東名高速道路屈指の渋滞の名所となっている大和トンネル。なぜ大和トンネル付近は渋滞が発生しやすいのか、2021年に完了した拡幅工事で渋滞はどう変化したのか? さらに渋滞軽減に効果がある、適正な車間距離を保つ走り方についてもご紹介する。
文/高根英幸
アイキャッチ写真/kichigin19 – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock、ベストカーWeb編集部
なぜ渋滞の名所「大和トンネル」混む? 渋滞解消のカギが「車間距離」って本当?
■高速道路の渋滞の種類は3つ! どのようなメカニズムなのか?
高速道路では交通量が増加すると、道路の構造や条件など環境面で渋滞しやすい箇所から渋滞が発生する(jpimage – stock.adobe.com)
高速道路の渋滞には大きく分けて3つの種類がある。1つは交通事故による車線減少や見物渋滞が原因の「事故渋滞」。2つめは道路工事による車線減少が原因の「工事渋滞」。3つめが交通量が多いことが原因の「自然渋滞」だ。
大和トンネル付近での渋滞は交通事故が起きたときだけでなく、道路工事しているときだけでもないから、自然渋滞であることは明白だ。ところがこの自然渋滞にも、実はさまざま様々なメカニズムが作用している。
そもそも東名高速道路の横浜町田IC~海老名JCT間は、1日の通行量が14万台にも上り、高速道路としては日本一交通量が多い区間と言われている。大和トンネルはその区間内にあるから、当然渋滞しやすい。
しかし自然渋滞の因子は交通量の増加だけではない。それなら同じ交通量の道路はすべてがノロノロの渋滞になるハズなのだ。交通量が増加すると渋滞しやすい箇所から渋滞することになるのである。
■渋滞しやすい道路とはどのような道路か?
山の中を通過するトンネルは、中央付近に向かって上り坂になっているので、渋滞が発生しやすい(shibadog – stock.adobe.com)
渋滞しやすい道路の構造としてよく言われるのが、サグと上り坂付近だ。サグとは下り坂から上り坂に変わるところで、下り坂ではアクセル開度を少なめにしても速度が維持できるが、それから上り坂になっても速度の低下に気が付かないドライバーも多く、それによって自然渋滞が発生する。
またインターチェンジやジャンクションなど合流地点も交通集中と速度が低下するため、渋滞が発生しやすい。この合流付近では交通事故も起こりやすいため、なおさら渋滞が起こりやすい。
それとトンネル付近も渋滞が発生しやすいポイントだ。しかもこれにも理由がいくつか存在する。山の中を通過するトンネルは、中央付近をピークに道路はわずかに山なりになっている。
これにより中央に地下水などが貯まらないようにされているのだが、海底トンネルなど地上より低いトンネルは構造上、入り口から下り坂で中央付近が最も低く、出口に向けて上り坂になっている。つまりサグになっているので、さらに渋滞が発生しやすいのだ。
■大和トンネルがなぜ渋滞の名所に?
東名高速道路屈指の渋滞の名所となっている大和トンネル。上り線の場合、上り勾配とトンネルによる視覚効果でアクセルを緩めてしまうドライバーが多い
大和トンネルは下り線は下り坂なのだが、その前が上り坂になっている。これによりトンネルでの速度低下と上り坂での速度低下が重なり、渋滞が発生する。
しかし最近では通常は朝の通勤時間に少し渋滞する程度だ。それは後で述べる渋滞緩和策も効いているのだろうが、その前の横浜町田ICが渋滞することで、ボトルネックとなっていることも要因だろう。
下り線はよほど交通量が多くなければ渋滞することはないが、上り線は上り坂で速度が低下しやすいだけでなく、もう一つトンネルならではの渋滞発生要素が拍車をかける。それは暗く狭いところに入っていくという視覚効果によるもので、無意識にアクセルを戻してしまうドライバーも多いのだ。
大和トンネルはこのようにクルマが多く、上り坂、トンネルという三重苦の区間だから、渋滞の名所となってしまったのである。しかし、NEXCO中日本もそんな状態を黙って眺めていた訳ではなく、これまでに何度も渋滞を緩和させる対策をとってきた。
大和トンネルにおいては、東名の3車線化に続いて2021年には付加車線として合流用の加速レーンが延長されて事実上4車線化されている。これによる効果は大きくかなり渋滞は減ったが、依然として夕方や週末、連休などでは渋滞は起こってしまっている。
また高速道路においては自然渋滞の軽減には近年、さまざま様々な工夫が施されている。ドライバーは運転の情報の9割を視覚から得ていると言われる。そこで視覚から速度低下を防ぐ対策が施されているのだ。
看板により速度低下への注意喚起をしたり、LEDランプを点滅させたり矢印のパネルを速度を考慮した間隔で配置して、そのリズムで前方へと向かう意識を高めるなどがよく見られるものだ。
■ドライバーの運転次第で渋滞は大幅に削減できる!
これまで渋滞は交通量の増大のほか道路の構造や条件など環境面が原因と述べてきたが、実は適正な車間距離を保っていないドライバーが多いことが渋滞の一番の原因だ。
サグや上り坂、トンネルで前走車の速度が低下しても、車間距離をキチンと保持していれば、前走車よりも速度を落とさず、車間距離を一時的に縮めることで通過することができるのである。
ところが車間距離が短いと、「前走車の車速が低下したらまったく同じ分だけ減速する」、なんて芸当は一般のドライバーにはとても無理だから、前走車よりさらに少し車速が落ちる。それを繰り返していくと最後にはノロノロ走行の渋滞になってしまうのだ。
その証拠に東京大学先端科学技術センターの西成活裕教授の研究室はJAF、警察庁が2009年に渋滞を解消させる実証実験を行った。これはクルマ8台を使い、中央高速の渋滞の名所である小仏トンネルの渋滞で行われた。
渋滞箇所を通過する際に車間距離を広く取り、渋滞の最後尾に追いつかないように速度を落として2車線を4台ずつ走行させた結果、後ろに行くほど速度が上昇し、実験車両が通過した後にやってきた車両は渋滞前と同じ80km/hで通過できた。つまり見事に渋滞を吸収して解消させたのである。
■ブレーキ踏む回数を減らす? 車間距離をうまく保つ秘訣とは
ブレーキを踏む必要がないように車間距離をキチンと保持することが、渋滞の緩和につながる(Imaging L – stock.adobe.com)
手前味噌だが、筆者は箱根周辺での取材の際に東名高速を利用する場合、復路の東名区間では大体3回から5回程度しかブレーキペダルを踏むことがない。車間距離を適切に保っていれば、前走車が減速して近付いてもアクセルを戻すだけで空気抵抗により速度が落ちるため、ブレーキを踏む必要がないからだ。
ブレーキを踏むということは強制的に速度を落とすことになり、再度加速するためには燃料を多く使うことになる。
つまり車間距離をしっかりと取ることは渋滞を起こしにくくする効果があるだけでなく、結果として燃費は向上し、ブレーキパッドなども長寿命になるなど維持費の軽減にも貢献することになるのだ。車間距離をキチンと保っているだけで、こうした効果が望めるのである。
合流部分も車間距離を空けて一台ずつファスナー合流すれば、スムーズに流れて渋滞は少なくなる。しかし実際は、皆が先を焦って車間距離を詰めてしまうことで、合流時にはギリギリの車間距離で隣のクルマとの鍔迫り合いのように間隔を見極めながら合流するため速度が低下して渋滞してしまうのだ。
盆暮の帰省ラッシュでは、こうした渋滞の名所以外にも幅広く広範囲で渋滞は発生する。それは交通量が増えることが原因なので、ある程度は仕方ない部分もあるが、車間距離を保つだけで渋滞が減り時間的損失と燃費低下による金銭的損失が軽減されることを多くのドライバーに知って欲しいと思うのだ。
■渋滞はいつ頃発生しやすい? 別のルートも検討して旅行を楽しもう!
東名高速道路はバイパス(?)である新東名の建設に加え、3車線化でかなり渋滞が緩和されたが、それでも新東名は全区間ではないし、交通量の多い時期には目立った渋滞が発生している。
日本の大動脈である東名高速は毎日渋滞が発生している。上り線の大和トンネルで言えば夕方は毎日のように渋滞しているが、それでも酷い渋滞の日と、そうでもない日は当然ある。
連休前ともなれば、納品を急ぐ物流関係や製造メーカー、卸問屋の営業車が高速道路を利用することになり、普段より交通量は増える。そして行楽時期の連休では家族連れなどがミニバンやSUVでカーナビ頼りのドライブを楽しむことで渋滞を増やす。
渋滞は自動運転によって解決できる問題かもしれないが、パーソナルカーに完全自動運転が実現されるのは、かなり先の話だ。
自然渋滞に関しては、交通集中が大きな原因だから、渋滞しそうな期間や時間帯は通行を避けて、休憩や観光、別ルートを検討するなどの対策をした方が自分にも周りにも良いことは覚えておきたい。
カーナビが高速道路を案内しても、渋滞しているならあえて途中で一般道に降りて、買い物や食事を楽しむのも手だ。
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みんなのコメント
平日は自分の運転速度をわかって運転してるから
車線が綺麗に別れる。
休日は、とにかくみんな追越し車線に集まる。
それも下手な人が、車の流れに乗れなくて乱してる。