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【F1第17戦無線レビュー(2)】「どんなにキツかったか想像できないと思うよ」水分補給なしで走り切ったペレス

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【F1第17戦無線レビュー(2)】「どんなにキツかったか想像できないと思うよ」水分補給なしで走り切ったペレス

 2021年F1第17戦アメリカGPは、例年以上に気温と路面温度が上がり、過酷なレースとなった。タイヤにも厳しい状況で、優勝を争うマックス・フェルスタッペンもルイス・ハミルトンも難しいレースを強いられる展開に。アメリカGP後半を無線とともに振り返る。

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【F1第17戦無線レビュー(1)】「早く順位を返して。何を調査してるんだ!」コース外からの追い抜きにアロンソが不満

 首位を奪い返したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、2番手ルイス・ハミルトン(メルセデス)との6秒前後の差をキープしながら周回を重ねていく。しかし17、8周目あたりから、タイヤの性能劣化に苦しみ始めた。長いストレートからのフルブレーキング、そこから全開で立ち上がっていくターン12で特にタイヤに負荷がかかっていると、担当エンジニアのジャンピエロ・ランビアーゼが注意した。

ランビアーゼ(→フェルスタッペン):ターン12でもう少しタイヤを持たせろ

 一方セルジオ・ペレス(レッドブル・ホンダ)は、スタート直後から全く水分補給ができない状態だった。

ペレス:ドリンクが全然動いてないよ

 気温29度、路面温度39度という高温コンディションのレースを、水分補給なしで走りきるのはかなり厳しい。ハミルトンとの差が18周目の11秒から23周目には13秒とじりじりと開いていったのは、中古ミディアムタイヤを履いたハンディキャップ以外にも、ドリンクトラブルのせいもあったのかもしれない。

フェルスタッペン:リヤがもう全然ダメだ
ランビアーゼ:了解した

 ハードタイヤが限界に来ていたフェルスタッペンは、29周目に2度目のピットイン。再び新品ハードに履き替えた。ハミルトンの担当エンジニア、ピーター・ボニントンは、すぐにこんな指示を出した。

ボニントン:ターゲット+6だ

 予定した周回数を、さらに6周延ばせというのだ。そうすれば最後のスティントは、フェルスタッペンよりはるかにフレッシュなタイヤで追い詰めることができる。

 中団グループでは、6番手のダニエル・リカルド(マクラーレン)がカルロス・サインツ(フェラーリ)に1秒以内まで迫られていた。ところが29周目にピットインしたサインツは右リヤタイヤの交換に手間取り、5秒6かかってしまう。リカルドの担当エンジニア、トム・スタラードはすぐに指示を出した。

スタラード(→リカルド):サインツはややスローストップだった。すぐにボックスして、カバーするんだ

 次周30周目にピットインしたリカルドは、サインツとの差を5秒5までリードを広げてコース復帰した。

トト・ウォルフ:ルイス、勝利に向かって戦ってるぞ
ハミルトン:集中させてくれ。ありがとう

 あくまで丁寧な物言いだったが、ステイアウトして必死にフェルスタッペンとのリードを広げようとしているハミルトンにとっては、チーム代表の激励も集中を乱す邪魔な声のようだった。

 37周目、ハミルトンもピットインしてハードタイヤに交換した。再び首位に立ったフェルスタッペンとのタイム差は8秒8。フェルスタッペンより8周分フレッシュなタイヤで、猛追を開始した。
 その後方では、リカルドとサインツの攻防も熾烈さを増していた。40周目にDRS圏内に入ったサインツは、43周目のターン13~14でリカルドに仕掛けるが、アウト側に押し出されながら接触、フロントウイング右翼端板にダメージを負ってしまう。

サインツ:ちょっと汚い。あれはわざとだよね
リカルド・アダミ:報告しておくよ

 レース終盤、ハミルトンの方が明らかにペースがいい。フェルスタッペンは、じりじりと詰められている。

フェルスタッペン:ペースデルタ(2台のペース差)はどれくらいなんだ?
ランビアーゼ:それはあまり重要じゃない。DRSに入られた時、リヤタイヤがどれくらい残ってるかだ

ハミルトン:彼はまだかなり速い!
ボニントン:序盤に十分にタイヤを持たせる走りをしていたからね

 なかなかフェルスタッペンに追いつけないことに、ハミルトンが焦りだす。それでも両者の差は50周目には2秒を切った。

フェルスタッペン:あと何周だ
ランビアーゼ:6周だ

 必死に逃げるフェルスタッペンだが、周回遅れのミック・シューマッハー(ハース)を抜きあぐねる。

フェルスタッペン:あのハースをどかしてくれ。マイケル(・マシ/FIAレースディレクター)に話してくれ!
ランビアーゼ:連絡している

 最終周のターン1で、ついに両者の差は1秒を切った。しかしシューマッハーが前にいたことでフェルスタッペンはDRSを使うことができ、セクター1で最速タイムを叩き出した。これでハミルトンとの差を1秒以上まで広げ、1.333秒差で辛くも逃げ切った。

 チェッカー後、アメリカGP初優勝に歓喜の声をあげるフェルスタッペン。しかしチームの取った戦略はかなりリスクもあっただけに、疑問の声を上げていた。

ランビアーゼ:最後の3周のドライブは凄かった。
フェルスタッペン:高速区間は、かなり手こずったけどね。なんとか切り抜けたよ
クリスチャン・ホーナー:向こうは8周も新しいタイヤだったんだ
フェルスタッペン:戦略はちょっとアグレッシブすぎたと思うけど

ボニントン:今日は十分速くなかった。でも素晴らしいドライブだったぞ
ウォルフ代表:素晴らしい、本当に素晴らしかった。最後の結果は、望むものじゃなかったけどね

 水分補給をまったくせずに1時間30分のレースを戦い抜いたペレスは、さすがに声がかすれていた。

ヒュー・バード:P3だ、チェコ。2戦連続表彰台だ
ペレス:どんなにキツかったか、想像できないと思うよ。レース中、ずっとドリンクを飲めなかったんだ

 そして角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)は、ミスなく力強い走りで8月のハンガリーGP以来の入賞を果たした。

マッティア・スピニ:チェッカーフラッグ、P9だ、ユウキ。今季のベストレースだったぞ
角田:みんないい仕事をしてくれた。金曜日の状況から、よくカムバックできた。きみたちやメカニックみんなのおかげだ。ありがとう
スピニ:僕たちこそ、ありがとう。力強い週末だったぞ
角田:貴重なポイントだね
スピニ:その通りだ

 終始最下位を走行し、17位完走に終わったニキータ・マゼピン(ハース)に対しては、小松礼雄エンジニアリングディレクターが無線に出た。

小松:チェッカーだ、ニキ。スローモードに切り替えろ。ヘッドレストは申し訳なかった

 スタート直後にヘッドレストの緩みが判明し、1周目に緊急ピットイン。結局3回のピットインを余儀なくされたことに対し、小松エンジニアがマゼピンに直接謝罪したのだった。

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