今年で第44回目となる日本カー・オブ・ザ・イヤー。日本のモータリゼーションの発展とコンシューマーへの最新モデルおよび最新技術の周知を目的として1980年に創設され、現在、一般社団法人 日本カー・オブ・ザ・イヤーが構成する日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会により運営されている、その年を代表するクルマを決める章典である。今年は日本カー・オブ・ザ・イヤーのロゴが新しくなり、選考方法も一新。
選考対象となるクルマは、前年の11月1日より当年の10月31日までに日本国内において発表された乗用車で、60名を上限とした選考委員の投票によって決定される。また、その年を代表するクルマとなる「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が日本メーカー車だった場合、海外メーカー車でもっとも多く得票したクルマに「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」が与えられる。さらに2つの部門賞、「デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー」「テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー」が設けられている。※部門賞は今年から10ベストカーからの選考、投票となった。
今週、話題になったクルマのニュース3選(2022.12.17)
本年、10月31日にノミネート車全34台が発表され、11月3日、東京ビッグサイトで開催されたJAPAN MOBILITY SHOW 2023の会場で、60名の選考委員による投票で選ばれた10ベストカーが発表、決定。日本カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024の10ベストカーは以下の10台となった(ノミネート順)。
1.SUBARUクロストレック
先代までSUBARU XVと呼ばれていた、インプレッサをベースにした本格クロスオーバーモデルの新型はクロストレックに名称変更。最低地上高200mm、AWDはXモードを完備する、悪路走破性にも特化したモデル。オールシーズンタイヤを履くものの、その乗り心地の快適感、車内の静かさはスバルの乗用車史上、最上との呼び名も高く、オールラウンダーな1台としての完成度が際立つ1台だ。パワーユニットは水平対向2Lエンジン+モーターのe-BOXERと呼ばれるマイルドハイブリッドのみ。XV時代と異なり、AWDに加えFFも選べるところも新しい。
2.トヨタ・アルファード/ヴェルファイア
高級車需要をセダン、サルーンから奪い、新たな高級車像を確立させたのが、先代アルファード。4代目となった最新のアルファードと3代目となるヴェルファイアはプラットフォームを一新するとともに、ヴェルファイアに新たな価値、つまりハイオクガソリン仕様の2.4Lガソリンターボを搭載するスポーティグレードを新設定。プライベートジェットをイメージしたという2列目席の豪華極まる装備類、新エグゼクティブラウンジシートにも注目が集まっている。走行性能では静粛性の向上、車体、シートの微振動がほぼ解消されたところがポイントだ。
3.トヨタ・プリウス
5代目となった新型プリウスは、歴代のモノフォルムを継承しつつ、斬新なクーペライクかつ低全高、低重心パッケージで登場。Z、Gグレードに積まれるトヨタ最新の2Lエンジン+2モーターによる第5世代ハイブリッドシステムは、システム出力が先代の1・6倍にもなる196psとなり、その上でWLTCモード燃費28・6km/Lを達成。タイヤはスポーティな下半身と低燃費を両立する、大径にして細身の195/50R19という異形サイズをフィッティングさせている。一方、PHEVモデルは新型プリウスのトップエンド、ハイパフォーマンスモデルとして位置づけられ、PHEVシステムは2Lエンジン151ps、19.2kg-m、モーター163ps、21.2kg-m。システム出力は先代の122psに対してなんと223ps!!へと高められている。100km/h加速は2L級スポーツカー並みの6.7秒(先代は同11.1秒)の俊足だ。
4.日産セレナ
多人数乗車可能なファミリーカーの主役とも言えるのがMクラスボックス型ミニバン。セレナはその代表格の1台。6代目となる新型は5ナンバーサイズ(全幅1695mm)を維持した標準ガソリン車、100%電動駆動のe-POWERモデルも選べるハイウェイスターに加え、高速道路同一車線での全車速域ハンズオフドライブを可能にするプロパイロット2.0を搭載したルキシオングレードが揃う。クラスでもっとも電動感の強いドライブフィール、2/3列目席フラットアレンジでのフラット感、寝心地の快適感も魅力となる。
5.ホンダZR-V
ホンダの新作SUVがZR-V。スタイリッシュなエクステリア、上質感あるインテリアに加え、ガソリン、e:HEVと呼ばれるHVのパワートレーン、FF、4WDの駆動方式が選択可。それぞれに動力性能や乗り心地に違いがあり、今回の袖ヶ浦フォレストレースウェイでの走行でもホンダらしいスポーティで安定感たっぷりの気持ちいい走りを味わせてくれた。つまり、山道などでも楽しめるSUVという仕上がりだ。
6.三菱デリカミニ
三菱のスーパーハイト系軽自動車であるekクロススペースをベースに、主にエクステリアを”デリカ”の名を語るのに相応しいデザインに仕上げ、4WDモデルに関しては、165/60R15サイズのタイヤ、専用チューニングされたサスペンションを奢り、軽自動車最大級の大径タイヤによって最低地上高160mmを確保した犬顔!?の軽クロスオーバーモデルがデリカミニ。TVCMでもお馴染みの「デリ丸」くんのキャラクターも大成功。ターボモデルの乗り心地、車内の静かさ、そしてもちろん4WDの走破性の高さも自慢。オールラウンダーなミニマムサイズのクルマに仕上がっている。カッコかわいい犬顔だけじゃない車内の快適度やシートアレンジ性によって、アウトドア派だけでなく、愛犬家にもお薦めだ。
7.アバルト500e
フィアット500をベースにした、アバルト初の電気自動車がAbarth 500e。電気自動車にしてドライバーを刺激するドライビングパフォーマンス、アバルトならではのサウンドを再現したサウンドジェネーター(ON/OFF可)の採用が目玉。小粒でもピリリの走りの楽しさは唯一無二。袖ヶ浦フォレストレースウェイでもその魅力をいかんなく発揮してくれた。
8.BMW X1
BMWでもっともコンパクトなエントリーSUV。ガソリン車、クリーンディーゼル、そして電気自動車の3つのパワートレーンを持つのも特徴で、日本仕様は全車4WD。注目の電気自動車、iX1 xDrive30のバッテリー総電力量は66.5kwh、一充電走行距離は公称465kmとされる。
9.マセラティ・グレカーレ
世界の名だたる超高級車ブランドのひとつ、イタリアの名門、マセラティからは最新のSUV、グレカーレが10ベストカーに選ばれた(マセラティとしては日本カー・オブ・ザ・イヤー初)。グレカーレとは、歴代のマセラティ同様に、風の名前が与えられた車名で、地中海に吹く北東風を意味する。パワーユニットは2Lの電動ターボ、マイルドハイブリッド、および3L V6ツインターボを揃える。マセラティとしてGTの1000万円を切る価格にも注目が集まっている。
10.フォルクスワーゲンID.4
フォルクスワーゲンの未来を占う現在地の電気自動車がID.4。フォルクスワーゲンの電気自動車専用プラットフォームMEB(modular electric drive matrix)を用いた、ルーフレールを備えるクロスオーバーモデルでもある。駆動方式はRR(後輪駆動)。ボディサイズは日本の路上でも持て余さない全長4585×全幅1850×全高1640mm。ホイールベース2770mm。バッテリー総電力量52kWh、最高出力170ps、31.6kg-m、一充電走行可能距離435kmのライトと、バッテリー総電力量77kWh、最高出力204ps、31.6kg-m、一充電走行可能距離618kmのプロが揃う。フォルクスワーゲンのガソリン車から乗り換えても違和感の小さい走行性能も特徴だ。
11月22日には、日本カー・オブ・ザ・イヤー恒例の10ベストカー試乗会が袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催。各選考委員は同じ条件下で10台を試乗し(駆動方式やグレード違いがある場合は10台以上になる)、同日から投票開始。今年から、選考委員は3台の日本カー・オブ・ザ・イヤーカーを投票。さらにデザイン・カー・オブ・ザ・イヤー、テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーをそれぞれ1台投票することになる。
そして2023年12月7日、最終選考会が東京ポートシティ竹芝で行われ、日本カー・オブ・ザ・イヤー、デザイン・オブ・ザ・イヤー、テクノロジー・オブ・ザ・イヤーが決まることになる(「日本カー・オブ・ザ・イヤー」が日本メーカー車だった場合、海外メーカー車でもっとも多く得票したクルマに「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」が与えられる)。
なお、一般の方は最終選考会に参加できないものの、YouTubeによるライブ配信(日本カー・オブ・ザ・イヤー公式チャンネル)で、最終選考会の一部始終を閲覧可能(15時開始予定)。また、当日、東京ポートシティ竹芝のエントランスに展示される10ベストカーの実車はどなたでもご覧いただくことができる。
さて、2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤーの栄冠はどのクルマの頭上に輝くのか。読者諸氏も予想しながら、2023年12月7日、15:00~のYouTubeによるライブ配信をぜひチェックしていただきたい。
文/青山尚暉(日本カー・オブ・ザ・イヤー2023-2024選考委員/モータージャーナリスト)
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