらミニマリスト的なデザインは、メルセデス・ベンツのアイコニック・ラグジュアリーを象徴しています」

とくに、技術的なハイライトは、電気モーターのスペシャリストである英国YASA社が開発した非常に強力で高効率の軸方向磁束モーターである。このYASA社は、2021年7月からメルセデス・ベンツ社の100%子会社である。同じ出力で比較するとYASAのモーターは従来のモーターに対して軸方向の長さが1/3とコンパクトで薄型である。この特徴を活かしてビジョン ワンイレブンはリアに2基のYASAモーターを搭載して、左右の後輪を駆動する。左右後輪の駆動力を個別に制御可能であるので、ハイパワーでもスタビリティを確保している。

EVの限界性能を追求する新時代のアイコン

ドイツ人のフェリクス・ハインリッヒ・ヴァンケルが発明し、ドイツのNSU社の協力で1957年に登場したロータリーエンジンが従来のレシプロエンジンに代わる画期的な方式として、世界中から注目を集めてから、60年以上が経つ。

メルセデス・ベンツもこのロータリーエンジンの開発を実施し、1969年9月の実験試作車C111に初めて3ローターのロータリーエンジンを搭載し、次いで4ローターエンジンを搭載して発表した(C111-II)が、1973年の第1次オイルショックでロータリーエンジンの燃費性能などの問題で開発を打ち切った。

しかし、メルセデス・ベンツは実験試作車C111に5気筒ターボディーゼルエンジンを搭載して1978年に9つの世界速度記録を樹立(C111-III)。翌年の1979年には4.5L V型8気筒ガソリンエンジンを2基のターボチージャーでパワーアップし、ナルドサーキット最高速度記録を樹立した(C111-IV)。

1969年以来、メルセデス・ベンツC111は2024年で55周年を迎えた。C111は、実験試作車というコンセプトに基づき、「ロードカーにおける空力の限界を見極めること」、そして、「量産型エンジンの開発限界を知ること」ということが目的であり、決して市販車ではなかったことが、一連のC111で最もよく理解できたといえる。

そのような流れのなかで、2023年にメルセデス・ベンツが新しいコンセプトカーとして発表したビジョン ワンイレブンは、その名が示す通り、伝説的な実験試作車C111へのオマージュであり、次世代のメルセデス・ベンツが目指す「アイコニック・ラグジュアリー」の方向性を示すものである。

* * *

ところで、ロータリーエンジンが登場した当時、世界の各社がこれに挑戦し、NSU社への技術提携の申し込みは100社に及び、日本だけでも34社になったという。実用化に向け山積する技術課題を解決し、量産にこぎつけたのは4輪車ではマツダ、NSU社、シトロエン社のみであったが1973年の第1次オイルショックによる燃費の問題などで、そのほとんどが撤退した。

近年ではマツダのみがロータリーエンジンのさらなる挑戦を続け、モータースポーツ分野で1991年6月、第59回ル・マン24時間レースで2台のマツダ「787B」ロータリーが総合優勝と6位、さらに「787」が8位という快挙を成し遂げたのがまだ記憶に新しい。しかも、今日ではマツダ「MX-30」のロータリーEVが走りだしていることを追記しておく。

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