e-POWER第二弾となるセレナe-POWERに一般公道で初試乗した。e-POWERは、2016年にノートに採用され、日産自動車に実に30年ぶりの乗用車販売台数ナンバーワンをもたらした注目技術である。TEXT●森本太郎(MORIMOTO Taro) PHOTO●松井亜希彦(MATSUI Akihiko)
e-POWERとは、ハイブリッドの一種だ。ただし、搭載されるエンジンは発電のみに徹し、電力を貯めるためだけに存在する。一般的なハイブリッド車とは異なり、エンジンが直接クルマを駆動することはない。その点が、e-POWERがより電気自動車に近いと言われる所以である。BMW i3などのレンジエクステンダーEV(発電用エンジン付き電気自動車)ともイメージ的にかぶるが、それでもe-POWERはあくまでハイブリッド車だから、コンセントでの充電も不要、普通にガソリンを給油して航続距離を伸ばせる。
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さて、拠点である日産自動車横浜本社を出発して一般道を走り始めたときの第一印象は“静けさ”である。停車中、アイドリングストップしているときの無音感、モーター駆動での発進の静かさ、エンジン始動時のショックの少なさ。状況に応じてエンジンは始動と停止を繰り返すが、始動のマナーは極めて控えめだ。
ノートe-POWERも基本的に同様のシステムを積むが、あちらの場合は始動時にあからさまにエンジンが掛かったぞ、と主張する。はっきり言ってやや大きくて気になるのだ。ノートe-POWERオーナーこそこの違いには驚くだろう。
EV・HEVシステムの担当技術者に聞けば、ノートではエンジン始動時に一気に2370rpmまで回転を上げていたが、セレナでは2000rpmに抑え、停止状態から掛かったときとの回転差を小さくしているという。エンジンにはもっとも燃費に有利な回転数領域があり、2000rpmに抑えることは燃費面ではむしろ不利になる。それでも、ノートe-POWER後の静粛性に対する課題をクリアするため、徹底的に音に対する対策を講じたのだ。
エンジン回転数以外にも、静粛性への対策は多岐に渡る。ハイト系のミニバンはとくに、ボディ(=空間)自体の大きさ、開口部の大きさなど、静粛性を徹底的に上げていくのが難しい。それを考えるとなおさらこの静かさに驚かされる。通常のエンジン車よりもずっと、全方位における静粛性対策を施してきたことが伺える。開発責任者である中谷DCVEの「最初の目標の二倍以上は静かにした」というコメントにも納得できる。
セレナe-POWERでは、マナーモードとチャージモードスイッチがナビ画面下の使いやすい場所にレイアウトされ、日常的にe-POWERをより活用できるよう進化している。マナーモードは可能な限りEV走行、チャージモードはエンジンを強制始動し、可能な限り短時間でバッテリーを満タンにするモードだ。空から満タンまで5分から10分程度だというから、たとえば帰宅前にチャージモードで電気をたっぷり貯めておいて、翌朝出掛けるときには最初の数キロをEV走行するという使い方もできる。ノートe-POWERに比べれば2000rpmに抑えたとはいえ、通常のエンジン車のアイドリングよりはかなり高いところに回転を張り付かせるため、朝の住宅街でEV走行できるのはありがたい。
アクセルオフで最大0.15Gの減速Gが出るワンペダルドライブはやはり新鮮ドライビング体験だ。慣れないうちはとくに低速域で“止まり過ぎ”の感覚を覚えるが、慣れるに従って、適切な減速状態をコントロールできるようになる。プロパイロットはエンジン車のセレナとシステム自体は共通。だが、発進マナーの異なるe-POWER用に最適化されている。空いた高速道路で試してみると、なるほど、前車追従式クルーズコントロールと電動駆動の相性はバッチリで、いままでの、エンジンが頑張って付いていく、という印象から比べると、スムーズに違和感なく付いていくイメージ。余裕が感じられ、その印象はクルマに対する上質感にも繋がっている。そしてそうした余裕や上質感は、セレナe-POWERというクルマ全体を貫くものでもあるのだと感じられた。
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