運営元:外車王SOKEN
著者 :TUNA
アーマーゲーと呼ばないで、といわれていた頃のAMGを振り返る
■ルノーとサムスン?韓国発の自動車ブランド
コロナ前、というワードを聞くとすっかり数年前であることを感じざるを得ない今日この頃。
思えば数年前、海外渡航への心理的なハードルはかなり低かったと思える。
飛行機に乗れば約2時間半、検査場での入出国の手間さえなければ北海道へ行くのとさほど変わらないように思えていたお隣、韓国。
首都のソウルはアジアのなかでも華やかな街並みで、繁華街含め昼夜問わずギラギラした雰囲気と洗練された建造物の数々が好きだ。
何より、近年では芸能からファッション、デザインにまつわるさまざまな文化的側面が国際的にも注目され、街を歩くだけでも本当に楽しい。
もちろん観光的な表情も楽しいのだが、自動車メーカーが古くより発達してきた国であるからこそ見えてくるものもある。
路地裏、大通り問わず大型セダンが数多く並び、ステータスの高いクルマに乗ろう!とするユーザー事情などが見えてくるのも面白い。
実際、偶然撮影した交差点の写真を振り返ってみても、やはり都内よりもセダンが多い印象ではないだろうか。
自分が子供の頃、「韓国では親や目上の人を敬う文化があり、家族を乗せるためにもでは2ドアのクルマはあまり好まれない」と教えられ、へぇ!と、国によってクルマへの価値観についても異なることを聞かされ、その文化の違いに驚かされた。
その点、日本を走るミニバンや軽自動車の台数は世界的に見ても驚かされるものであろうが、風土的な視点から始まるクルマ像はある種人文学的なところすらも感じられ、韓国は長い間ずっと行ってみたかった国の一つだった。
これらの写真については自費出版本の拙著、「ソウルじどうしゃ」で書き連ねてあるのだが、今回はその誌面のなか描ききれなかったあるメーカーについて少しだけ掘り上げてみようと思う。写真はコロナ前の2018年の渡航の際、数日掛けて撮影したものの一部である。
■栄枯盛衰とブランドの今
今回紹介するメーカーは「ルノーサムスン自動車」である。
自動車事情に詳しい読者なら知っていると思われるが、2022年にルノーコリア自動車へと社名変更したそのメーカーだ。
サムスンといえば、日本ではスマートフォンのギャラクシーシリーズをはじめとする家電などが有名だが、韓国の大企業らしく三星グループから自動車産業へと進出を図り、1990年代前半に日産自動車からの技術支援のもと発足している。1998年には同社初のモデルとなる高級セダン、SM5が登場。さまざまなサービス体制などと共に話題を呼んだ。
写真の通り、日本人の読者ならば、昔よく見かけたような記憶もあるかと思うが、日産セフィーロ(A32型)をベースとして開発され、韓国国内で製造されたモデルだ。(エンジンなどは日本のいわき工場からの輸入)
SM5というモデル名に搭載エンジンの上2桁を冠したエンブレムが取り付けられ、V6の2.5リッター車ならエンブレム表記は"SM525"となる。
2002年には第一回の韓国カーオブザイヤーを獲得したり、K-POPのMVなどにも数多く出演するなど、韓国国内でも慣れ親しまれたモデルではないだろうか。
2018年に渡航した際は、ソウルにおいても三星自動車時代のSM5シリーズもまだまだ走っているのをよく見かけることができた。
そのなかでも2006年以前に発行された緑色の旧型ナンバープレートを観測することも少なくない。
特にソウルで見かける初代SM5はボディにワックスの効いたピカピカの車両も多く、少し年配の方が運転されているケースもよく見ることができた。
2000年に経営破綻した三星自動車はルノーアライアンスグループの傘下となり、ブランドの名称も「ルノーサムスン自動車」となる。
2代目のSM5は日産自動車との共同開発となり、セフィーロの後継となる日産・ティアナを基本としたミドルサイズセダンへと進化。「モダンリビング」をコンセプトテーマとしていたティアナとは異なり、少しカジュアルでスポーティな印象を持つ。
インテリアに関してもティアナは艶消しの木目に質感の良いシート表皮など、随所に素材へのこだわりが見られる。SM5はダークトーンで統一されたシックなインテリアなど、ティアナとは異なるキャラクターを目指している様子がうかがえる。
ブランドのなかでもどちらかというとラグジュアリーな指向を持つのは、この世代で追加されたモデル、兄貴分のSM7だ。
こちらはボンネットマスコットにメッキのコーナーモールなど、ティアナとボディの多くを共通としながらも、全体的に大胆な雰囲気を漂わせる。
元来のボディワークをうまく用いながらもワンランク上のゴージャスなデザインは凄みすら感じられ、ティアナのアクシスシリーズともまた異なる品がある。
前期・後期共にティアナと同じ2.3Lと3.5Lのラインナップだが、後期型は並み居る国内外の競合車種に負けじと内外装にも手が入り、たくましさを纏っている。
「日本にもあったら良いのになあ」というないものねだりを思ってしまうのは「クルマオタクのサガ」だ。
SM5、SM7シリーズの弟分として日産自動車のブルーバードシルフィをベースとしたSM3が存在する。
前期型は日本のブルーバードシルフィと共通部分の多いボディだが、後期型は日産アルメーラ・クラシックとして輸出されているモデルの方にボディが近い。
ロシアなどで「ああ、これはパルサーだったっけ....アルメーラ?シルフィ?サニー?」などと思っていた日産車は、実は韓国製だったのである。
同車はメキシコやコロンビアなどで売られていたルノー・スカラとしてもOEMされているなど、仕向け地によってもブランドや呼び名が異なる。
セフィーロ、ティアナ、ブルーバードシルフィ、と韓国のみならず広くアジアへと浸透していった車種だが、こうして韓国の街なかを歩いてみるとその活躍ぶりはなんだか嬉しいものである。
2010年代に入り、これまでの日産車を基本としたものから、ルノーアライアンスグループの車両へと徐々にバトンタッチ。
前述の通り、現在の社名はルノーコリア自動車へと変更された。
SUVであるQM5(ルノー・コレオス)以降の開発はルノー、日産と共同開発した車両が販売されていたが、現在のラインナップはルノー系列の車両が多くなった。
日本でも見かけるキャプチャーはQM3の名前で、大型セダンのタリスマンはSM6として販売される。
SUV、セダン共に市場に多数のモデルが存在する韓国だが、そんななかでも存在感を感じさせるデザインは、源流にフランス車を色濃くベースとしたものならではであろう。
ここ15年くらいでサンヨンや大宇を含め、ブランド自体が大きく変化しつつあるが……その分韓国の道路を走るクルマのラインナップはバリエーションもあまりに豊かになり、眺めるのが非常に楽しい。
特に近年の韓国車のデザインは大胆でどのクルマも挑戦的だ。DRLのシグネチャーが薄く、細く近未来的な表情になったヒョンデ車をはじめとして、5年経った今のソウルの道路でどんな景色を味わえるのか、海外への渡航制限にまつわる状況が変わりつつある今、2023年の韓国をフレッシュに確かめに行きたいものだ。
[ライター・撮影/TUNA]
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