エココンシャスなクルマである新型プリウスの上位グレードに19インチ、新型クラウンクロスオーバーは21インチと純正タイヤ&ホイール大径化の波が加速している。見た目は確かにカッコいいけど、どのようなメリットとデメリットがあるのかを語ってもらった。
文/ハル中田、写真/ベストカー編集部、トヨタ
国産車も「19インチ」は当たり前!! 大径タイヤ採用のメリットはスタイリングだけってマジですか?
■新型プリウスは19インチに! クラウンクロスオーバーは21インチに!!
これまでにないスタイリッシュなエクステリアデザインがウリとなっている新型プリウス
いやー、新型プリウスはカッコいいですね!「ハイブリッドを大衆化する」のが従来のプリウスのコンセプトであったと感じていますが、もはやハイブリッドが完全に一般に広まった今、新たなプリウスのミッションとして「デザインと燃費と走りで未来へ進む」という意志を感じます。
そんな新型プリウスのタイヤサイズは最も大径のサイズで195/50R19。19インチにもビックリですが、それに似つかわしくない普通な幅でまたビックリ。ちなみにひと足先に発売されたクラウンクロスオーバーも最も大径のサイズで225/45R21。225幅はそれなりですが21インチ! に対しては狭め。
昔話をしてしまって恐縮なのですが、自分が育った時代のクルマは195/60R14サイズで「低扁平の高性能スポーツタイヤ!」なんて言われていた時代です。15インチなんて超高性能スポーツタイヤ! 30年ちょい時代が進むなかでここまでタイヤが大径低扁平化するとは1mmも想像していませんでした。
隔世の感のある昨今最新のタイヤサイズ。その背景にはどんな理由があるのでしょうか? そこにデメリットはないのでしょうか? 今一度整理をしてみましょう。
■純正タイヤサイズ大径化の背景とは?
こちらはクラウンクロスオーバーの純正アルミ&タイヤ。21インチとは恐れ入りました!
まずは「なぜ?」の部分を抑えましょう。キーワードは「重量化」「燃費」「操縦安定性」「デザイン」の4つです。
今のクルマはどんどん大型化しています。日本にかぎらず欧米を中心として人間の平均体格は大型化しています。クルマの室内空間も当然それに合わせて広くせざるを得ません。車体が大きくなると当然重くなる。それに合わせてエンジンとモーター出力も大きくなり、さらに重くなる。
そして今は安全性も求められます。思い切り単純化すると衝突安全のためには頑丈に大きく作る必要があり、重量増に繋がります。パッシブセーフティとしてはエアバッグなど、さらにはアクティブセーフティとして各種運転支援装備と多くの理由から部品点数が増えてこれも重量化。
さらには環境対策のために電動化は避けて通れません。モーターはともかく大量に積むバッテリーは何百kg単位で重くなっていきます。高級BEV車は「重くなるBEVでも航続距離を伸ばすためにさらに重いバッテリーを大量に積む」という本来の環境保護の観点に立つと謎のスパイラルに陥っています。
重くなる車両を支えるには、タイヤのなかに多くのエアボリュームを必要とします。「最近のタイヤは空気圧が高い」と感じる方も多いと思いますが、その一因がこれ。
しかし、空気圧を上げていくと乗り心地が悪くなったり、タイヤノイズがうるさくなったりとネガが大きくなるので限度があります。それをカバーするためにタイヤサイズ自体を大きくしてエアボリュームを稼ぐのです。
■燃費におけるタイヤが占める走行抵抗の割合は1割ほど
燃費改善における割合は、ゴム量が減るほど≒タイヤ自体が小さくなるほどエネルギーロスと走行抵抗が小さくなる
次に燃費。燃費を稼ぐ方法は多々ありますが、そのなかでタイヤが占める割合もそれなりに大きいのです。一般的にはクルマの走行抵抗のうちの10%前後と言われます。
では、タイヤの走行抵抗はどのように決まるのでしょうか?
タイヤのグリップを生み出す仕組みのひとつ、そして材料のゴムが持つ特性として「ヒステリシスロス」というものがあります。ざっくりと言うと「ゴムが変形して元に戻る時に、そのエネルギーを熱として放出する」のです。エネルギーロスですからこれが走行抵抗となります。
そして、同じ変形量ならゴム量が増えれば増えるほどこのエネルギーロスが大きくなります。逆に言うと、ゴム量が減るほど≒タイヤ自体が小さくなるほどエネルギーロスと走行抵抗が小さくなります。そのための狭幅大径低扁平化なのです。
特にこの燃費はCO2排出量と、ひいては地球温暖化との関連が深いので世界的に規制が厳しくなってきています。そのため自動車開発においても燃費の要請がますます強くなり、狭幅大径低扁平化が進むのです。
■操安性とデザインはどうか?
「今のプリウスはホイールとタイヤ自体も大径ですが、フェンダーモールの黒と相まってより大きく見え、力強くカッコよく見えます」とは筆者の弁
そして操縦安定性。
緊急回避性能やブレーキ性能のためにはタイヤのグリップは高くなければなりません。しかし、燃費や摩耗性能に背反があるので闇雲には上げられない。それならばタイヤの反応速度を上げて初期からレスポンスよく動くようにすることで補完をします。
高扁平タイヤではタイヤのたわみが大きく反応速度を上げられませんから、必然的に低扁平にしてレスポンスを上げることになります。
また、低扁平にすることで高速でまっすぐに走る時からフラフラとせずにどっしりとし、高速直進安定性も高くなるといいことづくめなのです。
最後にデザイン。
これはもう、「ホイールは大きくタイヤは薄っぺらいほうが見た目はカッコいい」というそれだけです。事実、今のプリウスはホイールとタイヤ自体も大径ですが、フェンダーモールの黒と相まってより大きく見え、力強くカッコよく見えます。
昔から「インチアップして車高落としてフェンダーとの隙間を小さくして……」をドレスアップ派が求める理由です。自分の専門とは違うので聞いた話でしかありませんが、カーデザイナーも「大きく力強く見えるサイズのタイヤ」を求めるそうです。
■大径低扁平タイヤのデメリットとは……
プリウスもグレードによっては19インチを採用するなどエコカーといえども昔より変わってきた!?
さて、ここまでメリットを書いてきましたが、大径低扁平化によるデメリットはないのでしょうか?
やはりあります。単純に硬くなり、乗り心地が悪くなります。ゴム量が少なくなることで低い周波数のフワンボヨンしたクルマ酔いするような揺れは少なくなりますが、ガツガツ、ゴツゴツと周波数の高い尖ったショック感が大きくなります。
音もうるさくなります。こちらも低いボコボコ、ゴーゴーした音が減る傾向にはありますが、そのいっぽうでアスファルトの骨材からのザーザー、ガーガーとした高い音が増えたり、路面ジョイントを超える際のガツン! という音も増えたりと。
こうしたデメリットは車体骨格を強固にして制振材を大量に使える高級車や、BEVも同じくバッテリー周辺を強固に造る関係でそこまで顕著になりませんが、普及車ではわかりやすく出てきてしまいます。
また、ハンドリングでも初期の反応はよく、ちょっとの操作に対してよく動きますが、いっぽうで限界域ではピーキーな扱いづらい挙動になったりもします。限界を超えると一気に滑ってしまう特性は穏やかな高扁平タイヤにはないものです。
「クルマの乗り味の味付け」をする立場としては、このように昨今の大径低扁平化は非常に開発を難しくしてしまうので、やはりほどよいサイズがいいなと思わずにはおれません。
縁石などに擦ってしまった際も、サイドが低いゆえにホイールに傷がつきやすくなったり、リムガードはあるもののやはりサイドカットからパンクしやすくなったりもします。
冬タイヤの履き替えを迎え、自分でタイヤ交換する際も最近の大径タイヤは重いですよね。うっかりすると腰を痛めそうですし、ハブに嵌める時も苦労します。保管するにも大きいと場所を取りますし。
あとはやはり高いですよね。大径化するほど単純に必要な材料も多くなるので値段もどんどん上がってしまいます。
■クルマは小さくてシンプルでいいじゃん!
初代プリウスは現行型と車格も違うが、タイヤサイズも圧倒的に違っている!
……とまぁ、最後は個人的な愚痴のようになってしまいましたが(笑)、時代の要請によりタイヤは狭幅大径低扁平化が今後も避けられない状況です。
確かに持続可能性を考えて環境性能をよくし、安全性に快適性を考慮してクルマを大きくしていくことも大事ではありますが……。
いちユーザーとしては「昔ながらの小さくてシンプルなクルマのほうが安いし、軽いし、結局環境にもいいよね」という矛盾した想いを持っているのが本当のところです。なんとかならんのでしょうかね。
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みんなのコメント
見栄っ張りで中身がないプリカスやクラウンこオウナーにぴったりだ
高速安定性は増すけど
乗り心地は悪い
見栄っぱりなオーナーが多かった