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【試乗】プジョーe-208とDS3クロスバックE-テンスはコンパクトEVの常識を覆す電費性能の高さが魅力だ

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【試乗】プジョーe-208とDS3クロスバックE-テンスはコンパクトEVの常識を覆す電費性能の高さが魅力だ

同グレード=同装備。グループPSAはICE(内燃機関)とピュアEVの垣根を、一気に乗り越えようとしている。ライフスタイルに合わせて選ぶパワートレーンとして電気モーターは今、ガソリンエンジンと同じ土俵に。スポーティとエレガント、個性のチョイスもまた悩ましく楽しい。(Motor Magazine2021年1月号より)

ICEとEVの垣根を取り払った「パワー オブ チョイス」コンセプト
プジョーをはじめシトロエンやDSなど、多くのブランドを展開するグループPSA。2020年7月に行われた新型プジョー208の国内発表会では、ガソリンターボエンジンを搭載するICE(内燃機関)仕様と、ピュアEVのe208を同時にお披露目した。

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とくに電動化をフィーチャーすることなく同列的に扱い、ユーザーの使い方や好みで動力源を選ぶ「パワー オブ チョイス」という姿勢を標榜している。「EVは特別ではなく、身近な存在だ」と静かに主張しているように思える。

エンジンとモーター、ガソリンタンクと大容量の蓄電池といったように、パワートレーンが異なればそれに伴う搭載物も違ってくる。にもかかわらず、スタイリングや居住性/実用性の共通化を可能にしたのは、グループSPAがB/Cセグメント用に新開発したCMP(コモンモジュラープラットホーム)が、電動化を前提に設計されていたからに他ならない。

E208では、電気モーターをパワーコントロールユニットとともにボンネット下に搭載し、フロントシート下、センタートンネル、そしてもともと燃料タンクがあったリアシート下にリチウムイオン電池を分散配置している。もちろんそれはかなりの重量物なので、多少の補強は必要だ。トーションビーム式リアサスペンションには、パナールロッドも追加されている。とはいえ、基本的にはICEと共通のCMPで電動化を成立させているのは見事だ。

運転の方法も、ICEモデルとまったく同じ。スタートスイッチでシステムを起動してもエンジンが目覚める音や振動は皆無だが、シフトレバーでレンジを選びアクセルペダルを踏み込めば実にスムーズに、するすると走り出す。加速感はとてもシャープだ。アクセルレスポンスが良く、実用域での速度制御をスムーズかつ正確に行える。80km/hあたりまでなら「ホットハッチ」と評してもいいほど元気いっぱい。しかも、それを静かな環境で楽しめるのだ。

一方、本来なら高速域ではやや頭打ち感が出てくるのも電気モーターの特質。だがe208はエモーショナルな気持ち良さにもこだわっているようで、少なくとも100km/hまでは適度な伸び感を味わわせてくれた。

ドライブモードは3種類減速フィールの強弱も選べる
ICEモデルと同様に、シフトレバー横のスイッチでドライブモードを選択することができる。もっともおとなしいエコモードでは、82ps/180Nm、ノーマルモードでは109ps/220Nmとモーターの出力そのものも変化する。今回はパフォーマンスを試すためフルパワーの136ps/260Nmを発生するスポーツモードで走る機会が多かったが、ノーマルモードでもレスポンスは良好。さすがにエコだと少し頼りないものの、エコランと割り切るなら納得できる性能レベルだ。

エネルギー回生時の減速フィールはとても自然。Dレンジからもう一段手前に引くとB(ブレーキ)レンジに入るが、アクセルペダルを戻した時の減速感はかなり強くなる。そのギャップはやや大きく、好みとしてはもう1段、マイルドな減速モードが欲しかった。停止まで含めた加減速をアクセルペダルの操作だけで行う、「1ペダル制御」には対応していない。

大容量バッテリーを積むe-208は、ICEモデルに対して車両重量が330kg0ほど重い。これがフットワークにどんな影響を与えているかが気になっていたが、乗り心地が固くなっているような印象はまったくなかった。どちらかと言えば重厚感がプラスされる感覚で、ロールが少なくフラットな姿勢を維持してくれる。

荒れた路面ではやや跳ね気味だが、それはICEEモデルでも共通。やや締まり気味にしてスポーティな味わいを強調する味付けは、最近のプジョー流だ。おかげでワインディングロードでの身のこなしは、小径ステアリングの操作感も含めてキビキビ、軽快だった。

ところで、この新しいプラットフォームを使ったBEVのシステムは、他ブランドでの水平展開が始まっている。今回、e-208とともに味わったDSクロスバックE-テンスもその一台だ。ちなみに「E-テンス」とは、DSブランドの電動化モデルに付けられるサブネームとなる。

DS3クロスバックE-テンスは全長、全幅、全幅のすべてで、カジュアルコンパクトなe-208よりひとまわり大きい。ホイールベースも20mmほど拡大されているが、SUVとしてはかなりコンパクトな部類に入る。

このクルマで注目すべきは、やはり凝りに凝った内外装だろう。Bピラー付け根の逆シャークフィン形状や、側面の大胆なキャラクターライン、特徴的な表情のDSマトリクスLEDビジョンと微妙な曲線のランニングライト、リトラクタブルドアハンドルなど、外観のデザイン性だけでも見どころ満載。さらにシートなどに本革をふんだんに使ったインテリアはもっと凄い。菱形を重ねたインストルメントパネルや「クルドパリ文様」のセンターコンソールなど、各部にきめ細かく優雅な装飾が施されている。

内外装ともにスポーティな仕立てとなるe-208も質感という面ではかなり頑張っていたが、プレミアムを標榜するDSはやはりレベルが違う。DSクロスバックE-テンスはコンパクトながら、実にエレガントな印象だ。

重厚感あふれる走り味乗り心地もマイルドだ
一方の走りだが、50kWhのバッテリー容量や、136ps/260Nmの電気モーターなど、BEVとしてのシステム構成はe-208とまったく同じ。ボディの違いで80kgほど重くなっており、これに伴ってJC08モードの走行距離は、やや短めな398kmと公表されている。けれども実際に走ってみれば、動力性能面では決定的な違いは感じなかった。スポーツモードでフルパワーを解放した時の加速やレスポンスは変わらず痛快だ。

静止状態からの走りだしでは、シャープな反応を見せるe-208より重厚感がある。だがそれは、プジョーよりソフトでストローク志向となるDS流の足まわりによるところが大きい。乗り心地も格段にしっとりしており、そのぶん、ステア操作に対する反応もマイルドだった。この穏やかな乗り味は、高い静粛性も含めてBEVと相性が良い、と感じられた。

最後に、両車で実際にドライブする時に気になる充電と「電費」の印象に関してまとめておこう。車載されているケーブルで繋ぐコンセントタイプの3kW普通充電だと、フル充電まで約18時間、50km走行分の充電には3時間ほどかかる。これが6kWhのウォールボックスタイプになると約9時間と約1.5時間にまで短縮される。急速充電に関しては50kWhのCHAdeMO1.0に対応していて、80%まで充電するのに約50分ほどで済むという。

今回のロードテストでは、ウォールボックスタイプの普通充電器が2基ある沼津のビジネスホテルに投宿して、夜間に充電しておいた。朝の出発時にシステムを起動させるとe-208は320km、DS3クロスバックE-テンスは260kmの走行可能距離を、それぞれ表示していた。

そこから急峻な山道を駆け上がって箱根を目指したが、登り坂は常にフルロードとなるため充電量がみるみる減っていく。実際に走ったのは30kmほどだったが、三国峠に到着した時の走行可能距離は150kmと170kmにまでそれぞれ減っていた。路面の勾配によって距離が激しく左右されるのはBEVの常とはいえ、この減り方だけ見れば少し不安を感じる。

まだ撮影を残していたので、どこかで充電しなければ東京まで100kmほど走りきるのは難しいかと思われた。だが、坂道が下りに転じると、その不安は文字どおり「みるみる」解消されていった。おそらく効率的なエネルギー回生技術のおかげもあるのだろう。走行可能距離が想像以上に回復していくのだ。

下り坂で効率よく回生高速道路でも電費は良好
アネスト岩田ターンパイク箱根をレンジで下り切ったところでは、走行可能距離はe-208が250kmまで復活。撮影のための移動距離を含めると、実質60km近い走行で約70kmぶんの電気を消費したと考えられる。ガソリン車だってアップダウンの激しい峠道での燃費が悪化しがちなことを考えれば、感覚的にも実質的にも、エネルギーとしての消費率はほとんど変わらない。

その後の高速巡航も電費はなかなか優れていた。ターンパイク箱根の小田原料金所から東名の港北PAまでは約60kmほどだが、きっちり190kmの走行可能距離が残されていた。なるほど、1回の充電でこれだけ走ってくれれば確かに実用性に不満も不安も感じないですむ。もちろん急速充電を効果的かつ計画的に活用すれば、走行距離に関する不安はほぼ解消されるだろう。

このクラスのBEVはともすればシティコミューター的なイメージが強いが、家族でのドライブの足としてもICE仕様にけっしてひけをとるものではない。「パワー オ ブチョイス」の時代は、かなり面白いことになりそうだ。(文:石川芳雄)

■プジョー e-208GTライン 主要諸元
●全長×全幅×全高=4095×1745×1465mm
●ホイールベース=2540mm
●車両重量=1500kg
●モーター最高出力=136ps/5500rpm
●モーター最大トルク=260Nm/300-3674rpm
●駆動方式=FF
●車両価格(税込)=423万円

■DS3クロスバック E-テンス グランシック 主要諸元
●全長×全幅×全高=4120×1790×1550mm
●ホイールベース=2560mm●車両重量=1580kg
●モーター最高出力=136ps/5500rpm
●モーター最大トルク=260Nm/300-3674rpm
●駆動方式=FF
●車両価格(税込)=534万円

[ アルバム : プジョー e-208GTライン/DS3クロスバック E-テンス グランシック はオリジナルサイトでご覧ください ]

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