■タクシー車両に今も装備されているのは「おもてなし」のため!?
1980年代中盤頃までは一般的だったものの、今や絶滅危惧種となっているクルマの装備のひとつが「フェンダーミラー」です。
タクシーや旧車など今も一部のクルマには見られるフェンダーミラーに対し、幅広い世代から様々な意見が寄せられています。
【画像】へえぇ…「新鮮!」 フェンダーミラーからの視点を写真で見る(57枚)
日本車に後方確認用の「ミラー」が装着されるようになったのは1950年代からですが、その頃から日本では安全上の理由でボンネットのついた乗用車・商用車は、フェンダーミラー以外の装着が許されませんでした。
そのため、元来ドアにミラーを装着していた海外のクルマも、正規輸入時にはフェンダーミラー化されていたほどです。
しかし国産車の対米輸出問題が噴出しはじめた1970年代、輸入車の「非関税障壁」(国産品が優遇を受けるよう、税金を課す以外の用法で外国品を差別すること)になっていると海外メーカーから批判を受け、1970年代後半から輸入車のドアミラー解禁が始まりました。
そして1983年からは国産車でもドアミラーが認可されるように。その時、日本初のドアミラー装着車となったのは、初代の日産「パルサー EXA(エクサ)」です。
リトラクタブルライトを備えた2ドアクーペのスタイリッシュなデザインに、ドアミラーがよくマッチしていました。
以降、ほぼ全ての国産新型車がドアミラーを標準装備するようになり、フェンダーミラーを装着した新車を選ぶことはほとんど困難な状態にあります。
そんななかで、近年普及が進むトヨタのタクシー専用車両「JPN TAXI(ジャパンタクシー」は、ほぼ唯一といって良い、フェンダーミラーを標準装備する新車です。
実際にこの車両に乗務するというドライバーは「最初は慣れなかった」と話すものの「狭い道での転回や路肩に寄せる際にも目印となって重宝しています」との声を寄せています。
JPN TAXIがフェンダーミラーを装着した理由のなかで、助手席側のミラーがドアに備わっていた場合、助手席に座るお客さんの顔を見ているかのようなしぐさになることを避けるため、という主旨のコメントも複数散見されます。
こうした細やかな配慮は、いかにも日本的なおもてなしの精神といえそうです。
■「フェンダーミラー」現役世代と未経験世代、両者の意見とは
近年は、免許を取得した時からドアミラーが当たり前の装備だという世代が、ドライバーの中心となっています。
そのためフェンダーミラーに対し、新鮮な目で見る声も多く見られます。
「父の保有するフェンダーミラー車を運転すると後方が見やすいです」「たまーにフェンダーミラー車を運転すると目線移動の違いに驚く」といった驚きがあるようです。
また、長期にわたりモデルチェンジをせず、無骨な雰囲気を保つ本格四輪駆動車「ランドクルーザー70」に乗っていたという人は「あえてフェンダーミラーに付け替えてレトロな雰囲気を楽しみました。背の小さい私でも見やすくよかったです」といったコメントを寄せています。
一方で、免許を取得した当時はフェンダーミラーが当たり前だったという世代の人は「狭い道での車幅が把握しやすい」「視線の移動が少ないから安全」と、その利点について力説しています。
またフェンダーミラーにも種類(ランク)があり「自分のは角度を手動調整するので、いちいち降りて直すのが面倒だった」「クラウンの電動調整ミラーは手元で簡単に操作できて便利だった」など、フェンダーミラーには角度調整ひとつとってもドラマがあるようです。
しかし同時に「ドアミラーに慣れたらもとには戻れない」「フェンダーミラーに比べ近くに(手前に)映るので楽」「フェンダーミラーは鏡面のサイズが小さい」「安心感が違う」とも語る人も多いようです。
※ ※ ※
スタイリッシュさを競っていた1980年代当時の国産スポーツカーなどは、フェンダーミラーが似合わなかったと語る声も見られます。
「(イタリアの名デザイナー)G・ジウジアーロが手がけたいすゞ・ピアッツァは、フェンダーミラーが似合わなかった」「ドアミラー第1号の日産・パルサーEXA(エクサ)が格好良くて欲しかった」といった意見の数々です。
そして多かったのは「さっそく自分のクルマのフェンダーミラーを外し、後付けのドアミラーキットを取り付けました」というコメントでした。
当時のクルマ好きたちが、ドアミラー認可前後に奔走した様子がうかがえます。
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