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“クーペ”なスタイリングにやられる

掲載 更新 13
“クーペ”なスタイリングにやられる

SUV人気で各社がボディバリエーションを拡充する昨今、1つのカテゴリーとして認知されたSUVクーペ。この人気カテゴリーに、ミドルクラスのQ5スポーツバックが登場した。マイルドハイブリッドを採用したスタイリング重視のSUV、その実力を探る。

室内の広さはQ5とほとんど変わらず

愛車の履歴書──Vol2.俳優・野村周平さん(後編)

2021年の欧州市場の新車販売台数に占めるSUVの割合は、約45%にもなるという。各社がSUVのモデルバリエーション拡充に力を入れるのも、むべなるかなだ。

SUVの派生モデルとして、クーペスタイルを取り入れた元祖といえば、2008年にデビューしたBMW X6のことが思い浮かぶ。いまやSUVクーペは立派な1つのカテゴリーとなっており、アウディQ5 Sportbackの競合車といえば、メルセデスのGLCクーペや、BMW X4、ポルシェマカンということになる。

アウディはこのSUVクーペに“Sportback”(スポーツバック)という名称を与えている。これは4ドアクーペとも呼ばれるA5 スポーツバックやA7 スポーツバックの流麗なルーフデザインをSUVモデルに展開した流れをくんだもので、このQ5スポーツバックは、EVのe-tron スポーツバック、そしてQ3 スポーツバックに続く、アウディにとって3番目のSUVスポーツバックとなる。

エクステリアはQ5のデザインコンセプトを踏襲しながらも、シングルフレームグリルやルーフ、前後バンパーなどをスポーツバック専用のデザインとしている。SUVモデルとの簡単な見分け方は、ルーフレールの有無。スポーツバックにはそれがない。

グレード構成は「advanced」とよりスポーティな「S line」の2種類があり、グレードによってもグリルやバンパーの意匠に変更が加えられている。試乗車はS line仕様をベースとした導入記念特別仕様車の「Q5 Sportback 40 TDI 1st edition」だった。フロントマスクにはアルミニウムルックインサート付ハニカムメッシュグリルとマトリクスLEDヘッドライトを採用。また、この特別仕様車には、新テクノロジーとしてOLED(有機EL)リアライトを装備していた。これは実際に試せたわけではないが、停車中に後続車が2メートル以内に近づくと超音波センサーが探知し、ライトを点灯させて後続車のドライバーに注意を促すという。マトリクスLEDライトをはじめ、流れるようなダイナミックインディケーターなど、他社に先行して採用してきたアウディらしく、最新のライティングテクノロジーを投入している。

ボディサイズはQ5比で、全長+15mm、全高−5mm、全幅は同寸。クーペスタイルといっても、後席の居住空間の減少はほとんどなく、身長約178cmの大人が座っても窮屈に感じることはない。ラゲッジスペースの容量もQ5の520/1520リッター(シートバック格納時)に対して 510/1480リッターと縮小幅は最低限に抑えられている。

インテリアでは今春モデルチェンジしたQ5と同様に最新のインフォテインメントシステムMIB3を採用。10.1インチにサイズアップしたセンタースクリーンはタッチパネル式となり、使用頻度の高いものには物理スイッチを残しながら操作性の向上が図られている。ファインナッパレザーを用いたスポーツシートは、肌触りもよく、適度なホールド感で、長距離ドライブ時の疲労を軽減してくれるものだった。

洗練度を高めたディーゼルユニット

パワートレインは、2リッター直列4気筒直噴ターボディーゼルエンジンにベルト駆動式オルタネータースターター(BAS)と12Vリチウムイオンバッテリーを用いた、いわゆるマイルドハイブリッドシステム(MHEV)で、7速Sトロニックトランスミッションを組み合わせる。quattro四輪駆動システムはAWDクラッチ付きで、システムが4WD走行を不要と判断したときには、プロペラシャフトと、リアデファレンシャル内のデカップリングクラッチによりリアドライブシャフトを切り離すことで、前輪のみを駆動する最新のオンデマンドタイプだ。コースティング(惰力走行)時にはエンジンを完全停止するなど、燃費効率を高めている。

電動化の恩恵もあってか、ディーゼルユニットの洗練度は高められている。以前に試乗したQ5のディーゼルモデルで感じたノイズは発進時以外はほとんど感じない。高速道路を法定速度で巡航しているとディーゼルであることを忘れてしまうほどだ。そして1750回転で最大トルクの400Nmを発揮するので、日常生活ではどんなシーンでもラグタイムなしでイメージ通り加速してくれる。

足元にはベースモデルから1サイズアップの255/45R20サイズのピレリ・スコーピオンヴェルデを装着。ダンパーは電子制御ダンピングコントロールサスペンションを備えており、ドライブモードをデフォルトの「オート」にしておけば、終始適度にスポーティかつ快適な乗り心地が味わえる。もし、さらにコンフォートな乗り味を求めるならば、カタログにはエアサスペンション装着車も設定されているので、そちらを選ぶといいだろう。

気になる車両価格はこの1st editionが、837万円、ベースとなる40 TDI quattro S lineが787万円。ちなみにQ5の同等グレードが739万円と、スポーツバックが48万円高の設定になっている。正直もう少し価格差を抑えてくれればと思わなくもないが、どちらを選ぶかと問われれば、やはりそのスタイリングにやられて“Sportback”と答える。

文・藤野太一 写真・茂呂幸正 編集・iconic

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