現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > マツダCX-60のシャシー&サスペンションを見る「骨太で上質で立派に見えるSUVではなく、きちんと運転が楽しめるクルマに仕上がっている」

ここから本文です

マツダCX-60のシャシー&サスペンションを見る「骨太で上質で立派に見えるSUVではなく、きちんと運転が楽しめるクルマに仕上がっている」

掲載 73
マツダCX-60のシャシー&サスペンションを見る「骨太で上質で立派に見えるSUVではなく、きちんと運転が楽しめるクルマに仕上がっている」

ロジカルに組み立てたパワートレーンを縦置きする

第二東名を120km/hで巡航するCX-60マツダのミッドサイズSUV、CX-60はパワートレーン縦置きレイアウトを採用した。車重が1800kgを超えるクルマを気持ち良く走らせようとした場合、すでにある2.2L直列4気筒ディーゼルのSKYACTIV-D 2.2では力不足で、3.3Lの排気量が必要だとの判断に至ったからだ。気持ち良く走らせるには550Nmの最大トルクが必要で、SKYACTIV-D 2.2(最高出力147kW、最大トルク450Nm)で適用しているのと同種の技術をスライドして開発すれば、計算上は2.7Lの排気量があれば充分ということになる。2.7Lなら4気筒でも成立しそうだ。

マツダCX-60 驚異的な燃費を叩き出す直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドシステムは、豪快なサウンドと加速がいい 引き換えにやや“ディーゼルらしい”

だがそれでは燃費と排ガス性能を満足させることができないため、マツダは3.3Lの排気量を選択することにした。プラス600ccの排気量(=吸気量)を燃費の向上と排ガス(とくにNOx)のクリーン化に使うためである。3.3Lとなると4気筒というわけにはいかず、6気筒になる。V6にしてスモール商品群と呼ぶ既存のシャシーに載せる選択肢がないでもないが、衝突安全性や車両運動性能の観点からは望ましくない。

マツダCX-60 驚異的な燃費を叩き出す直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドシステムは、豪快なサウンドと加速がいい 引き換えにやや“ディーゼルらしい”直6ディーゼル+48Vマイルドハイブリッドシステムであるe-SKYACTIV Dを搭載するモデルから販売がスタートしたマツダCX-60。いよいよ公道で試せるようになった。さまざまな…motor-fan.jpCX-60の後輪駆動ベースのAWDコンセプトは、後輪駆動の特徴であるニューとなるな旋回性に加えて、AWDならではの安定性をバランスさせること。パッケージングを考えて、エンジンを低く置くための工夫やトランスミッションを可能な限りコンパクトにする工夫が見られる。マツダが送り出すミッドサイズSUVが勝負するカテゴリーの競合を見渡しても、縦置きプラットフォームにして気持ち良く走らせる性能を担保したほうが、商品性の観点からも望ましい。というような検討からマツダは、CX-60をはじめとするラージ商品群にパワートレーン縦置きレイアウトを採用することにした。排気量3.3Lの直列6気筒ディーゼルエンジンを縦置きに搭載し、その後方には、やはり新開発の8速ATを配置する。プロペラシャフトはリヤに伸び、デフで左右に分配して後輪を駆動する。結果、パワートレーン横置きレイアウトに比べて、前後重量配分は適正化される。

発進デバイスに(トルクコンバーターではなく)湿式多板クラッチを採用した8速ATの、クラッチと変速機構の間に最高出力12kW、最大トルク153Nmのモーターを挟んだハイブリッドシステムを組み合わせたXD-HYBRIDは、4WDのみの設定だ。雪上など、滑りやすい路面での発進性を確保する意味もあるが、どちらかというと、4輪の駆動力配分を最適化し、運動性能を高めるための設定だ。マツダの言葉を借りれば、「後輪駆動の特徴であるニュートラルな旋回性に加えて、AWDならではの安定性をバランスさせ、より高次元な“人馬一体”感を提供する」のが狙い、ということになる。

リヤにE型マルチリンクでなくフルマルチリンクを採用した理由

フロントサスペンション | ダブルウィッシュボーン式

フロントサスペンションはダブルウィッシュボーン式。複雑なマルチリンクではなく車体の動きをシンプルで滑らかにし、クルマの状態を予見できるようにした。ステアリング・タイロッドは前引きのレイアウト。パワートレーン縦置きレイアウトの採用に合わせ、シャシーとボディ骨格は一新。サスペンションは新設計した。スモール商品群・横置きレイアウトのCX-5はフロントにストラット式、リヤにE型マルチリンク式のサスペンションを採用している。ラージ商品群・縦置きレイアウトのCX-60はフロントがダブルウィッシュボーン式、リヤはフルマルチリンク式だ。E型マルチとフルマルチの決定的な違いはアッパーリンクの数で、E型は1本、フルマルチは2本となる。

リヤサスペンション フルマルチリンク式

リヤサスペンションは、マルチリンク式。ロードスターの設計思想をベースにしているという。 左が側面視、右が上面視リンクが1本少ないぶんだけコストと重量面で有利になるが、E型マルチではマツダがやりたかったことが実現できないため、CX-60ではフルマルチリンクを採用した。やりたかったこととは、ピッチングセンターをクルマの後ろに追い出すことと、前後作動軸(ストロークする方向)をそろえることだ。

ピッチングセンターの位置は前後サスペンションのリンクやアーム類の配置で決まる。フロントがストラット式、リヤがE型マルチリンクの場合の従来型(一例としてCX-5)は前後の作動軸が揃っておらず、かつ、ピッチングセンターがリヤタイヤの前方にあった。そのため、動きがぶれるのに加え、乗員はおじぎをしたりのけぞったりするような動きが出る方向だった。

じゃあそれで不愉快な乗り物だったかというとそんなことはなく(立派に現役だ)、与えられた条件のなかで快適な走りを実現している。CX-60では後輪駆動ベースの車両の走りを、より理想に近づけようとした。ストロークの軸を前後で揃えたのに加え、ピッチングセンターを大きく後ろに飛ばしたため、ピッチ挙動(おじぎ~のけぞり)ではなく、バウンス挙動(単純な上下動)になる。

さらに、CX-60では転舵した際に生じるジャッキアップによって操舵感のリニアリティが変化するのを嫌い、フロントのキャスターを立てている。背反はSAT(セルフアライニングトルク:直進状態に戻ろうとする力)が弱くなって直進性に難が生じることだが、そこはリヤの剛性を上げて確保した。ステアリングレシオはスモール商品群に対してスローにし、素直に向きを変え、微小にコントロールしてトレースできる(入り込みすぎない)感覚を大事にした。転舵した際の動きの作り込みに関しては、前後サスペンションやステアリング単体の設計だけでなく、ステアリング~フロントサスペンション~リヤサスペンションと伝わっていく力の伝達に連続性を持たせることで、狙いの実現を図った(変曲点が出ないようにした)。

市街地~高速道路~山岳路を走らせてみた。速度域を問わず、フラットライド感が高いのが印象的だ。背の高いSUVでは、常にヒョコヒョコと上下左右前後に揺れて落ち着かない動きが出るクルマもあるが、CX-60はビシッと安定している。道幅のそう広くない山道でも狙ったラインをトレースしやすいし、そのときの姿勢がいい。フロントがまくり上がったり、過度にロールして不安になる感覚はない。直進時と同様に、動きが落ち着いている。ヒョコヒョコしたり、揺り返したりといった落ち着かない動きとは無縁だ。

ロードスターで初採用されたKPC。CX-60では、開発当初からそれを入れ込んだ作り込みが行なわれた。旋回時の安定した姿勢は、ロードスターに次いで採用されたKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)の効果も大きいのだろう。リヤサスペンションのアンチリフト特性を活用し、横Gが強めに発生するようなコーナリングの際にリヤの内輪側をわずかに制動することで、ロールを抑え、姿勢を安定化させる技術である。試乗時はたまたまCX-60の後ろについて山道を走る機会に遭遇したが、後続車から眺めるCX-60の旋回姿勢はほれぼれするほどにカッコ良かった。

パッチを当てて補修した凸凹が連続していたり、アスファルトが剥がれて凹みがあったりするところを通過する際などで「硬いなぁ」と感じることがあった。静寂に満たされた図書館では小さな咳払いですら目立ってしまうようなもので、フラット感が強く、しなやかな動きに終始するCX-60では、ちょっとした尖った動きが目立ってしまうのかもしれない。もちろん、それすらうまく丸め込んでくれたほうがありがたいのだが。

6気筒エンジンを選択したのも理詰めなら、パワートレーン縦置きレイアウトを選択したのも理詰め、フロントにダブルウィッシュボーン式、リヤにフルマルチリンク式を採用したのも理詰めで、要は、脳とクルマが直結して人馬一体感が味わえるクルマにしたかった。CX-60はただ、骨太で上質で立派に見えるSUVではなく、きちんと、運転が楽しめるクルマになっている。

フロントのサスペンションタワーは板金ではなくアルミ鋳造。剛性が高そうだ。タイヤサイズは235/50R20。ブリヂストン ALENZAを履く
CX-60契約で実感!中古車価格高騰につき、下取り価格がすごいことになってます!実は今が新車買い換えのチャンスだった【筆者体験レポート】半導体不足や新型コロナウイルスによるロックダウンの影響で「新車の納期が長い」というのは皆さんもご存知かと思います。普通であれば、今は新車を買うのに適してたタイ…motor-fan.jpマツダCX-60 XD-HYBRIDマツダCX-60 XD-HYBRID全長×全幅×全高:4840mm×1890mm×1685mmホイールベース:2870mm車重:1910kgサスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式 駆動方式:4WDエンジン形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ型式:T3-VPTS型(e-SKYACTIV D3.3)排気量:3283ccボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm圧縮比:15.2最高出力:254ps(187kW)/3750pm最大トルク:550Nm/1500-2400rpm燃料供給:DI燃料:軽油燃料タンク:58ℓモーターMR46型永久磁石式同期モーター 最高出力:12kW/900rpm 最大トルク:153Nm/200rpmトランスミッション:トルクコンバーターレス8速AT燃費:WLTCモード 21.0km/ℓ 市街地モード18.1km/ℓ 郊外モード:21.4km/ℓ 高速道路:22.5km/ℓ車両本体価格:505万4500円

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

「中古車を買いに来たら『支払総額表示』で売ってくれませんでした、詐欺ですよね?」 「別途費用が必要」と言われることも…! 苦情絶えないトラブル、どんな内容?
「中古車を買いに来たら『支払総額表示』で売ってくれませんでした、詐欺ですよね?」 「別途費用が必要」と言われることも…! 苦情絶えないトラブル、どんな内容?
くるまのニュース
どんな違いがあるのか!? 通常モデルとは違う仕様が用意されている中型バイク3選
どんな違いがあるのか!? 通常モデルとは違う仕様が用意されている中型バイク3選
バイクのニュース
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
レスポンス
写真で見るニューモデル 光岡「M55ゼロエディション」
写真で見るニューモデル 光岡「M55ゼロエディション」
日刊自動車新聞
旧ビッグモーター、車両の修理不正もビッグに8万件、補償総額数十億円も[新聞ウォッチ]
旧ビッグモーター、車両の修理不正もビッグに8万件、補償総額数十億円も[新聞ウォッチ]
レスポンス
フェルスタッペンとのタイトル争いは“敗北濃厚”も……今季の戦いで自信深めたノリス「優勝争いに必要なものを持っていると言えるようになった」
フェルスタッペンとのタイトル争いは“敗北濃厚”も……今季の戦いで自信深めたノリス「優勝争いに必要なものを持っていると言えるようになった」
motorsport.com 日本版
フェラーリ『ローマ』後継の新型スーパーカー、車名は『アマルフィ』が最有力!
フェラーリ『ローマ』後継の新型スーパーカー、車名は『アマルフィ』が最有力!
レスポンス
注目が集まる角田裕毅の2025年シート「僕はレッドブルの一員なのでここにいます。ホンダとは話をしていません」
注目が集まる角田裕毅の2025年シート「僕はレッドブルの一員なのでここにいます。ホンダとは話をしていません」
motorsport.com 日本版
次の「黄バイ」はBMW? 首都高専用パトロールバイク「F900XR」がカッコ良すぎる!
次の「黄バイ」はBMW? 首都高専用パトロールバイク「F900XR」がカッコ良すぎる!
くるくら
まさかの「RAV4“軽トラ”」登場!? ド迫力の“真っ黒顔”がスゴすぎる! オフロード感強調の「SPIEGELカスタム」どんなモデル?
まさかの「RAV4“軽トラ”」登場!? ド迫力の“真っ黒顔”がスゴすぎる! オフロード感強調の「SPIEGELカスタム」どんなモデル?
くるまのニュース
これはクセスゴ!!  オーナー自作多数のホンダ「CT125・ハンターカブ」カスタム発見!!
これはクセスゴ!! オーナー自作多数のホンダ「CT125・ハンターカブ」カスタム発見!!
バイクのニュース
[15秒でわかる]アキュラ『ADX』新型…内外装はスポーティかつ高級な印象に
[15秒でわかる]アキュラ『ADX』新型…内外装はスポーティかつ高級な印象に
レスポンス
アルピーヌは東京オートサロン2025で3台のA110を披露
アルピーヌは東京オートサロン2025で3台のA110を披露
カー・アンド・ドライバー
WRCラリージャパン2024が開幕、4日間の熱い戦い トヨタ逆転優勝なるか
WRCラリージャパン2024が開幕、4日間の熱い戦い トヨタ逆転優勝なるか
日刊自動車新聞
【スクープ!】AMG製電動スーパーSUVデビュー間近!メルセデスAMGが新型電動SUVを開発中!
【スクープ!】AMG製電動スーパーSUVデビュー間近!メルセデスAMGが新型電動SUVを開発中!
AutoBild Japan
「マジで!?」ホコリまみれの“スクラップ車”が14億5000万円で落札!? 50年ぶりに見つかった1956年製メルセデスの“驚きの価値”とは?
「マジで!?」ホコリまみれの“スクラップ車”が14億5000万円で落札!? 50年ぶりに見つかった1956年製メルセデスの“驚きの価値”とは?
VAGUE
ミツオカ「M55」発売決定! 2025年生産販売台数は100台で、2024年11月22日から受付開始
ミツオカ「M55」発売決定! 2025年生産販売台数は100台で、2024年11月22日から受付開始
Webモーターマガジン
【10月の新車販売分析】受注停止車種が多くともトヨタ1強にかわりなし! 軽乗用車はホンダとダイハツの2位争いが熾烈に!!
【10月の新車販売分析】受注停止車種が多くともトヨタ1強にかわりなし! 軽乗用車はホンダとダイハツの2位争いが熾烈に!!
WEB CARTOP

みんなのコメント

73件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村