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愛車の履歴書──Vol58. 雛形あきこさん(後編)

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愛車の履歴書──Vol58. 雛形あきこさん(後編)

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第58回。後編では、俳優の雛形あきこさんが現在の愛車を披露する。

メルセデスから日産へ

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前編では、雛形あきこさんが運転免許を取得、はじめての愛車としてメルセデス・ベンツSL500(R129型)を購入したところまでを記した。多忙だったためにあまり乗れなかったというSL500を4年ほど所有して、次のクルマに買い換える。

「結婚をして、娘ができたタイミングで、メルセデスの『S600』に乗るようになりました。Sクラスを選んだのは、デザインが好きで格好いいなぁと思ったことと、みんなで乗るには少し大きいクルマがいいと思ったからです」

雛形さんが乗っていたのは、1998年に発表され、2005年まで生産された第4世代。「W220」というコードネームで呼ぶ人もいる。雛形さんはデザインが好みだと述べたが、先代にあたる3代目Sクラスよりもコンパクトになったことと、内外装ともにエレガントなデザインが与えられたことが話題となったモデルだ。

「SL500は黒のメタリックでしたが、S600はホワイトを選びました。グリルまで真っ白にして、娘の送り迎えとか買い物とか、よく乗りましたね。S600は5年くらい乗ったのかな。この間に離婚をして、娘とふたりで暮らすようになり、娘もチャイルドシートがいらない年齢になったのを機に、『もう一度SLに乗りたいな……』と、思ったんです。かなり運転するようになっていたし、今度こそSLを乗りこなせるんじゃないか? と、思って、もう一度ブラックのSLを購入したんです」

雛形さんが購入した2台目のSLは、2001年から2011年まで生産された第5世代(R230)だ。

「屋根の開閉が電動になっていて、ハードトップがきれいに収納されるのを見て、こんなに簡単にオープンになるんだ! と、感心した記憶があります。最初はおもしろがってオープンにしていたんですが、暑かったり寒かったりで次第に屋根を開けなくなり……オープンに憧れてはいたけれど、結局、ハードトップで乗るようになるんだなと思いました(笑)。でも、最初のSLと違ってドライブを堪能できたので、満足しました。結婚するまでだったから、このSLには3年ぐらい乗ったと思います。それで次に乗ったのが、日産『フーガ』でした」

日産フーガは、現在ではラインナップに存在しないモデルなので、少し説明が必要だろう。

初代日産フーガは、40年もの歴史を誇ったセドリック/グロリアの後継モデルとして2004年にデビューした。直接のライバルはトヨタ・クラウンで、まだ演歌の匂いが残っていた当時のクラウンに対して、“走りのビッグセダン”を標榜して差別化を図った。

雛形さんが乗っていたのは2009年に発表された第2世代のフーガで、“走・美・快”をコンセプトに開発されたモデルだ。初代モデルよりもはるかに抑揚に富んだエクステリアデザインが特徴で、そのハンドリング性能の高さは辛口ジャーナリストをうならせるものだった。デビューして1年後には、ハイブリッド仕様もラインナップに加わった。

「色は黒で、スポーツパッケージというグレードでした。グリルまで黒にして、自分ではすごく格好いいと思って乗っていました。フーガで覚えているのは、大雨の日に高速道路を走っていたらものすごく深い水たまりに突っ込んで、ちょっと機械がおかしくなったのか、警告ランプが一斉に灯ったことですね。でも基本的にはフーガに限らず、クルマのトラブルに悩まされたことはないので、幸せなカーライフだと思っています。フーガは形も気に入っていたし、よく走ってくれたので、5年ほど乗りました」

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「娘にも運転させてあげたいな、似合うクルマはなにかな、と、思っていたときに、2017年だったと思うんですけれど、J-WAVEの『BMW Tokyo DRIVING DAYS』という番組で、『ミニ』に乗せていただいたんです。生まれてはじめてのミニで、あまり注目していなかったけれど、外観もインテリアもすごくカラーバリエーションが豊富で、自分の好みにカスタマイズできるのがすごくいいなと思いました。ベンツやフーガも少しカスタムしていましたけれど、そういうのが好きなんでしょうね」

こうして、雛形さんはミニ・クラブマンに乗るようになる。写真の個体は、雛形さんの愛車そのものだ。

「3ドアも5ドアも、オープンまで全部見ましたけれど、クラブマンの形がかわいいなぁと思ったんです。四角いけれど丸い感じで、これなら娘が乗ってもお洒落かな、と。観音開きの後ろの扉とか、使い勝手がよさそうなのも決め手でした。色はバーガンディがきれいだなと思って、だったら内装もバーガンディでコーディネイトしようということになり、スピーカーはちょっといいやつにしようとか、自分が楽しめるような空間に仕立てられるところがミニはすごくよかったです。もう2回車検を通して7年目ですが、すごく気に入っています。コンパクトだけれどハンドルの手応えがしっかりしているし、エンジンのフィーリングが力強くて好きです」

ミニ・クラブマンとの蜜月はもうしばらく続きそうではあるけれど、他に気になるクルマはあるのだろうか? 訊くと、雛形さんは小さく頷いて、「実は、(トヨタ)『オリジン』を熱心に探していた時期があります」と、明かした。

オリジン! このクルマは、トヨタの国内自動車生産累計1億台達成の記念事業のひとつとして企画され、2000年に発表されたモデル。初代「クラウン」をモチーフにしたレトロデザインのセダンで、同社の「プログレ」をベースに開発された。

観音開きのドアや湾曲したリヤウインドウが旧き佳き時代を連想させ、ウッドとレザーで丹念に仕立てた内装にも味わいがあった。エンジンは最高出力215psを発生した3.0リッター直列6気筒エンジン、当時の新車価格は700万円。ただし1000台の限定生産車だったことから、なかなか中古車市場に流通しない。

「黒いオリジンがよかったんですけれど、特に黒がなかなか出てこなくて……。何台か見に行って、さすがにカーナビが古くて使いにくそうだけど、やっぱりオリジナルのままがいいかなぁとか、そこまで真剣に考えたこともありました。けれど、今はちょっと諦めムードです。で、最近は、内装がベージュのクルマに乗ってみたいなぁ、と、考えています。シートだけがベージュというのではなく、ダッシュボードまでベージュでトータルコーディネイトしているクルマに憧れて、主人と調べている最中です」

なるほど、ベントレーやロールス・ロイスならそういう仕様がオーダーできるし、レンジローバーにもベージュ内装があった。それほど多くはないけれど選択肢はあるし、実はこうして探しているときが一番楽しかったりする。

雛形あきこさんのクルマ趣味の旅は、まだまだ続きそうだ。

雛形あきこ(ひながたあきこ)1978年1月27日生まれ、東京都出身。14歳から芸能活動をスタート。グラビアアイドルとしても人気を博す。ドラマ、バラエティ、映画、舞台、CMなどで幅広く活躍中。

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Vol58. 雛形あきこさん 前編

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ)

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