首都高速道路株式会社は、50年以上経過する路線の割合が2040年には65%に達する見込みとし、現在も日々点検、補修、補強などにより安全性を確保していますが、構造物の“使用限界を迎える前の性能回復”が必須とし、抜本的な対策が検討されています。なかでも首都高初の海底トンネルとなる1号羽田線の「羽田トンネル」では、2024年の開始を目標に、その方法を含め大規模な更新(造り替え)が議論されています。
1964年(昭和39年)10月の東京オリンピック開催にあわせて建設された全長300mの羽田トンネルは、羽田空港の陸側沿岸に走る1号羽田線の一部で、国内の海底トンネル(道路)としては関門国道トンネルに次いで2番目に古いトンネルです。構造は開削、ケーソン、沈埋(ちんまい)工法による3つの躯体が連続しており、その一部は東京モノレールとの一体構造です。
2022年3月23日に報道陣向けに現地公開された開削部のダクト(本線の天井裏、鉄筋コンクリートの中床板で仕切られた上部空間)では、海底部に面する躯体の接続部、目地(継ぎ目)からの漏水があり、多い日で1分間に10リットルもの漏れ出る海水を、透明の排水樋で受け止めていました。供用からすでに50年以上が経過し、構造目地の止水性能が低下、海水を含む漏水が頻繁に発生しているとのこと。
同現場ではほかにも、塩分を含む海水により、躯体内側の鉄筋腐食やコンクリートはく離、ひび割れ箇所も多く見られ、現在もその補修は続けられていると言います。
ダクト部分のみならず、クルマやバイクも走る本線にも同様の損傷があり、漏水に伴う緊急の車線規制回数は2016年度で4カ月に1回だったところ、2021年度では1カ月に1回と約4倍に増加。トンネル内に水が噴き出し、ただちに通行止めにする突発的な事象が増え、もはや補修や補強では構造健全性は維持できず、抜本的な対策が必要となっています。
大規模更新は当然ながら交通に影響するものであり、1日10万台が通行する羽田トンネルでも工事中の長期通行止めに備えたう回路の確保も重要です。その候補のなかには羽田トンネルの海上に並行して架かる「羽田可動橋」を上り線として利用し、羽田トンネルを下り線として片側ずつ通行止めにしながら工事を進める案も含まれています。
羽田可動橋は湾岸線の開通により、渋滞対策の役目を終えて使われていない1車線分の可動式の橋ですが、並行して新たな橋を架け、工事期間中のう回路として、さらには恒久的な利用とすれば、実質本線の拡幅となり、トンネル内の上下線でのサグの解消、渋滞の緩和にもつながるのでは、という意味もあります(東名高速道路の下り「大井松田IC」付近から「左ルート」と「右ルート」となるようなもの)。
大規模更新に合わせ、従来の課題のひとつである渋滞の解決に向けた取り組みも含めた議論が進めれています。
報道陣が足を踏み入れたダクト空間は、かつてトンネル内に滞留する自動車の排気ガスを巨大なファンによって放出するための通路としての役割を担っていましたが、1994年に湾岸線が羽田空港を貫き、「東海JCT」から「大黒JCT」まで接続したことで1号羽田線の交通量が分散され、また自動車の環境性能の向上によって排気ガス自体がクリーンになってきたことから、巨大なファンは常時稼働を停止しています。
しかしダクト空間も巨大な排気用ファンも、大規模更新を機に取り除かれること無く、今後もトンネル内での火災発生時の排煙設備として維持されます。
常時稼働は停止しているファンですが、万が一の際には確実に稼働するよう、現在でも現場に設置された3基のうち1基ずつ、夜中に試験運転を行なっているそうです。
羽田トンネルは全長300mとけして長くはない部類ですが、「トンネルにおいてはとにかく火災発生が一大事」とするため、かつての設備は今後、より重要な役割を担って維持、管理されるそうです。
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みんなのコメント
ダメだになってから着手では遅すぎます。
地上の構造物はトンネルを埋め固める事で維持できるのでは。