この記事をまとめると
■現在大人気のジャンルのひとつとなっているのがスーパーハイト系軽自動車だ
「これで失敗したらもう三菱はオリジナル軽を作れない!」 超話題の「デリカミニ」の商品企画担当が誕生秘話を語り尽くす
■それらにSUVのテイストを加えたクロスオーバー系モデルが続々と登場している
■代表的な4台をユーザー目線で徹底比較する
大人気のスーパーハイト軽クロスオーバーの中身を比べた
今、日本でもっとも売れているクルマがホンダN-BOX。登録車(フィットやステップワゴンなど)を含む2021年4月から2024年3月までの国内販売台数でNo.1を達成。2024年上半期も同様だ。つまり、スーパーハイト系軽自動車が大人気というわけだ。
そんなスーパーハイト系軽自動車にはN-BOX以外にも、N-BOXを追撃し、2024年5月には抜き去って軽自動車販売台数No.1を奪還したスズキ・スペーシアなどがひしめいている。
そして、スーパーハイト系軽自動車には標準車、カスタム系に続く第3の車種として、クロスオーバーテイストを纏わせたSUVタイプが続々と登場。アウトドア派にはもちろん、日常からアウトドアテイストのある生活を楽しみたいユーザーに刺さっているのだ。そう、スペーシアギア、N-BOX JOY、デリカミニ、タントファンクロスたちである。
今回はそんなスーパーハイト系軽自動車をベースにクロスオーバー化された4車種をチェック、比較してみたい。
なかでもエクステリア、とくに顔つきのイカツさ、SUVテイストが強いのがデリカミニ、スペーシアギア、タントファンクロスの3車種だ。
一方、N-BOX JOYはちょっとキャラクターが異なり、室内のチェック柄シートに表れているように、このジャンルの全車に共通する「アウトドアを手軽に楽しみたい」だけでなく「自分だけのくつろぎの空間がほしい」という、ややソフトな、ガチガチのアウトドアというより、ピクニック的な使い方にも照準を合わせているかのような顔つきをもっている。
全車ともに標準車やカスタムをベースに仕立てられているのは当然だが、インテリアにもクロスオーバーモデルならではの特徴がある。それはシートの撥水加工ファブリックの採用で、汚れに比較的強く、飲み物をこぼしてもサッと簡単に拭き取れるところが、日常はもちろん、アウトドアユースに適しているというわけだ。
その撥水性能は、後席を倒してラゲッジルームを拡大したときの後席シートバック背もたれ部分にも施されている点も全車に共通する。つまり、拡大したラゲッジルームは荷物だけでなく、愛犬を乗車させるにも向いているというわけだ。
とはいえ、あくまで軽スーパーハイト系軽自動車であるため、日常での使い勝手も大いに気になるところ。背が高いといっても軽自動車サイズだから取り回し性に不満があるクルマなどあるわけもなく、時に家族や友達4人でお出かけする際の後席居住性についても、スーパーハイト系軽自動車は文句なし、どころか中大型車をしのぐ後席居住空間を備えているのが今回の4車種といっていい。
具体的に頭上、膝まわり空間(スライド機構による最大値)の寸法を説明すると(身長172cmの筆者のドライビングポジション、筆者の乗車基準)、スペーシアギアは後席頭上270mm、膝まわり325mm。N-BOX JOYは後席頭上235mm、膝まわり420mm。デリカミニは頭上250mm、膝まわり400mm。タントファンクロスは頭上270mm、膝まわり355mm。背の高いスーパーハイト系だけに頭上方向にゆとりがあるのは当然として、膝まわり空間の広さはもう圧巻。
たとえばミッドサイズSUVのホンダZR-Vで245mm、ホンダ・フリードの2列目席にしても最大240mmなのだから、いかにスーパーハイト系軽自動車の後席膝まわり空間が広いかがわかると思う。
そして、後席の使い勝手ではスペーシアギアの便利さにも注目だ。何しろオットマンモード、レッグサポートモード、荷物ストッパーモードをもつマルチユースフラップをクラスで唯一、備えているからだ。
荷物ストッパーモードは後席に置いた荷物がズリ落ちない機能とともに、わが家の自称自動車評論犬!? のジャックラッセルのララによれば、顎乗せ台としてもちょうどいいらしい。
積載性や走りも検証!
そして、こうした軽クロスオーバーモデルを手に入れたら、アウトドアフィールドに誘われることはもちろんで、アウトドアの荷物の積載力も大いに気になるところ。もっとも、後席最後端位置(上記の後席後端スライド位置)では、さすがに軽自動車枠の全長、パッケージから、スペースは最小限でしかないといっていい。具体的に奥行き寸法を説明すると、スペーシアギア310mm、N-BOX JOY410mm、デリカミニ290mm、タントファンクロス260mm……でしかない。アウトドアの荷物を積み込むなんて不可能である。
が、こうしたスーパーハイト系軽自動車の後席にはスライド機構が備わり、小柄な人や子どもなら無理なく座れる前端位置にスライドすれば、ラゲッジルームの奥行きは拡大。スペーシアギアが520mm、N-BOX JOYは570mm、デリカミニで660mm、タントファンクロスだと460mmまで拡大するのである。
ここで後席スライド位置前端でのラゲッジルームの奥行が最大値となるデリカミニについて補足すると、スライド量が多く、かなり前席シートバックに接近した位置にまでスライドが可能。
そのため、チャイルドシートに子どもを乗せる、ドッグベッドに愛犬を乗せるといったシーンでは、より前席の親、飼い主の近くに子ども、愛犬が位置することになり、子どもも愛犬もより安心してドライブを楽しめることになり、愛犬の場合は万一の急ブレーキの際でも、シートからフロアに落ちにくくなるメリットも生まれるのである(デリカミニに愛犬を乗せてドライブを経験している筆者が実証済)。
しかし、後席スライド位置を前端までスライドさせても、アウトドアを含む荷物が積み切れないこともありうる。が、軽自動車でアウトドアに出かける場合、ほとんどがふたり乗り、または大人ふたり+子どもひとりというフォメーションではないだろうか。とすれば、後席の両側、または片側を倒し、ラゲッジルームを拡大。フラットで広大なスペースを出現させればいいだけだ。となると、拡大したラゲッジルームのフロアスペース(前席背もたれまでの数値ではない)は一気に拡大。
具体的には、スペーシアギア1270mm、N-BOX JOY1280mm、デリカミニ1090mm、タントファンクロス1200mmとなる。その奥行きのゆとりは、2名乗車ながら、フリードの2列仕様のクロスターのラゲッジルーム奥行(後席使用時)がラゲッジボード上段で885mm、下段で1000mmなのだから、まさに大容量ワゴンと呼んでいい数値、たっぷりの奥行きになるというわけだ。
もちろん、スーパーハイト系軽自動車だけに、ラゲッジルームの天井が高いのは当然で、スペーシアギアで1125mm、N-BOX JOYが1170mm、デリカミニは1070mm、タントファンクロスだと1040mmと、1m以上あるのだから余裕である。ラゲッジルームの広さ自慢のコンパクトSUV、ホンダWR-Vでさえ、高さ方向は870mmほどしかない。
ところで、今年の夏の酷暑を経験した人なら、窓の面積が大きいスーパーハイト系軽自動車の室内空間の空調についても気になるはずだ。その点では、エアコンを利かせた室内の空気をムラなく循環させてくれるリヤサーキュレーターが威力を発揮。
それがあるのはスペーシアギア(スリムサーキュレーター)とデリカミニ(リヤサーキュレーター/プラズマクラスター機能付き)の2車種となる。後席エアコン吹き出し口をもたない軽自動車の後席空調環境に大きく貢献。とくに暑い時期にはより快適な後席居住空間を提供してくれるのである。
最後に、アウトドアフィールドに向かうロングドライブ、山道の登坂路でも余裕の走りを見せてくれる各車のターボモデルの走行性能について軽く触れると、スペーシアギアはしっかり感あるやや硬めの乗り心地と前後左右の姿勢変化のなさ、新型スペーシアで開発陣がこだわったとくに後席の静粛性がポイント。
N-BOX JOYは最新のN-BOXで完成された質の高い、下手なコンパクトカーをしのぐハイレベルな走行性能、乗り心地、静粛性が見事。
デリカミニの真打ちとなる4WDモデルは最低地上高160mmを確保し、4WD用の165/60R15サイズのタイヤ(エナセーブ)を始め、4WDのショックアブソーバーをデリカミニ用に専用チューニング。デリカの名に恥じない、スーパーハイト系軽自動車として最強の走破性能を備えているところが大きな特徴。
タントファンクロスはイカツい顔つきをもちながら、タントに準じた走りの基本性能の高さ、リニアでスムースな走行感覚がもち味となる。
大雑把にいってしまえば、走りのクラスを超えた上質感ならN-BOX JOY。クロスオーバーモデルならではのタフな走破性を期待するならデリカミニ。もちろんもスペーシアギアとタントファンクロスも想像以上、軽自動車トップクラスと言える走りを示してくれること間違いなしだ。
あとは、後席のリッチな居住性重視ならマルチユースフラップ完備のスペーシアギアが群を抜いているし、後席に子どもや愛犬を乗せて暑い時期にドライブする機会が多いならリヤサーキュレーター装備のスペーシアギアかデリカミニというチョイスがいいかも知れない。4車種ともにアウトドアに似合うことはもちろんだ。
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何故チェック柄なんて使ってしまったのか