2017年9月6日、日産自動車より新型リーフが公開された(発売は10月2日)。量販電気自動車として広く認知された日産リーフ。充電施設や航続可能距離の問題でさまざまな論議を巻き起こしているが、よくもわるくも日産を象徴する1台であることは間違いない。ではその初代リーフは何をもたらしたのか? そして新型(2代目)リーフは何をもたらしてくれるのか? 細かい分析に定評のある自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、日産リーフの、そして電気自動車の功罪を聞いた。
文:渡辺陽一郎 写真:日産
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■先代日産リーフは成功といえるのか
先代(初代)リーフは成功したと考えていい。エンジンを搭載せずに充電された電気だけで走る純粋な電気自動車は、多くのユーザーが購入できる市販車という意味では、リーフと三菱i-MiEVだけになる。i-MiEVは売れ行きが下がり、実質的に(「量販」という意味では)リーフだけが売られていた。
そして先代型のない第1世代だから、発売当初は電気自動車に対する市場の評価も定まっていなかった。ユーザーは購入に対して慎重になるのは当然だろう。
それでも1か月に約1000台を販売してきた。
充電設備の問題もある。日本の総世帯数の約40%は、マンションなどの集合住宅に住む。マンションに充電設備を設置するのは困難だから、現実的には一戸建ての居住者と法人しか電気自動車を購入できない。そうなると1か月に約1000台の販売実績は、購入可能なユーザーの比率で見ると2000台以上に相当する。
仮にi-MiEVがリーフ以上に売れているとか、強力なライバル車があれば成功と失敗の評価も変わるが、実質的にリーフの弧軍奮闘だから失敗とする理由はない。ライバル車が不在だからこれだけ売れたともいえるが、そこを突くのは裏読みのしすぎだ。成功したと素直に考えるのが妥当だろう。
■新型リーフはどのくらい普及するのか
新型リーフは公式には販売目標や販売計画を明らかにしていない。それでも「先代型の2倍から3倍は売りたい」というコメントが聞かれた。大雑把な数字だが、先代型の1か月の販売台数は約1000台だから、新型は2000台から3000台と受け取られる。
売れ行きを予想する上で材料になるのは、まず充電設備の数だ。先代型が登場した時は自宅の充電が中心だったが、今は日産の販売店に約1750基の急速充電器が設置される。店舗の総数は約2100カ所だから、設置不可能な350店舗を除くと、ほぼ全店に完備された。
さらに全国には日産の販売店を含めて約7100基の急速充電器が備えられ、普通充電器も含めると2万8000基に達する。給油所(ガソリンスタンド)の3万1000店舗には達しないが、リーフが発売された2010年頃に比べると大幅に普及した。
電気自動車を所有しやすくなった一方で、リーフのライバルとなる電気自動車が現時点では発売されていないことも追い風になる。
■新型は航続距離120km増、13.5万円安!!
また新型リーフは価格を割安に抑えた。
リチウムイオン電池の容量を40kWhに拡大するなど機能を充実させながら、売れ筋のXは先代型の30X(30kWh)に比べて13万5000円安い。
経済産業省によるCEV(クリーンエネルギー自動車)補助金は、新型リーフでは40万円とされる。今の算出方法は、1回の充電で走れる航続可能距離(JC08モード走行)がベースで1km当たり1000円だ。新型リーフは1回の充電で数値上は400kmを走れるから「1000円×400km=40万円」になる。
先代型は24kWh仕様が22万8000円、30kWh仕様が28万円だったから、新型リーフは航続可能距離が先代型の30kWh仕様に比べて120km伸びて価格は13万5000円下がり、補助金額は12万円増えた。合計すれば航続可能距離の向上を含めなくても25万円は実質的に値下げされている。また2代目だから、先代リーフから乗り換える需要も期待できる。
だからといって飛ぶように売れるワケではないが、需要が落ち着いても1か月に1600~1800台は売れるだろう。今の1.6~1.8倍で、オデッセイ/エスティマ/プレミオなどと同等の台数になる。
また、発売直後は好調に売れて、おそらくこれがニュースになるだろう。
■新型リーフのここがイイ
先代型の発売から7年を経てフルモデルチェンジされたので、当然ながら進化の度合いが大きい。最も注目されるのは先に述べたリチウムイオン電池の容量を40kWhに拡大したことで、JC08モード走行では400kmを走れる。開発者によれば「急速充電器を頻繁に使った場合のリチウムイオン電池の劣化(十分に充電できなくなること)も少ない」という。
モーターの最高出力は150馬力、最大トルクは32.6kgmだから、先代型に比べると41馬力/6.7kgm向上した。数値的にいえば先代型は自然吸気のガソリンエンジンに当てはめると2.5Lクラス、新型は3Lに匹敵する。
エンジン車の燃費に相当する1km当たりの交流電力量消費率は、先代型が114~117Wh/km、新型は120Wh/kmで少し悪化したが、動力性能を向上させながら、さほど大きな変化はない。
このほかセレナやエクストレイルに先行採用された運転支援技術のプロパイロット、車庫入れを支援する進化型のプロパイロットパーキングも用意される。
■新型リーフのここがイマイチ
新型リーフを購入する時に注意したいのは視界と取りまわし性だ。
先代型もサイドウインドーの下端を後ろに向けて持ち上げたが、新型ではその度合いがさらに強まった。リヤ側のドア部分は、ウインドーの下端が先代型に比べて30mm弱は持ち上がった。さらにリヤピラーも太くなり、斜め後方の視界が悪化している。開発者は「先代型の外観は欧州と北米で不評だった。
そこで新型はスリークな(スマートで馴染みやすい)デザインにした」という。そこが災いして後方視界を従来型以上に悪化させた。購入する時には販売店の試乗車で縦列駐車や車庫入れを試したい。
居住性は先代型と同程度だが、後席は少し窮屈。膝先の空間は相応に確保したが、床と座面の間隔が不足して膝が持ち上がりやすい。4名で乗車するユーザーは後席の居住性を確認したい。
セットオプションの設定方法もイマイチだ。緊急自動ブレーキを作動させるインテリジェントエマージェンシーブレーキは全車に標準装着したが、プロパイロットとプロパイロットパーキングは、最廉価のSでは装着できない。売れ筋になるXでも二者択一を迫られ、プロパイロットとプロパイロットパーキングを両方ともに付けられるのは、両装備を標準装着した最上級のGのみになる。
さらに良くないのは緊急自動ブレーキがセレナやエクストレイルから進化していないこと。車両に対してのエマージェンシーブレーキは時速80kmが上限となる。歩行者対応の時速60km以下は良いとしても、車両については少なくとも法定速度の時速100kmには対応して欲しい。注目度抜群の新型リーフだが、改善の余地は少なからず残されている。
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