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EVの新しい扉を開けたアウディの電気自動車「e-tron Sportback 55 quattro」

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EVの新しい扉を開けたアウディの電気自動車「e-tron Sportback 55 quattro」

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 アウディ初のピュアEV「e-tron Sportback 55 quattro」に試乗した。クーペスタイルながら堂々としたサイズで、全長4900x全幅1935x全高1615mmとなっている。アウディのSUV「Q8」などに用いられている「MLB evo」というプラットフォームを使用し、サスペンションなどの主要パーツを「Q8」と共用化しながら、その一方でフロアには独自のアルミ製サブフレームにバッテリーが載せられている。

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機械として優れているか? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 モーターを前後に1基ずつ搭載し、それぞれで前後輪を駆動する「クワトロ」システムが構成されている。通常はリアモーターが後輪を駆動して走り、急加速やコーナリング時、滑りやすい路面などで駆動力が必要になった場合に、フロントモーターによって前輪も駆動されて4輪駆動となる。0-100km加速は5.7秒と外見から想像できにくい速さだ。

 実際に、箱根の山々と市街地を走ってみたが、その速さと運転感覚には眼を見張らされるものがあった。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間からの鋭く力強い加速は、モーター独特のもの。どんなハイパワーエンジンでも、ある程度アクセルペダルを踏み込んでエンジン回転数を上げていってからでないとパワーは発揮されないから、加速感覚がまったく違う。もちろん、高性能なハイパワーエンジンというのはレスポンスに優れて、瞬時にパワーを絞り出してクルマを加速させるものなのだけれども、原理が違うのだからモーターとエンジンの加速感覚を較べたところで意味がない。

 おまけにトランスミッションが“1速固定式”と存在しないに等しいので、走り出しから永遠に加速が続いていくような錯覚すら覚えてしまう。これまでのエンジン車のどんな高性能モデルとも違った感覚だ。車両重量が2560kgにも達するのに、山道でペースを上げていっても姿勢が乱れることがないのにも驚かされる。車体中央部分に積まれた700kgにも上がるバッテリーが重心を下げ、コーナリングに安定感をもたらしている。通常、重たいクルマはコーナリングが鈍重になりがちだが「e-tron Sportback 55 quattro」は、そんな素振りを見せず、シャープに切り返していく。シャシーとクワトロシステムの制御の優秀性が光っている。

 乗り心地が上質なところも大きな長所だ。ステアリングに対するクルマの反応はシャープなのに、路面からの振動やショックなどはほとんど遮断されて車内へ伝えられない。エアサスペンションの効能なのだろう、伝わったとしても角が丸められ、勢いが削がれている。EVであることを積極的に長所として活かしながら、最新かつ第一級の走行性能を実現しているのに唸らされた。

商品として魅力的か? ★★★★★ 5.0(★5つが満点)

「e-tron Sportback 55 quattro」は、クルマの内外も刺激に満ちている。バーチャルエクステリアミラーは慣れれば非常に有益だろうし、12.3インチのフルデジタルメーターは充電や回生状況などをはじめとするEVの多くの機能を走りながら切り替えながら表示することができる。新しいデザインのシフトスイッチもハンドレストに組み込まれたプッシュセレクタースイッチでシフトを切り替える。パワートレインを新しくしただけで満足せず、ドライバーインターフェイスも併せて刷新しているところがクルマ全体で新鮮味を出していて、大いに魅力を高めている。



「e-tron Spotrback 55 quattro」は、走行モード切り替えが可能で、オフロード、オート、コンフォート、ダイナミック、インディヴィデュアルと各モードが用意されている。うれしくなってしまうのは、その他に“allroad”モードも用意されていることだ。allroadといえば、かつては「allroad quattro」として、その後は「A6 allroad quattro」として生産されていた、アウディの車高調整が可能な4輪駆動ステーションワゴンだ。国内外で、荷物を山ほど積んで何度も長距離を走ったことがあるけれども、SUV要らずの超快適万能高性能車だった。そうか、「e-tron Sportback 55 quattro」の正体は“EVのallroad quattro”なのか!

 それならば、すべてに合点がいく。EVの特性を最大限に活かした走行性能と、アウディの技術DNAである「quattro」と「allroad」を矛盾なく融合させている。これで、EVは第2フェーズに入った。単に“電気で走る”という初期段階は過ぎ、EVの特性を活用した上でブランド価値が体現できているかが問われるようになった。「e-tron Sportback 55 quattro」は、EVの新しい扉を開けた。

■関連情報
https://www.audi.co.jp/jp/web/ja/models/tron/audi-e-tron_sportback.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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みんなのコメント

5件
  • 乗り出しで1500万はするから貧乏な日本人は相手にしてないんだろうな。
  • この金子って自称ジャーナリスト、相当のアホだな


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