安くて手軽で便利——それが原付スクーター。けれど今はそれ、ピンクナンバーの原付ニ種だ。いま原付一種スクーターはどうなっているのか。ヤマハの名車JOGで、通勤してみた!
原付一種(50ccバイク)を取り巻く環境
この一年、思わぬところで原付スクーターが話題になった。新型コロナウィルス感染拡大のため、「密」になる満員電車での通勤通学を避けるため、その存在がクローズアップされたのだ。
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原付一種&ニ種とも販売台数がアップ。ただし、このコロナ禍の影響により生産が滞り、中古車需要が急上昇。20年下半期の中古車販売台数は、前年同期の約3割増しとの報道もあった。それどころか、下半期の二輪免許取得人口も約25%アップしたというのだ。
されど近年の原付スクーター、特に一種=50ccへの注目は小さく、販売台数は伸び悩み、販売モデル数も激減。販売台数は、1980年に約250万台だったものが、2019年には約13万台、約20分の1にまで激減しているのだ。
理由は様々だけれど、80年代中盤にはヘルメット着用義務が販売の伸びを止め、いまだに一般道の最高速度が30km/hに規制されていること、二段階右折のわかりにくさ、通行禁止区間があることも、どんどん原付一種の立場を悪くしている。そしてこの10年は、駐車禁止の取り締まり強化もそれに拍車をかけてしまった。
もちろん、特に都市部では、便利さを認められながら、圧倒的に原付ニ種の方が走りやすいだろう。最高速度が法定速度上限までOKで、ふたり乗り可能、二段階右折不必要、通行禁止区間もほとんどないなど走行時の規制が少ないということが大きい。
もちろん都市部を離れれば、その「規制」が少ないからか、原付一種の便利さはいまだに有効。大学生の通学に、ビジネスマンの通勤に、そして日々の移動の足にと、いまだに原付は生活に密着した交通手段なのだ。
言うまでもなく、原付のメリットのひとつに「経済性」がある。オートバイの最小排気量クラスで、例外はあるけれど、原付スクーターは日本でいちばん手に入れやすい価格帯だ。
だから、今さらだけれど、やってみた。都市部で、原付一種のスクーターを毎日の通勤手段に使ってみよう。普段、私はモンキー125で通勤しているけれど、これをヤマハ伝統の原付一種スクーターJOGでやってみた。
私が通勤手段を含め、特に都内の移動にモンキー125を使っているのも、原付一種の不自由さを知っているからだ。原一ライダー時代だったのは35年前。まだ2段階右折もなかったころだ。
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私の自宅からオートバイ編集部まで、モンキー125で通勤すると約20km、40分。これを電車通勤すると、ドアtoドアで約1時間半かかる。まず自宅から最寄り駅までバスで20分、歩けば30分。電車に乗っている時間は、乗り替え含めて片道約45分で、編集部最寄りの駅から編集部まで、歩いて10分——。遠くも近くもない、都内に通勤しているサラリーマンでは、ほとんど平均的なものだろう。自宅から編集部までの定期代は3カ月で約3万8000円。ってことは年間約15万円だ!
これをJOG通勤でやってみた! 実走しての参考燃費は、約55km/L。自宅から編集部は、片道約20kmだから、1往復40kmで約0.8Lの消費。燃料タンク容量4.5LのJOGだと、5往復くらいで給油することになる。
取材時期のレギュラーガソリン代は約130円/Lだから、通勤1往復でのガソリン代は約105円。月に20回出勤すると、1カ月2100円ってところ。
これを通勤定期と同じ3カ月で換算すると6300円。3万8000円VS6300円、差額3万1700円で、ここはJOGの圧勝だ。
ここで車両代も入れなきゃならないから、JOGの17万500円、登録して自賠責保険料も入れて、乗り出し価格は20万円ってところだろう。
これを、電車対JOGの差額で埋めるとなると、約18カ月、つまり1年半でペイできるってことになる。もちろん、メンテや消耗品の出費はあるだろうけれど、2年も乗れば、その後はずっとおトク、ってことになるのだ。
もちろん、電車通勤には電車通勤の良さがあるし、JOG通勤にはJOG通勤の良さがある。ただしいちばん強く感じたのは、このご時世、普通のサラリーマンが出社&帰宅する時間帯って、まだまだ満員電車なんだな、ってこと。
そりゃぁもう密よ、密。電車に乗らざるを得ない人もいるし、もちろん会社がバイク通勤禁止、って人も多いだろうけれど、オートバイ乗りの私からしたら、なんと快適でクリーンな通勤手段だ、ってしみじみと再確認できたのだ。
JOGのライディングは、楽しさと怖さが半々、と言ったところだった。
4スト50ccエンジンは、最高出力4.5馬力。力強くはないけれど、法規なしで走れるなら、結構スイスイとスピードに乗ることはできる。けれど、やはり公道30km/h制限をきちんと守ると、まわりのクルマはびゅんびゅん抜いて来るし、いきおい路肩を走ることになると、荒れた路肩をふらふら走ることになる。
スピードも、メーターを注視していないとすぐに40~50km/h出てしまう。仮に50km/hで走ると、もう20km/hオーバーだ。
これが、都市部を離れると、公共交通機関の少ない地方なんかでは、スクーターの機動力は絶大! 30km/hで走ったってびゅんびゅん抜いてくるクルマがいない道を選べれば、快適至極。やはり50ccといえども、スクーターって便利だなぁ、と思い知らされることになる。
走っている間、ずっと考えた。都内を走る人にとっては、制約の多すぎる原付一種は、メリットをまるで生かせないから原付ニ種に向かうのだろう。
けれども原付ニ種生活をするには、小型二輪免許だって必要。普通車の免許で乗れるのは原付一種だけで、ここも法規のひずみが生じているのだ。
理想は、原付免許で125ccまで乗れること! 50ccまでのままなら、最高速度をニ種と同じ60km/hまでOKとしてくれたら、再び原付が「最高に便利な乗りもの」になってくれるのだと思う。
もちろん、原付スクーターの楽しさは、通勤だけではない、ツーリングにだって使えるけれど、メーターやまわりのクルマにびくびくしながらのツーリングなんて楽しくもなんともない。
こんな不自由な制約ばかりで、この国は原付一種を滅ぼそうとしているのだろうか。乗り物自体は、まだまだ楽しさも便利さもある、可能性のある乗り物なのに、法規がそれを認めてくれていない。
原付スクーターがオワコンなんて言われたくはない。けれどオワコンへの道がつながっているのは事実なのだ。
ヤマハ「ジョグ」各部装備・ディテール解説
1984年に誕生し、日本で最も長く売られているスクーターが、このジョグだ。当時はスクーター=主婦層向け、というイメージがあったものの、その興味を16歳の少年に向けさせた功労者で、JOGが80年代初頭のスクーターブームをけん引していたといっても過言ではない。
空冷2スト50ccエンジンを搭載していた初期モデルから、メットインになり、2007年には4ストエンジンを搭載。2018年には販売規模縮小のあおりを受けて、ホンダのOEM生産モデルとしてJOGは販売継続。現行モデルは外観以外、ホンダ・タクトとほぼ同一だ。アイドリングストップ機能付きの上級バージョン「ジョグ デラックス」(税込18万3700円)もラインアップする。
[ アルバム : 【写真14枚】ヤマハ「ジョグ」 はオリジナルサイトでご覧ください ]
ホンダ・ヤマハ・スズキの50ccスクーター ラインアップ
ここからはジョグシリーズ以外の50ccスクーターを紹介。ビジネス向けモデルをのぞくと、いま新車で購入できるモデルはだいぶ限られている。
JOGのベースとなったホンダのベーシックスクーター。おとなしめのスタイリングで、タクトベーシックとタクトの2本立てが、ジョグとジョグ デラックスの2本立てにつながっている。
TACT/JOGよりシート下スペースを大きく取り、日常の使い勝手にフォーカスして開発されたのがダンク。スタイリッシュなデザイン、充実装備は大学生の通学をターゲットに仕上げられたものだ。
曲線を多用したスタイリングとしたのがジョルノ。eSPエンジンやアイドリングストップ、コンビブレーキなどの基本装備は共通で、足元にリッド付き小物入れスペースも備えている。「ジョルノ・くまモン バージョン」もラインアップ(税込価格:20万6800円)。
こちらもホンダ生産、タクトやジョルノと基本を共用化したスタイリッシュスクーター。eSPエンジンやコンビブレーキ、アイドリングストップなどの基本装備は共通となっている。
110/125を兄弟モデルに持つアドレスも、スズキのスクーターとして息の長いブランドだ。3.7PSを発揮する空冷4ストエンジンを搭載し、フルフェイスヘルメットが入るシート下スペースが人気だ。
車両重量70kgという、国産スクーターナンバー1の軽量さを達成したスタンダードモデル。シート高は695mm、バスケットはロールシャッター付き樹脂製フロントバスケットを標準装備する。
文:中村浩史/写真:松川 忍
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坂道の多い町に育ったので、自転車での移動が大変だった。
こがずに移動できる乗りものを所有した喜びは、今でも忘れてない。
たしか4時間の講習と実地だったかと!
その方が、利にかなってるかと