旅行者の移動から大量のCO2が発生
意外と知られていないが、世界のCO2排出量の約1割(8~11%)は旅行・観光産業が占めており、その大部分が旅行者の移動から発生している。また、地域の関係人口を増やし、地域の経済・文化においてもサステナビリティに貢献していくことも、観光業には求められるようになっている。
【画像】「グリーンジャーニー推進委員会」発足! その会見の様子をみる 全130枚
昨今は欧米からのインバウンド観光客を中心にサステナブルツーリズムへの注目度も高まり、そういったツアーも増加しているが、まだ日本国内ではあまり一般化していないのが現状だ。
一方で、アフターコロナや円安の影響から国内観光需要は高まってきており、この機会を活かして国内旅行のサステナブル化を推進することができれば、環境や地域に対して大きな貢献が可能と考えられる。
旅行という非日常の体験機会はサステナビリティへの意識を高めるきっかけとなり、日常生活におけるサステナブルの取り組みへの意識や行動変容にも貢献が可能と考えられている。
そこで、2050年にはクルマのライフサイクルでのカーボンニュートラル実現を目指す日産と、「旅」を起点に日常までサステナブルの意識・行動を拡げることを目指す日本旅行とが発起人となって、現在参画している14社が手を合わせ、共通の目標に向かって推進する。それが「グリーンジャーニー推進委員会」だ。
委員会では産学官連携のもと、国内旅行におけるCO2排出削減や環境保全型アクティビティの開発、参画自治体における関係人口の創出、地域文化の発展に取り組み、今回発表された新しい旅のスタイル「グリーンジャーニー」を国内旅行のスタンダードとして持続的に発展させていく。
環境にやさしく、地域はうれしく、自分たちはとことん楽しい旅
前述のように環境配慮を謳ったツアーは増加傾向にあるのだが、実際のところ日本国内においてはまだあまり一般化していないのが現状だ。その背景には、サステナビリティを重視することで、旅行本来の「楽しさ」が不足しているのではないかとグリーンジャーニー推進委員会では考えた。
そこで、今回提案された「グリーンジャーニー」では、「環境にやさしく、地域はうれしく、自分たちはとことん楽しい旅」という考え方のもと、これまでの旅行では体験できなかった地域との交流・体験や、地域で余ってしまった食材などを活用した特別なグルメなどをオプションで盛り込んだ新しいツアーを開発している。
さらに新たな旅行体験を提供するため、LINEのミニアプリも開発した。LINEのスタンプラリー機能を用いて訪問した場所でスタンプを貯めると、日常利用できるサステナブルなアイテムなどさまざまなグッズと交換できるほか、各訪問場所に設置された二次元バーコードを読み取ると、その地域の伝統文化や地域のサステナビリティに関する情報を読むことができる仕組みも作られた。
今回、第一弾として販売開始されるツアーは、「熊本阿蘇」と「伊勢志摩」の2つ。日本旅行の各店舗(一部取り扱いしていない店舗もあり)または予約特設サイトにて、8月20日(火)10時30分から予約販売を開始する。ツアーの出発日は、9月27日(金)よりスタートする。
では、2つのツアーについて、もう少し具体的に紹介していこう。
移動には日産のEVを使用。宿泊施設や食事もサステナブルに
このツアーの特長としては、まず旅先の移動には日産の電気自動車(リーフなど)が用意されること。坂道もパワフルに走りながら、移動におけるCO2の排出量はゼロ。また、各エリアに充電器も用意されているから、電欠を心配することもない。
また、地元の食材を使った料理や、環境にやさしいアメニティなどを用意した、サステナブルな工夫のある施設に宿泊することができる。ゆったり癒やされるだけで、地球環境や地域社会に貢献できるというわけだ。
旅先でのアクティビティも、その土地ならではの自然や文化に触れるものをオプションプランとして用意している。たとえば熊本阿蘇では、eバイクで阿蘇の噴火口に迫れる草原ライドや、千年の草原を進む乗馬トレッキング。伊勢志摩では、志摩自然学校でのシーカヤックや横山展望台で英虞湾を一望する、といったアクティビティが一部はオプションだが用意されている。
さらに、各地域のレストランとの連携により、地域の食材を活用したサステナブルなグルメも楽しむことができる。阿蘇市では、「あか牛」のハンバーグや牛丼、ローストビーフなど。志摩市では、アカモク(海藻)や、ウツボやアイゴなど低利用魚(本来の目的以外に捕れた魚)を使った料理を堪能することができる。
そのほか、地域と繋がる唯一無二の体験「コネクトプログラム」として、牡蠣養殖の体験(伊勢志摩)なども計画されている。
こうして、「旅」を起点にサステナブルへの理解を深め、脱炭素への意識や行動を根付かせる「グリーンジャーニー」。スタートは2つのツアーだけだが、日本旅行では今年度中には関東や東北などでも同様のツアーを行いたいと考えている。そして、2028年までには50以上、2033年までには200以上のツアーを設定し、のべ参加者数「1000万人以上」を目標としている。
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