ボルボのセダン「S60」のエントリーグレード「T4モメンタム」に小川フミオが試乗した。
日本車からの乗り換え組多数
これぞ現代の2002ターボ! BMW M2コンペティション試乗記
現行ボルボ「S60」は、2018年に発表された3代目だ。2008年に登場した2代目がクーペのようなフォルムだったのに対し、ノッチバックセダン本来のフォルムを活かした流麗なプロファイルに戻った。今回、試乗したのはエントリーグレードの「T4モメンタム」である。
現行S60の日本におけるメイン・ユーザーは、なんと日本車からの買い替えという。“ちょっといいセダンに乗りたい”という層を吸い上げよう、というボルボ・カー・ジャパンの狙いはどんぴしゃで、比較的年齢の高いユーザーたちの獲得に成功しているそうだ。
筆者はすでに「T6ツインエンジンAWD」やハイパフォーマンスモデル「T8ポールスターエンジニアード」など、さまざまなS60に試乗した。しかし今回、もっともパワーが控えめな「T4 モメンタム」に試乗したところ、期待いじょうに楽しめるクルマで驚いた。自身で所有するらなら、間違いなくこのグレードを選ぶと思う。
T4モメンタムが搭載するエンジンは、1968cc直列4気筒ガソリンターボ。最高出力は190ps(140kW)、最大トルクは300Nmを発揮する。上級グレードの「T5」は254ps(187kW)、350Nmに達するので、少々控えめな数値に思うかもしれないが、充分すぎるぐらいの運動性能を有していた。
最大トルクを1400rpm~4000rpmにかけて発生するフラット・トルク型のエンジンなので、高速だろうと、山道ののぼりだろうと、扱いやすい。ちょっとアクセルペダルを踏んでいる状態から、さらに踏み込んだとしても、すかさず加速する。
2000rpmあたりでモリモリと力が出てくる。絶対的にはT5のほうがパワーはあるものの、ドライブモードの設定で「ダイナミック」を選んで走行すれば、不足感はまったく感じなかった。
エンジン音は、スポーティというほどではないにしても乾いたもので、耳ざわりは悪くない。
カーブでは、ボディのロールを極力抑えたサスペンション設定と、すっと鼻先が曲がっていく操縦性を両立。運転していて思いのほか楽しい。
タイヤは225/50R17サイズで、やや小さめだけれど扁平率が高いぶん、乗り心地がいい。過去の記憶をたどると、235/45R18を履いたT5に対し、コーナリング性で負けているとは思えない。
ワインディングロード走行時、カーブへ入り、そこを抜けて直線で加速、そして減速してまたカーブへ……と、加減速を繰り返しながら気持よく走れたことで、T4の実力ぶりがよくわかった気がした。
コスパで選ぶとT4で十分
室内は最新ボルボ車のつねで、気持のよいクリーンな造型でまとめられている。「センサス」と呼ぶインフォテインメント・システムも操作性は良好である。
試乗車はオプションのレザー・パッケージ装着車(41万円)だっため、シート表皮はレザーだった。クオリティの高いレザーは、触り心地が良い。ちなみに、購入者の多くは、このパッケージ・オプションを選択するという。
S60にはT4のほかパワフルなT5(614万円)か、PHV(プラグ・イン・ハイブリッド)モデルのT6ツインエンジン(779万円)も選べる。けれども、このT4(489万円)のバランスのよさは捨てがたい。
ちなみにT4の場合、ボルボの装備レベルでいうと、ややカジュアルなグレード「モメンタム」になる。T5に組み合わされる「インスクリプション」に対して、レザーを使った内装がオプションになり、オーディオのグレードがやや落ちるものの、その分、500万円を切る価格を実現している。もし、前述のレザー・パッケージを装着した場合は530万円。それでも、T5より84万円も安価だ。
「T5との価格差を考えると、T4でいいんじゃないかなぁ」と、私は思う。差額分でS60と旅に行くというのもアリだろう。エントリーグレードだからといって、物足りなさを感じることはないはずだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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レクサスのセダンシリーズの内装は、どうしても加齢臭がする…。