近頃アフターパーツマーケットを賑わしているのが自動車ガラス用遮熱発色フィルム「ゴーストフィルム」というガラスフィルムだ。オーロラのように見えるのが特徴で、合法的にフロント、サイドガラスに貼ることができるとあって注目度が高まっている。
筆者が色のついたフロントガラスの存在を知ったのは、2020年にメルセデス・ベンツの新型Sクラスのプロトタイプの写真を見た時だ。遂にフロントガラスに色がつく時が来たとその時は思ったが、とてもカッコよく見えた。その後アウディやBMW、ロールスロイスなどでも正式採用され実際に目に触れるようになってきた。
アプリ売りのオジさん彷徨記 Vol.37 ポルシェセンター目黒編 Part1
メルセデス・ベンツ Sクラス(W223)プロトタイプ。フロントガラスがブルーに発色しているのがわかるだろうか。Photo:autobild.deなぜ色をつけるのか?そもそもなぜ透明のガラスに色をつけるのか?ファッション性、プライバシー保護、熱対策がある。スモークフィルム、ミラーフィルムといった商品がドレスアップ、プライバシー保護を目的に流行った覚えがあるが、クルマにフィルムを貼ることが日本よりも普及している海外では、主に紫外線、赤外線をカットして快適性を高める目的で使用されている。イメージはサングラスだ、日本人はファッションで着用する人が多いが、外国人は目を紫外線から保護するためにサングラスを着用する。
不要な光線を遮る自動車用ガラスも日々進化していて、メーカーも付加価値を高めるために快適性を増すガラスの開発に勤しんでいる。では、車内の快適性を高めるにはどうしたらいいのか?エアコンの性能が上がればいいのかもしれないが、それだけでは不十分で、ガラスも進化が必要だ。スモークガラス、UVカットガラスが普及してきたが、真夏の車内の暑さは危険な状態で、うっかりハンドルを握ると火傷しそうな勢いだ。そのようなことで、ガラスがもっと遮熱できれば車内の高温化抑止、エアコンを使用するためのエネルギーを減らすことにつながるはずだ。
メルセデス・ベンツEQS。Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD光と熱は密接な関係で、紫外線をはじめ赤外線、X線、可視光線などの光は発熱する。だから、遮光カーテンのように光の侵入を遮れば熱も通さなくなるのだが、それでは運転ができなくなる。なので、闇雲に色を付けるわけにはいかない。透明で、光をカットするガラス。そんなものがあるわけがないのだ!考えてみて欲しい、クルマは四方をガラスに囲まれた小さな部屋だ。太陽の光、可視光線のおかげで人は眼を通して明るいと認識する。その可視光線は赤外線のように熱を発生する光線であるため車内の温度は上がっていく。紫外線カットガラス、フィルムは今やスタンダードだが、そこから先が難しい。しかし「ゴーストフィルム(GHOST)」がその矛盾をハイテク技術をもって解決したのだ!
色がついて見えるのはあくまで副産物興味深いのは「自動車用ガラス遮熱発色フィルム」と表現したように、メルセデスが採用したガラスも「ゴーストフィルム(GHOST)」も「着色」ではないということだ。不要な光線を遮るべく開発を重ねた結果、「ゴーストフィルム(GHOST)」は120層~150層の多層薄膜フィルムという形で商品化に成功した。発色するのは太陽光がフィルムに当たって透過せずに干渉、分散、屈折、反射してプリズムのように変化することで発色する。モルフォチョウ・タマムシなどの発色構造に近い構造発色である。だから貼るガラスによって、見る角度によって見え方が変わってくるのだ。また、写真のように車内からは均一にクリアで、フィルムを貼っていないのと同じ状態である。
法律上では、フロントガラスが真っ黒であっても問題はない。Photo:アウトビルトジャパン自動車以外の建物用ガラス、フィルム、コーティングにおいては、かなり効率よく遮熱ができるようになってきているが、制約がある自動車ガラス用として商品化するのは相当に難しいのだ。
ブレインテック https://www.braintec.co.jp/ リーガルゴーストショップ https://www.braintec.co.jp/legal-ghost-shop/ カーメイクアートプロ https://www.art-pro.co.jp/
取材協力:株式会社ブレインテック、有限会社カーメイクアートプロText:アウトビルトジャパン
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