グリップ走行での速さを極めるためだけでなく、絶妙なドリフト制御まで可能。ランボルギーニが目指す理想のスーパーカーは、毎日が刺激に満ちているようだ。(Motor Magazine 2019年4月号より)
マイナーチェンジで磨きをかけたエアロダイナミックス
ウラカンクーペがマイナーチェンジを受けて、「ウラカンEVO」へと進化した。主な変更点は、エンジンがウラカンペルフォルマンテと同じ仕様に改められて30psのパワーアップを果たし、これまでなかった4WSやトルクベクタリングを新装備していること。加えてダウンフォースを7倍、空力効率を6倍に高めるなど、エアロダイナミクスにも磨きをかけている。
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そんなウラカンEVOOのキャッチフレーズは、「エブリデイアンプリファイド」。直訳すれば「毎日を増幅する」だが、普段のちょっとしたドライブからサーキット走行まで、すべての面で進化を遂げたという意味だろう。
ランボルギーニの技術部門を統括するマウリツィオ・レッジャーニ氏によれば「路面から伝わった衝撃を吸収する能力が高まり、快適性も向上した」とのことなので日常的な乗り心地も確実に進歩しているはずだが、国際試乗会の舞台は中東バーレーンのF1サーキット。したがってここではウラカンEVOのダイナミックな走りに集中してリポートしよう。
モードごとの個性くっきりANIMAがさらに刺激的
ウラカンにはデビュー当時から「ANIMA」と名付けれた、ドライビングモードを設定する機能が装備されている。しかし今回はストラーダ、スポルト、コルサといったそれぞれのモードで、走りのキャラクターがよりはっきりと異なっていることにまず驚いた。
主に公道走行用のストラーダでは、ドライバーの操作に対するクルマの反応が穏やかになるとともに、乗り心地などの快適性が向上する。それに対し、サーキット走行用にセットされるコルサでは、ドライブトレーンやシャシなどのすべてがラップタイム優先の設定に切り替えられる。
このためハンドルやアクセルペダルの操作に対する反応はいずれもシャープになるが、クルマを前に進めることの妨げともなるオーバーステアはなるべく排除するように、スタビリティコントロールが絶妙に作動するので、いわゆる「ドリフト走行」を楽しむのはなかなか難しい。
したがって走っている姿を外から見たとき、速い遅いの違いはあっても「クルマが進行方向をまっすぐ向いている」という意味では、ストラーダとコルサで違いがないように思えるはずだ。
ストラーダ、コルサと別次元のスポルトモード
ところがスポルトの走りはまったくの別物。限界的なスピードでコーナーにアプローチすると、ブレーキングの段階でリアタイヤがムズがっている様子がわかるうえ、ターンインの後でアクセルペダルを強く踏み込めば容易にテールがアウト側に流れ出す。
しかも軽いカウンターステアをあてながらアクセル開度を一定に保てば、ドリフト状態のままコーナーを立ち上がる、いわゆるパワーオーバーステアまで堪能できるのだ。「いや、それはアナタが運転のプロだからでしょう」と皆さんは思われるかもしれないが、残念ながら私にはサーキットでパワーオーバーステアを自在に操るほどの腕はない。
では、なぜそれができたかといえば、ウラカンEVOの電子制御が極めて優秀であるからに他ならない。
ウラカンEVOは、新開発したLDVIと呼ばれる“頭脳”で4WD、4WS、トルクベクタリング、スタビリティコントロールなどを一括してコントロールしている。
さらに、ハンドルやアクセルの操作およびANIMAの設定などから、クルマに起きる「次の挙動」を推測し、これに基づいて緻密な制御を行うフィードフォワード理論を採り入れることで、グリップ走行からドリフト走行に至るまで、ドライバーが期待する様々な走りに対応できるようになったのだ。
ストラーダを選べば快適なドライビングを、そしてサーキット走行ではスポルトとコルサというふたつの個性的な走りが選択できるウラカンEVO。「最先端のテクノロジーでドライビングの楽しみを拡大する」というランボルギーニの哲学が、また一歩進化したことは間違いないようだ。(文:大谷達也)
■ランボルギーニ ウラカンEVO主要諸元
●全長×全幅×全高=4520×1933×1165mm
●ホイールベース=2620mm
●車両重量=1422g●エンジン= V10DOHC
●排気量=5204cc
●最高出力=640ps/8000rpm
●最大トルク=600Nm/6500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=7速DCT
●車両価格=2984万3274円(税抜き)
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