正真正銘の2シータースポーツ
text:Simon Davis(サイモン・デイビス)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ジャガーFタイプが登場したのは2013年だった。英国として、自負するべきブランドから生まれたFタイプ。正真正銘の2シーター・スポーツという存在は、永遠の憧れだ。
ジャガーには長年に渡ってXKというスポーツカーをラインナップしてきたが、Fタイプは代替わり以上の意味が込められていた。ジャガーを創業したウィリアム・ライオンズが生み出した、伝説的なEタイプの後継車であるということを、その名前が明示している。
英国らしくスーパーチャージャーを搭載し、ジャガーとしての成功を狙っていた。ポルシェが生んだ強敵、911と勝負を挑むことを目的としていた。正直、Fタイプの事前の触れ込みは、少し過大評価気味だったようだ。
登場から月日は過ぎ2020年。ジャガーFタイプのようなドライバーズカーたちが、控えめな中身へと推移していることに、気持ちが動かさざるを得ない。クルマ全体に変化の波が及んでいる。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンだけでなく、ハイブリッドを搭載したクルマでさえ、前倒しして2040年までに新車販売を禁止すると英国政府からの発表があった。ご存知の読者もいるだろう。
2035年頃が1つの潮目になると思われる。仮に内燃機関への課税制度が変化し、経済的なメリットがさらに薄くなれば、EV化の流れはより早く来るかもしれない。大幅なフェイスリフトを受けたFタイプには、まだ流れが及ばなかったようだ。
いましか味わえない575psのFタイプ
環境問題を考えれば、EV化は避けることができない。内燃エンジンの消滅は、世の中のエンスージァストにとって、悲しい世界の訪れを意味する可能性もある。
Fタイプのようなモデルが存在できる残り時間は、少ないことは明らか。最新Fタイプのスペックを知れば、今しか味わえない内容だということが見えてくる。
エントリーグレードに積まれるのは、300psの2.0L 4気筒エンジン。クーペのスターティング・プライスは5万4060ポンド(773万円)で、BMW M2コンペティションやアルピーヌA110やポルシェ718ケイマンなどと直接のライバル関係にある。もちろん、最もエキゾチックなユニットではない。
それでも2.0L 4気筒という存在は、Fタイプにとって重要。ドライバーからの人気も高く、環境負荷も比較的少ないおかげで、V8エンジンの存続をジャガーに決断させることができたのだ。
ジャガー製の5.0LスーパーチャージドV8エンジンは、従来までは6万9990ポンド(1000万円)の価格設定で、450psと59.0kg-mを発生させていた。欧州市場などではスーパーチャージドV6エンジンは、ラインナップから置き換わっている。
ジャガーとのエンジニアと会った時、後輪駆動の450psエンジンを積んだクーペが、Fタイプのスイートスポットだと話していた。おそらく正しいのだろうけれど、筆者はまだ試乗していないから、彼の意見に留まるけれど。
駆動系も足回りも大幅に手直し
前置きが長くなってしまった。今回、AUTOCARが快晴のポルトガルで試乗を許されたFタイプもV8エンジンを搭載しているが、別仕立てのものだった。トップグレードとなる、4輪駆動のP575と呼ばれるFタイプ Rだ。
英国ではクーペが9万7280ポンド(1391万円)、コンバーチブルが10万2370ポンド(1463万円)という価格が付いている。決して安い金額ではないが、ジャガーが開発資金をつぎ込んで完成させたことは伝わってくる。
ベースとなるのは、古いFタイプ SVRと同じV8エンジンで、575psと71.2kg-mを獲得。電動パワーステアリングの設定にも大幅に手を加えている。8速ATはZF社製となり、ジャガーXE SV プロジェクト8の開発で得た知見を導入して、改良が施されている。
サスペンションも大幅に見直された。タイヤはフロントが265/35、リアが305/30という幅広のピレリPゼロを履く。専用開発されたもので、幅は従来から10mm広がっている。
これらが融合し、爆発的な直線加速と、スポーツカーらしい操縦性と安定性を獲得した。一方で、長距離移動を安楽にこなすグランドツアラー的要素は少し薄まった。
乗り心地は非常に優れている。価格的に近似する、ポルシェ911 992型カレラ4Sよりも柔軟で当たりが柔らかい。
コーナーをいくつか曲がると、ポルシェが備えているコーナリングバランスと素直な操縦性には及んでいないことがわかる。しかし、ドライバーを陶酔させるFタイプの走りに、心は奪われるだろう。
5.0Lスーパーチャージャーの腕力と個性
ステアリングホイールの重み付けも素晴らしく、操舵感も直感的。切り始めの反応が鋭くなり、ノーズの機敏な応答につなげている。
アダプティブダンパーの設定を引き締めても、車重は1743kgもあり、コーナーリング時にはある程度のボディロールを許す。ロールの発生は自然で、完全に制御下におかれた印象がある。
4輪駆動の生む強大なトラクションがそこへ加わり、ワインディングを激しく攻め立ても、ドライバーとFタイプとの信頼関係は揺るがない。もちろん、カーブの途中でパワーを掛けすぎればリアタイヤはむずがり、振動が出ることもある。手加減は必要だ。
5.0LスーパーチャージドV8エンジンが生み出す、腕力と個性は凄まじい。このFタイプの走りを決定づけるユニットだといえる。もちろん、乗り心地や操縦性に良くない影を落とすものではない。
スロットルレスポンスは即時的だが、本領が発揮されるのは3000rpmを過ぎてから。線形的に伸びる加速と、爆発するようなサウンドトラックが重なる。その躍動感は、0-100km/h加速3.7秒に相応しい。
フルスロットルでシフトアップすれば、背中を強く蹴り上げるような振動が伝わる。ATのギア比は、一般道を素早く走らせる前提で、決められているように感じる。
2速で目一杯引っ張れば、104km/hに届く。一方でリラックスして変速を重ねれば、悪くないエネルギー効率も得られる。
思わず欲しいと思わせるV8エンジン
インテリアのデザインやレイアウトには大きな変更はないものの、操縦性や居心地はいい。素晴らしいレザーシートはサポート性も良好。それでも圧倒的に洗練されたポルシェ911には及ばない。
12.3インチのモニターが収まるメーターパネルは、グラフィックの面白みには欠けても、クリアで視認性も高い。10.0インチのインフォテインメント・システムは、アップル・カープレイとアンドロイド・オートが標準対応となった。標準のOSは使いにくいから、とても有効だと思う。
ボディデザインの変化への意見はあるかもしれないが、ジャガーFタイプは強い刺激を与えてくれる、好感触のスポーツカーに変わりはない。最新の992型ほど、技術的にも純粋な応答性でも優れていないとしても、V8エンジンが放つ鮮烈な個性には高い訴求力がある。
教養のない俗物的な人間だと思われても構わない。筆者は欲しいと感じる。ジャガーFタイプ P575のようなクルマを作れる時間は、残り少ないことは確かなのだ。
ジャガーFタイプ P575 AWD Rのスペック
価格:9万7280ポンド(1391万円)
全長:4482mm
全幅:1923mm
全高:1310mm
最高速度:299km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:9.3km/L
CO2排出量:-
乾燥重量:1743kg
パワートレイン:V型8気筒5000ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:575ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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