765LTは量産モデル最高スペック。アグレッシブなスタイルの持ち主
765LTは、720S用の4リッター・V8ツインターボの最高出力を765psにまで引き上げ、クーペ&スパイダーそれぞれ765台限定で生産した。量産モデルとして、最高スペックのマクラーレンだ。
実物はアグレッシブそのもの。ベース車の720Sとは何かが違う。いっそう低く、ワイドだ。実はフロントの車高が5mm、トレッドも6mm広がっているだけなのだが、わずかな数字の違い以上に低くワイドに見えた。
[人生に一度は乗りたい]走る芸術品。スーパースポーツ&レジェンドモデルの感動世界
一連のロードカーシリーズに共通するディヘドラルドアを跳ね上げて室内へと潜り込む。座っての第一印象は「低い!」。路面にとても近いフロア一枚だけを隔てて路面の近くに座っている感覚だ。室内を見渡せば身震いするほど簡素でスパルタンだ。
走り出すと小石が跳ね上がるのだろう、フロアやボディ、フェンダーの内側でジャラジャラと盛大に音がした。これは精神的に悪い。
すべての動きは、はっきりとクイック。ステアリングホイールを切ると、ドライバーの思いと実際の動きとの差を取り戻さんばかりに、ノーズが先回りして向きを変える。まるで前輪がドライバーの意思を読み取っているかのような印象である。
凄まじい加速フィール! サーキットが主戦場
乗り心地はスーパーハード。スーパースポーツ界に「乗り心地改革」をもたらしたマクラーレンだが、それはスタンダードモデルでの話。サーキットユースを前提に、その道のプロが仕立て上げたLTでは容赦がない。ソリッドそのものだ。とはいえ、その昔のレーシングカーやチューニングカーのように耐え切れないほどの硬さではない。冷静に判断するとポルシェの高性能版と同等のハードさ。慣れた人ならむしろ心地よくドライブできるはずだ。
加速フィールは凄まじい。ゼロ発進はもとより、中間加速では一瞬、ワープしたかのように速い。そのスパルタンなアクションと相まって、720Sとは別次元。アクセルペダルを踏み続けることが怖くなって思わず緩めてしまうほどだ。やはりサーキット向きのマシンである。
公道ではその実力のほんの一部しか試せない。それでも十分にスリリングで愉快なひとときだった。興味深かったのは、試乗後、体に妙な高揚感が残っていなかったこと。かいているはずの冷や汗も、結果的にはわずか。パフォーマンスの高さは、そのまま完成度の高さを意味している。さすがはマクラーレンである。現代に求められるスーパーパフォーマンスは恐怖とは無縁のものでなければならない。それを熟知している。なるほど世界一のレーシングカーコンストラクターの作品だと改めて感心した。
マクラーレン765LT主要諸元
グレード=765LT(世界限定765台)
価格=7DCT 4450万円
全長×全幅×全高=4600×2059×1193mm
ホイールベース=2670mm
車重(DIN)=1339kg
エンジン=3994cc・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=563kW(765ps)/7500rpm
最大トルク=800Nm(81.6kgm)/5500rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:245/35R19/リア:305/30R20
駆動方式=MR
乗車定員=2名
0→100km/h加速=2.8秒
0→200km/h加速=7.0秒
最高速度=330km/h
※性能スペックは欧州仕様
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