■300ps×軽量化×cd=0.29で300km/h巡行を可能に
もし発売されていたら、その後どうなっていたのだろうか……と思わせるコンセプトカーはいくつか存在します。
【画像】超カッコイイ! トヨタ「4500GT」を画像で見る(48枚)
1989年開催のフランクフルトショーおよび第28回東京モーターショーに参考出品されたトヨタ「4500GTエクスペリメンタル」は、その代表といえます。
トヨタ4500GTという車名から、かの名車「2000GT」を連想しますが、まさしく2000GTを当時の解釈で再構築することを目指していました。エクスペリメンタルとは、日本語では実験的な・試験的な、という意味を持ちます。
開発コンセプトは「4人の乗員を乗せて300km/hでの巡行を可能とする次世代高性能スポーツカー」。
このコンセプトを実現するため、初代セルシオ用の4リッターV型8気筒DOHC自然吸気エンジン「1UZ-FE型」を4.5リッターに拡大して搭載したほか、1気筒あたりのバルブ数も4バルブから5バルブに変更して最高出力300ps/6600rpmにパワーアップされていました。
駆動方式はFR(後輪駆動)でトランスミッションは6速マニュアル。エンジンは可能な限り後部に寄せたフロントミッドシップ搭載で、さらにギアボックスを後輪のデファンレンシャルと一緒に配置する「トランスアクスル」方式にしたことで、前後重量配分が50:50に近づくよう図られていました。
全長4365mm×全幅1830mm×全高1210mmのボディは、一部外板にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を、各部にマグネシウムなどを採用して車重を1450kgに抑え、さらに0.29という極めて低いcd値(空気抵抗係数)を達成。
これらも、300km/hで巡行できるというコンセプトの実現をアシストしました。なお0-400m加速は13秒台を、0-100km/h加速は7秒以下をマークしたといいます。
スポイラーなどの派手な空力付加物や、大仰なオーバーフェンダーを持たないエクステリアはぬめっとした印象。フロントオーバーハングが長い2ドアクーペで、ルーフがステーションワゴンのように後部まで伸びたいわゆる「シューティングブレーク」型のフォルムを特徴としました。
そのためリアウィンドウは立ち気味。リアバンパー的な造形は持たず、四角い4連テールライトを配した面が下部に向かって滑らかに下っているという個性的なリア全体の造形は、今なお大きなインパクトがあります。
ドア後部のクォーターウインドウは、2000GTと同様のJ型のグラフィックスを有しており、2000GTの後継者的なモデルであることを示唆しています。
一方のインテリアは極めて現実的なつくりで、ドライバーを囲むようにデザインされたダッシュボードは、のちの80系「スープラ」(1993年登場)の先駆けともいえる造形が施されていました。サイドブレーキがレバー式なのが時代を感じさせます。
発表後、モータージャーナリストを招待して高速周回試乗まで行ったという4500GT。市販への期待が高まりましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。
しかし、マルチシリンダーエンジンの高級2ドアクーペという概念は、1991年に4リッターV8を積んで発売された3代目「ソアラ」(初代レクサス「SC」)に引き継がれ、さらに時が過ぎてレクサスの超高級スポーツカー「LFA」、「LC500」へとつながっていったのではないでしょうか。
※ ※ ※
シューティングブレーク型の高級スポーツカーは、その後アストンマーティン「ヴァンキッシュ・ザガート・シューティングブレーク」(2020年)や、フェラーリの「FF」(2011年)や「GTC4ルッソ」(2016年)などが出現していますが、4500GTはこれらより数十年も早くそのフォルムをまとっていました。
もし当時4500GTが市販されていたら、その後の高級スポーツカー市場に大きな影響が出たのは間違いありません。
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