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【ルノー カングー】ファンの声を大切にしたフルモデルチェンジ

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【ルノー カングー】ファンの声を大切にしたフルモデルチェンジ

新車試乗レポート [2023.03.06 UP]


【ルノー カングー】ファンの声を大切にしたフルモデルチェンジ
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

ルノー 新型カングー発売 全長210ミリUPで「遊べる空間」が進化

 カングー凄い。

 いきなり個人的な話で恐縮ですが、筆者の中でルノー「カングー」の存在感が高まったのは2005年秋のことでした。なぜ覚えているかといえば、初対面での印象が強烈だったから。


スペックを超えた実力の持ち主
 「なんだこのクルマは? 走りが凄い。」

 その時感じた強烈な印象がそれ。シチュエーションはルノーのミニバン「グランセニック」の試乗会で、東京を出発し軽井沢でランチを食べ、折り返して東京へ戻ってくるというのもの。復路はその日の主役であるグランセニックだったが、往路は「こちらにも乗ってみてください」と、カングーが割り当てられたのです。

 そのカングーは2003年のマイナーチェンジを経た初代モデルで、95psしかない1.4L自然吸気エンジンに4速ATの組み合わせ。そんなスペックはハイウェイの長距離移動には非力以外の何物でもないのですが、想像よりもずっとずっとよく走ることにびっくり。だから驚かされたのです。なによりも凄かったのは、そんな非力な動力性能ながら150キロ以上を一気に走っても全く疲れなかったこと。その理由は、放たれた矢のような直進安定性にありました。国産の小型車とは全然違いましたね。

このクルマは何なんだ?

 カングーとの出会いは衝撃的でした。それまで「そんなクルマもあるね」程度でまったく意識していなかったカングーの存在感が筆者のなかでメキメキと増すと同時に、スペックでクルマを判断することがいかに愚かであること知りを恥じた出来事だったことを覚えています。カングー凄い。


フランスでも注目されている日本のカングー人気
 今では信じられませんが、当時、日本の市場でカングーの認知度はきわめて低いものでした。しかし、あれから17年。カングーは本国フランスから遠く離れた日本市場においても人気が急上昇し、日常的に見かける存在になりましたね。マクドナルドのCMではスキーをしにゲレンデへ向かうファミリーが乗るクルマ、つまり言い換えればファミリーカーを代表する車種として登場するほどメジャーなモデルになったし、日本で開催されるカングーファンのお祭りである「カングージャンボリー」はフランスのルノー関係者の間でもよく知られる存在に成長したのですから。

 日本のマーケットはカングーを取り巻く環境がちょっと特殊で、フランスにおけるカングーは「単なる商用バン」であり「仕事で使われる道具」。でも、日本では多くの人がプライベートで使い愛してやまないパートナー。「MINI」を選ぶような感覚のファッションアイコン的な存在といってもいいでしょう。そんな日本のカングー人気は本国からみても特殊な状況ですが、本国サイドもかなり注目しているのだとか。


新型はボディサイズが拡大し積載量も大幅にアップ

カングー インテンス
 そしてついに日本に、3世代となる新型カングーが導入されました。まずは変化や進化したところから紹介しましょう。

 車体サイズは全長で210mm、全幅で30mmとそれなりに拡大。4490mmの全長は大きくないけれど、1860mmの全幅は道路環境によっては気になるかもしれません。初代に対して大型化した2代目は一部のファンから「デカングー」いう愛称で呼ばれるが、新型は「デカデカングー」といったところでしょうか。とはいえ全幅も先代に対して30mmしか広がっていないので、自宅もしくは行動範囲に狭い駐車場がある人を除けば“慣れ”で済む範囲だと思います。

 車体拡大の恩恵を受けるのは荷室で、容量は先代モデルに対して後席展開時の床の奥行が10cm伸び、容量は115L増しの775Lにアップ。プライベートユースではあまり関係ないかもしれませんが、最大積載量が従来の850kgから1000kgに増えたのも地味にトピックでライバルを超えていのです。

 車体の土台となるプラットフォームはルノー・日産・三菱のアライアンスで開発されて日産「エクストレイル」や三菱「アウトランダー」にも採用されている「CMF-C/D」と呼ばれるタイプを最適化して採用。そこに専用設計のサスペンションを組み合わせて、高い操縦安定性と乗り心地を実現するというわけです。

 エンジンは、すでにルノーのほかのモデルに搭載されて定評のある排気量1.3Lのガソリンターボに加え、待望のディーゼルエンジンもカタログモデルとして用意。排気量1.5Lの4気筒ディーゼルターボエンジンは先代の最終限定車に搭載されたものと同じですが、その限定車がMTとの組み合わせだったのに対して新型ではATを組み合わせているのがポイントでしょう。

 MTといえば、残念ながら新型の日本向けモデルは全車ATでMTの設定がありません、今のところ。

 でも、これまでもカングーはMTの昨今のクルマでは極めて珍しく日本販売でもMT比率が高く、新型も当然ながら本国ではMTが中心。つまり、今後日本でもMTが追加される可能性も決して低くないと考えるのが当然でしょうね。MTファンは期待していいと思いますよ。


スマホ対応ディスプレイや先進安全装備がついに導入された

カングー クレアティフ
 室内でまず新型を感じるのは、メーターやセンターディスプレイ(8インチのタッチ式でスマホを繋げればナビとして利用できる)が標準で組み込まれ、デジタル感というか先進感が飛躍的にアップしたこと。そして質感が大幅にアップしているのも見逃せません。もしかするとこれを商用車感が薄まったと残念がる人もいるかもしれないけれど、多くの人には歓迎できるのではないでしょうか。もちろん筆者も大歓迎です。


カングー クレアティフ
 そして、新型の何よりの進化が先進安全装備の搭載。従来型は、こう言っては何ですが衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)をはじめとする先進安全機能はまったく搭載されていませんでした。しかし新型は衝突被害軽減ブレーキをはじめ、車線からはみ出さないようにする車線中央維持支援機能などハンドル操作に介入するデバイスも標準装備。これまで安全性の面からカングー購入に踏み切れなかった人でも、新型なら安心というわけです。

 また渋滞時の完全停止までフォローするアダプティブクルーズコントロールを全車に、上級仕様の「インテンス」や「クレアティフ」には高速走行時にハンドル操作をアシストして車線をキープする「ハイウェイ・トラフィックジャムアシスト」など高速道路運転時の疲労を軽減してくれる装備も標準搭載。一気に“今どきのクルマ”に進化したといっていいでしょうね。


カングー クレアティフ
 いっぽうで変わらないのは、その使い勝手の良さ。全長が短い車体ながら荷室は広く、キャンプやスノボーなど荷物が多くなりがちなレジャーにも最適なのは言うまでもありません。そもそも荷物運搬車として作られているので当然なんですけどね。

 ただ、後席ドアはスライド式だから小さな子供のいるファミリーとのマッチングも最高。ただ、国産ミニバンとは違って電動式の用意はないのでそこは理解しておきましょう。


日本モデルならではのこだわりがつまった新型カングーの仕様
 ところで、日本仕様のカングーには本国の乗用モデルにはない特別な演出がされているのです。それがブラックバンパー仕様。同価格で用意されている2つのグレードのうち「インテンス」はカラードバンパーで上級仕立てですが、「クレアティフ」は質素なブラックバンパーとなっています。ブラックバンパーは日本のルノー法人がこだわって用意しました。

 それはなぜか? どうしてわざわざチープな仕様を用意し、それを選ぶ人がいるのか?

 何を隠そうそれこそが、日本のカングーファンの嗜好にあわせたから、つまりルノーがいかに日本のカングーファンを大切にしているかを象徴しています。

 日本のカングーファンの多くは飾り立てることが好きではなく、シンプルや道具としての本質を求めています。だから今どきのクルマとしては例外的に、ブラックバンパー仕様が大人気。だから本国の乗用仕様にはない、あえての質素なブラックバンパー仕様を用意したのですね。あと、「ジョン アグリュム」と呼ぶ黄色いボディカラーも日本専用なのだそうで。日本でカングーといえば黄色が定番ですからね。


カングー クレアティフ
 ちなみにブラックバンパー仕様の「クレアティフ」は、前後バンパーだけでなくドアミラーやスライドレールもボディ同色ではなくブラックとなり、ドアの下部にブラックのプロテクションモールが入るほか、ホイールキャップもあえてハーフタイプにして安っぽく仕立てているのがポイント。ドアミラーウインカーの光源もLEDから電球に格下げしているのだからこだわりが凄いですね。それをボディ同色バンパーのグレード「インテンス」と同価格で販売しても、あえてチープな仕様を選ぶのがオシャレなのですから、カングーってホントに変わったクルマです。

 ちなみに日本向けは全車ともバックドアが跳ね上げ式ではなく観音開き式となっていますが、これも本国の乗用モデルではレアなタイプ。「カングーはこれじゃなきゃ」という日本のファンからの声に応えた設定なのです。


カングー クレアティフ

優しさに包まれるような独自の走りは受け継がれた

カングー クレアティフ
 ファンの期待といえば、走りも従来のカングー同様に乗員が包まれるような優しさに満ち溢れたものでした。乗り心地はよく、そこは期待を裏切りません。いっぽうでドライバーの視点でいうと、ロールが減ったことやステアリングギヤ比が先代の17:1から15:1へとクイックになったこともありハンドリングは少し締まった印象。ただ、カングーらしいおおらかな感じはしっかりと感じられたことは報告しておきますね。

 エンジンは小排気量でもターボの助けのおかげでしっかりと走るガソリンエンジンも魅力だが、個人的にはディーゼルが魅力と感じました。低回転トルクが厚いおかげでエンジン回転を上げることなくアクセルをちょっと踏み込むだけでしっかり加速する特性は運転しやすいし、ディーゼルのネガとなる騒音や振動も走り出せば全く気にならないのがいいところです。

 そのうえ燃費もよく、燃料の軽油はガソリン車のハイオクガソリンに比べて単価が2割ほど安いからレジャーのお供としてたくさん走っても給油時の財布への攻撃性が少ないことがありがたい。ちなみにカタログに記載されているWLTCモード燃費値はガソリン車が15.3km/Lなのに対し、ディーゼル車は17.3km/L。ガソリン車の燃費がいいおかげで意外に差は少ないように思えますが、実際に高速道路と流れのいい郊外路を中心に走ってみると同じコースかつできるだけ同じ走りで比較してガソリン車が15.1km/L、ディーゼル車が約19.5km/Lとなりました。実燃費は、カタログ値以上に差がつく傾向にあるようです。

ガソリン車とディーゼル車の車両価格の差は24万円ありますが、ハイオクガソリンの単価を165円、軽油の単価を130円と仮定してカタログ値の1割落ちとなる燃費で計算したところ6万4000キロほど走ればディーゼルエンジンとガソリンエンジンで車両代+燃料代の出費がイーブンとなりそう。あくまでシミュレーション上ですが、それ以上走ればディーゼル車のほうが安く上がるし、そうでなくても力強さを考えたら筆者ならディーゼル車を選びますね。なにより、遠くへ出かけたときの燃料代が安く済むから気軽に出かけられる気持ちになれるのがカングーにふさわしいと思いますが、いかがでしょう。


まとめ
 というわけで新型カングーは、しっかりとカングーらしい仕上がりでした。進化ポイントはたくさんありますが、「ゆるーい感じ」がきちんと受け継がれているのが何よりいいですね。

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